ニコニコ動画らしいコンテンツとは何か──。
人によって定義が大きく異なるだろうこの話について、筆者的には“わけのわからないもの”だと理解している。最近では、少しニコ動を検索するだけで、歌ものやボーカロイド、モーショングラフィック、3Dアニメーションなど、素人とは思えないクオリティーの作品がざくざくでてくる。しかし、そうした作品と並んで、意味不明なタイトルも数多く埋もれているのが、ニコ動のおもしろさだ。
そうした話でいえば、28、29日に幕張メッセで開かれたニコ動の一大イベント“ニコニコ超会議”で、最も“わけのわからなさ”を体現した企画が、“兄貴”ことビリー・へリントンが率いる“ビリークルーズ”だった。週アスでは密着取材したので、その“ビリー現象”について全貌をまとめていこう。
■自演乙選手と再会! まんべくんとも戦った
ビリークルーズは、超会議の会場をビリーといっしょに練り歩き、さまざまなブースに凸(突撃)をかけるという企画だ。28、29日とも13時から約2時間に渡って実施した。
写真は29日の様子。事前に超会議ジャングルに潜む危険からビリーを守る隊員を募集したところ、27名が名乗りを上げた。当日、隊員は赤いTシャツをまとい、電車ごっこのように綱を持ってビリーを守りつつ各会場を回る。
↑途中、囲まれたファンに「歪みねぇな!」コールを煽るシーンも。当然、大きな声で兄貴の望みに応える。
↑秋葉工房のブースでは、およそ3年前にリング上で戦ったこともある長島☆自演乙☆雄一郎と再会。
ニコ動・ビリー兄貴が来日 長島自演乙とパンツレスリング--ASCII.jp(関連リンク)
↑長万部町のキャラクター、まんべくんとも対決。取っ組み合った後、スパンキングしてました。何だこの組み合わせ(笑)
↑生放送していたニコニコ本社のステージにも割り込んで、いきなり兄貴コールで放送をのっとる狼藉。仕方ないね。
↑超運動場で行われていたユーザー生放送で有名な“緑”さん主催のイベント“ミドリンピック”にも乱入。スポーツチャンバラや相撲で対決した。
……と普通に説明しても多分、ニコ動になじみの薄い人にとっては「なんのこっちゃ」という感じだろう。なぜビリーが人気なのかは、ニコ動での受け入れられ方を見るとより深く理解できる。
アメリカ在住のビリー・へリントンは、“レスリングシリーズ”と呼ばれる動画で人気を集めている人物だ。元々はゲイポルノ俳優で、そのマッチョな風貌からニコ動内で兄貴とも呼ばれている。'07年9月、彼の出演していた動画が“本格的 ガチムチパンツレスリング”というタイトルで無断投稿された。マッチョが2人全力でパンツを取り合うというほほえましい光景や、「歪みねぇな」や「最近だらしねえな?」といった日本語にしか聞こえない“空耳”が人気を博して再生数が増加。
さらに動画のサムネールがエロいと思ってクリックしたら、兄貴だったという“釣り”に何度も使われたり、ニコ動のランキングを工作して兄貴の動画が上位に送り込まれたこともあって、知名度が一気に上昇した。別の無断で投稿されたゲイポルノ作品では、空耳からユーザーが勝手にキャラクター名を付けたこともある。お尻をたたく音をサンプリングして“ケツドラム”と名付けてほかの曲に合わせてみるなど、二次創作も大量に発生した。今では毎年年末、多くのニコ動クリエイターが参加する兄貴MADの合作が投稿されるのが定番だ。MADという性質上、表には出ないものの、ニコ動内でひとつのカテゴリーとして完全に定着。有名な歌い手やボーカロイドPなどにも愛されている存在になっている。
その兄貴人気を受けて、彼を呼ぼうという機運が高まり、'09年には2月にワンホビ9、3月に沖縄国際映画祭、8月に公開スパーリングと3度来日。ワンホビ9では会場前に大行列ができるほどの人気を集めた。意外だった(?)のが、生のビリーに接してみると、実にプロでいい人だったということ。日本のファンのために食事制限して体をつくってきたり、自分を素材につくられたMADを「クリエイティブだ」と許容したり、宮本武蔵の『五輪書』を愛読していたりと、ユーザーが勝手につくり上げてきた世界観をいい意味で裏切り、さらにファンを増やした。
↑空港まで取材に行ったところ、偶然、空港で出会ったファンとも快く撮影に応じていた。
その後、歪みねぇ事情があって、リアルイベントに顔を出してなかったが、今回、超会議という一大イベントに合わせて、“ニコニ国賓”として招聘されたわけだ。ファンにとっては約3年間の思いが爆発。そうでない“ニコ厨”でも動画で見た有名人が目の前を歩いてるという状況で、興奮しないわけがない。そんな事情がわかると、「なんかガチムチの外国人が赤い服の人々に囲まれて会場を練り歩き、あちこちで歓声が上がってる」という不思議な状況が少しは理解できるはず。
↑ビリークルーズ中、ビリーの指示でだらしねぇ隊員を鍛え直すために腕立て伏せをさせられる。でも愛があるからこそ耐えられるのです。
↑ビリークルーズ終了後、隊員と揃って写真撮影。
↑さらにひとりひとり2ショット撮影にも応じていた。隊員にも話を聞いたところ、とにかくビリーを尊敬しているからこのクルーズに参加したそうだ。
実は“ニコ動の兄貴”としてのビリー人気は日本だけにとどまらず、ニコ動が浸透している台湾にも波及している。今年1月、ビリーが台湾に訪れた際、空港でファンに囲まれてサインに応じてる様子が動画として投稿されていた。
ニコニコ超パーティーにてドワンゴの川上会長が「来年も会場を押さえた」と発言していたこともあって、どうやら2度目の超会議もありそうだ。今からぜひビリーの動画を予習しておいて、5度目の来日の際はぜひともいっしょにこの興奮を味わうべし!
■関連サイト
ニコニコ超会議公式サイト
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1,500円
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