棚橋弘至はなぜ新日本プロレスを変えることができたのか
著 棚橋弘至
飛鳥新社
1500円
詳説 新日イズム 完全版
著 流智美
集英社
1620円
完本 1976年のアントニオ猪木
著 柳澤健
文春文庫
929円
現在、プロレスの人気が盛り返しつつあるようだ。
その中心にあるのが業界の盟主、新日本プロレス。かつてはアントニオ猪木、タイガーマスクなどを擁して爆発的な人気を誇ったが、総合格闘技ブームに押されて低迷、しかし近年は見事に復活した。
新日本を低迷期から支えて、現在の興隆につなげたのがエースの棚橋弘至だ。彼の著書『棚橋弘至はなぜ新日本プロレスを変えることができたのか』は、ビジネス書のような体裁をとっためずらしいプロレス本で、没落していた“企業”が優秀な“社員”によって復活を遂げた過程が描かれている。棚橋は少ない観客やブーイングにもくさらず、“はじめてプロレスを見た人も楽しめるプロレス”をテーマに試合を組み立て、あとはとにかくプロモーションに駆け回ったという。試合も練習も取材もプロモーションもすべて全力で打ち込みつづけた棚橋の姿に胸打たれる。
プロレス界きっての博覧強記である流智美の著書『詳説 新日イズム』は、100年以上にわたるプロレスの歴史をつぶさに追うという手法で、新日本という団体の特徴をあぶりだす。この本を読むと、何の後ろ盾もなくスタートした新日本が、ピンチをチャンスに変えるベンチャー精神にあふれた団体だったということがよくわかる。
棚橋弘至の名前は、新日本の始祖アントニオ猪木の本名・寛至から採られているという。柳澤健『完本1976年のアントニオ猪木』は、モハメド・アリと異種格闘技戦を行なった猪木の1年を追った傑作ノンフィクション。あっと思わせるプロレスの定義に始まり、ページを繰るごとに猪木の狂気とプロレスというジャンルの奥深さが読むものをずぶずぶと包み込む。
以上の3冊を読めば、ライトなプロレスファンも“底が丸見えの底なし沼”たるプロレスの魅力にひきずりこまれること間違いないだろう。
大山くまお
ライター・編集。4月15日に新刊『野原ひろしの超名言』(双葉社)発売です! よろしくお願いします。
※本記事は週刊アスキー4/21号(4月7日発売)の記事を転載したものです。
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