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フィロソフィーがないと「5Gの先」は読めない?

謎の学術「プラットフォーム学」を始める京都大学、求む「世界でかませる人」

2021年03月26日 21時00分更新

日本の5G標準必須特許は全体で10%に満たない

── 日本の競争力についてどう考えられていますか?

 いまITの世界では他国製のクラウド・通信ネットワークが台頭していて、ここに日本の出番はありません。私の専門は通信なので、携帯電話の話をすると、5Gの必須特許のうち日本が保有するものの比率は、全社合わせても10%に足りません。残りの9割はすべて海外の企業が持っています。つまり、5Gをいくら売っても、特許料の9割は海外に行くという困った構図です。

2月に発表されたドイツのIPlyticsの調査によると、ETSIに報告された5G関連の標準必須特許(5G-SEP)の申請数はファーウェイ、クアルコム、ZTE、サムスン、ノキアの順に多い。

 クラウドも同様です。現在はアメリカに加えて、中国が台頭しています。

 それを打破するためには、日本オリジナルの要素や社会的な価値観(倫理性や公正性、集団としての意志の決定メカニズム)をプラットフォームに反映して実装していく必要があると考えています。そうしないと、他国のやり方に合わせるだけとなり、自国の事情に合ったカスタマイズができません。

 また、プラットフォームは技術者だけで作っていると、標準化やビジネス化が進んでいきません。国際展開できる法律や流通も考えていく必要があるでしょう。今後データは、貨幣のように流通していくので、データの価値が判断でき、政策を決めて行く能力も求められます。プラットフォームの構築には文系学術の知識も必要なのです。

 本来、こういった知識は大学にいるうちに学んでおいた方がいい。しかし、該当する学術がないし、修得できる大学院もありません。このあたりを何とかできないかと考えて作ったのが、プラットフォーム学です。

 情報学が持つ側面と、情報学が持たないものを融合させて、プラットフォームに関するリベラルアーツを作ろうとしています。現場領域の技術も、情報学外の研究も、文系学術の知識も、すべて含んだ学問の体系です。

 議論を進めていくうちに、一口にプラットフォームと言っても、ハードウェアのプラットフォーム、こういう処理手順や処理言語を使いましょうといったソフトウェアのプラットフォーム、その上に分野別に用意されたアプリケーションのプラットフォームがあります。それぞれに情報学以外の知見が必要です。

 卓越という名前が付いていることから分かるように、京都大学の中でも高度なことを学ぶプログラムだと思います。こんな複雑な学問を成立させるのは難しいでしょうが、京都大学の学生であれば2つの専門分野に挑戦して結果を出せる可能性があると考えています。

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