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フィロソフィーがないと「5Gの先」は読めない?

謎の学術「プラットフォーム学」を始める京都大学、求む「世界でかませる人」

2021年03月26日 21時00分更新

分かりやすく5Gの本質をまとめるなら……

── 謎めいたプラットフォーム学という言葉が印象的でした。

 「謎の学術」と言った理由は、学問としての奥行きが分からないからです。いろいろな目線がありそうだというのは分かる。しかし、どこまで広がりがあるかまでは分かりません。

 そこで「○○とプラットフォーム学」という切り口で、イベントや討論会を実施しながら、その奥行きを確かめたいと思っています。卓越大学院のプログラムは7年あるので、少しずつ見ていきたいですね。この半年いろいろなディスカッションを行いましたが、プラットフォームは基盤系の話だけでなく、ソフトウェアやアプリケーションなど多層構造になっていることが分かりました。いろいろな切り口で議論していかないと学問として成り立たないと考えています。例えば、「ラーメンとプラットフォーム学」といった切り口も可能かもしれません。

 時代によってその切り口も変わるでしょう。

 私の専門の携帯電話において、例えば「5Gはこの10年でどれだけ変わるか?」と考えた場合、4Gまでの歴史を見ると、たいてい最初の3年は味見なのです。私は、この味見が済んだ2024年ごろから新しい謎のアプリケーション、デバイスが出てきて、そこから新しいプラットフォームが構築され始め、2027~28年ごろにはこれが完成し、同時にこのプラットフォームを深化させる動きが起き始め、2030年には6Gになると予想しています。

 4Gもそうでした。2010年にスタートし、よく分からないままみんなが使い始め、2013~14年ごろから新しいアプリケーションが出てきました。意識している人は少ないかもしれないですが、4Gが狙っていたのはコンシューマー向け通信の完成形だったのです。3Gでダウンリンクが高速化し、YouTubeのようなサービスが生まれた。4Gではアップリンクの高速化を目指しました。結果、ユーザーのアップロード数が劇的に増え、YouTuberに代表されるような「個人発信の産業」がプラットフォーム化したのです。4Gによって、個人間の双方向通信が完成したのですね。

 では、5Gは何か。個人間を結んでいた細い神経を信頼ある太い神経に替えようとする試みです。4Gを社会インフラに使うには、いささか心もとない面があります。そこで5Gでは「高信頼性」「超多数接続」「さらなる高速化」の機能を追加し、社会インフラに入るようにしたのです。

 ただし、それだけでは終わらないと思っています。私は5Gによって身体拡張に関する開発が加速すると考えています。高度な通信を利用して自分のできなかったことが“超人的”にできるようになる。そのタイミングがどういうきっかけで訪れるのかに注目しています。

 パラリンピックの選手が使うような義足を利用すると、普通の人が走るよりも速く走れるようになってきているという話を聞いたことがあります。次の時代は高度なプラットフォームによりディスアビリティという言葉がなくなる時代を作りたいと考えています。

 5G時代で何がブレイクするかは、2024~25年ごろに分かると思いますが、現状ではまだ見えていません。みんなが味見をしている段階です。そのために学んでおかないといけないものが4G、3G、そして1Gの歴史です。歴史が分かっていれば、上に述べたような5G時代のキーワードがぱっと見えてきます。しかし、携帯の専門家はあまりこういう歴史の流れという目線で見ていないように思います。

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