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【私のハマった3冊】独身、恋愛と性、中年を経済学や生物学から考察する

2015年03月28日 08時00分更新

1022BOOK

シングルトン
著 エリック・クライネンバーグ
鳥影社
1944円

セックスと恋愛の経済学
著 マリナ・アドシェイド
東洋経済新報社
1944円

中年の新たなる物語
著 デイヴィッド・ベインブリッジ
筑摩書房
2376円
 

 “独身+独り暮らし”が“シングルトン”の定義。かつての単身者のイメージは、ゴミ出しがきちんとできず、朝方まで友だちと騒いだりする近所のやっかい者。だが、それは古い見方。実際の現代的な都市の単身生活者は、都市社会の成功者である。シングルトンが増えた理由は“女性の地位が向上”、“通信革命”、“人口が大都市に集中”、“長寿革命”と4つの理由によるもの。

 現代社会ではシングルトンは、労働力、税収においても頼りの存在だが、あまりに軽んじられている。本書『シングルトン』は、米の社会学者がシングルトンを取材した研究書。独身者が読むと病気の時の話などつらい箇所も多数なので注意。

『セックスと恋愛の経済学』は、カナダの大学の女性講師による経済学から見た性の講義。

 驚くことにアメリカでは日本より10代の草食化が顕著。なぜなら、アメリカでは“将来の収入が学歴に依存する”状態が明確化しているから。そうすると、10代での妊娠はもちろん、恋人に時間が奪われることだってリスクになる。それに自覚的な若者が、恋愛を遠ざけることで草食化しているのだ。

 こんな具合に、コストやインセンティブで恋愛やセックスが語られるのが斬新。だけど、本書が主張する“ヤリマン”が、労働者の最下層と最上層で発生するという理論は、おもしろいが本当なのか疑問な気も……。

 続いては、生物学から“中年”を考察した『中年の新たなる物語』。筆者も立派な中年で、それを自覚する機会も増えているが、本書によると40歳は“劣化した20歳”だと思ったら大間違い。“生の体内時計”はしっかり刻まれているのだという。

 本書は、ページをめくるごとに驚きの連続。“中年太り”も“閉経”も中年特有の老化現象と思いがちだが、むしろ“発達”であるという。いわゆる“老人力”的な話ではなく生物学、遺伝子レベルでの話なのだそうだ。弱音を吐くな中年たち!

 

速水健朗
フリー編集者・ライター。近著に『1995年』(ちくま新書)、『フード左翼とフード右翼』(朝日新書)。

※本記事は週刊アスキー4/7号(3月24日発売)の記事を転載したものです。

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