2010年のCESで話題となった『PARROT AR.Drone』だが、その初代AR.Droneから飛躍的進化を遂げているのが、いまのドローン。1年半ほど前に英国ドミノピザが“DomiCopter”なるデモをやって、ピザをドローンを運ぶとやった。ちなみに、英国ドミノピザは、『Xbox One』でピザのメニューをアレンジして注文できるようにしてたりもする目の離せない人たち。その後、Amazonの“Prime Air”(ドローンによる配達)の計画が明らかにされるなど、毎週のようにニュースになっている。
さらには、YouTubeの空撮映像や森の中でミニ四駆のようにドローンレースを楽しんでいる人たちがいたり、米国で火を噴きながら空中戦をはじめている人たちもいてとても楽しそう。ということで、これからドローンを始める人たちにお勧めのドローン購入ガイドをお届けする。楽しみ方はそれぞれ。そういえば、友人のフランス人ジャーナリスト、エチエンヌ・バラール氏をはじめ、意外な人が楽しんでいるのも興味深い。なんといっても、コントローラから手を離せばその場で空中でホバリングしているのが、これから紹介するドローンたちだ。
1. 最初にこれに触った人はラッキー
『PARROT MiniDrones “Rolling Spider”』
・製品ページ
今年夏に国内発売した重量55グラム、本体サイズも140ミリ四方と手のひらに乗るドローン。Bluetoothで接続してスマホで操作する点もユニークだが、最大の特徴はなんといってもその安定性。本体下に圧力センサー、超音波センサーと超小型のカメラがあり、一定の高さにホバリングしたら手を放しても精度数センチくらいでその場にとどまっているのには驚かされる。操縦できる距離は20メートル、時速18キロというキビキビ飛行が可能だ。
この機体、標準でついてくるホイールを使って壁や天井をはわせたり、飛行中のドローンをスマホから撮影しながら飛ばせる使い方があるなど、ユニークな機能満載。ちなみに、一般的なドローンは地上や床面からビューンと飛び立つことになるが、これの場合は空中にドローンを投げ出すことで飛ばすこともできる。なお、本体下のカメラで30万画素の写真を撮影することも可能(当然のことながら真下しか撮影できないが)。価格も1万円程度とエントリーには、今一番お勧めできるドローン。
2. ドローンで空撮革命を起こした
『DJI Phantom 2 Vision+』
・製品ページ
ここ1年ほどでYouTubeに大量の空撮動画がアップロードされたが、その多くがDJI Innovations社の“DJI Phantom”シリーズによるもの(空撮動画を見たかったら“DJI”で検索するのがいちばん手っ取り早い)。香港の雨傘革命デモのようすは、地元の新聞『蘋果日報』が飛ばしたDJI Phantomが、デモの端から端までを映し出し、大規模なデモの実態がはじめて正確に報道された。英国BBCも、DJI Phantomを世界中で飛ばしており“ドローンジャーナリズム”ともいうべき現象が起きている(もちろん許可されている地域のみ。ちなみにDJIは中国深センに拠点をおく会社)。
DJI Phantomシリーズの特徴は、抜群の安定感と性能に対するコストパフォーマンスの高さ、そして、本体のコンパクトさにある。同シリーズには、単体で買ってきてアクションカムの“GoPro”を振動防止パーツ(ジンバル)を使って装着して空撮するタイプもあるが、DJI Phantom 2 Vision+は、標準でカメラがついていてオールインワン的に空撮が楽しめる(GoProに近い広角の映像)。プロポにスマホを付けるクリップがあり、FPV(ファースト・パースン・ビュウ)機能でドローンからの視点で飛ばすことも可能。本体を見失わないようなレーダー画面や自動帰還機能などの機能も豊富で、15万円以下でこれはお買い得。なお、カメラの角度を地上からコントロールできるので空撮向きだが、電波の関係でVision+の国内向けモデルは海外旅行などでは使えない。
3. 新定番となるべく生まれた
『PARROT Bebop Drone』
・製品サイト
AR.Droneでスマホ操作の個人向けドローンに火をつけたPARROT社が満を持して発売する新製品が『Bebop Drone』。国内では1月21日に発売されるとヨドバシの通販サイトで予約販売が開始されており、ホビー系のドローンファンには最注目のモデル。最大の特徴は、400グラムという軽量な本体に、どちらかというとフワフワと浮かんでいる感じだったAR.Drone2からキビキビ動作に生まれかわり、1400万画素・180度の魚眼レンズを先頭に装備しているところ。実機に触っていないのでフィーリングまでは伝えられないが期待感は大きい。
また、今回注目なのが4本のアンテナを装備した専用“スカイコントローラ”。プロポを真っ二つにして真ん中にスマホやタブレットを取り付けた両側を握って操作するスタイルになり、なんといってそのアンテナにより通信範囲が広がるという。そのほかにもHDMI接続でARメガネをつないだり、API公開がされるなど、スポーツ的な視点などでドローンを進化させようという意図が明確に示されているという点でも注目だ。価格は本体のみ(スマホ操作)で約7万円。コントローラのセットは約13万円となっている。
4. 空撮の“美しさ”を追求する飛行ロボット
『DJI Inspire 1』
・製品サイト
DJI Phantomでドローンの世界を身近にかつ実用的にしたDJIの次世代機が“DJI Inspire 1”で、こちらも国内発売がされようという段階の新製品。なんといっても、ドローンの本体下部にカメラがある場合にじゃまだった脚(スキッド)が飛行後に持ちあがり、搭載カメラが360度の視界をとらえるというデザインが目を引く。それによってスムーズなパンが可能となった4K映像と1200万画素の静止画は、空撮ロボットと呼びたくなる性能と形をそなえている。パーソナルユースの空撮の世界を“楽しさ”から“美しさ”追求の世界へいざなってくれるのは確実だ。
DJI Inspire 1は、操作面でも新しさがあり、リアルタイムモニタリングや自動航行はもちろんのこと、2人で操作する“デュアルオペレータコントロール”に対応。これは、ドローンで空撮をやってきた人なら絶対に欲しかった機能のひとつで、1人は操縦に専念、もう1人が美しい映像を撮るという分業を可能にする(追加コントローラーが必要)。ちなみに、空撮を強調したが、DJI Phantom 2では、このクラスではもっぱら個人の技量に頼ってきた室内フライトをサポートする“ビジョンポジショニングシステム”を装備した点も新しい。GPSが利用できない室内でもカメラと超音波で、位置と高度を認識して安定飛行する。国内の販売価格は、約38万円(フルセット)とやや値がはるが、Phantom 2で空撮の世界を覚えたという向きには見逃せない1台といえる。
5. Dronecode と自作ドローン
2014年10月、ジュッセルドルフで開かれた組み込みLinuxのカンファレンスで、UAVのためのオープンソースプラットフォーム“Dronecode Project”が発表された。つまり、ドーンの世界もオープンソースで今後進化を早めていくことが確実になったといえる。12月21日に開かれた“ABC 2014 Winter”に設置されたドローン部屋でも、DronecodeのベースとなるPIXHAWKというコントローラーを載せた機体が持ち込まれていた。
実際に、ドローンを操作してみると、それがいわゆるラジコンで操作する今までの飛行機などとはまったく別のむしろ自動制御のカテゴリーに入る新分野であることをすぐに肌で感じる。もちろん、ミニ四駆的にチューニングしてやんちゃに遊ぶのもありだが、むしろ、自律型ロボットやソフトウェア的な楽しさ、オーディオやカメラにも通ずるとさえ思える部分がある。ということで、機体自体を自作する人たちも出てきていて、それはパーツやコントローラーの組み合わせとなるが、一応、購入ガイドの最後に付け加えさせてもらう。
なお、ここで紹介したタイプのドローンはいずれもプロペラがモーター直結でメカ的なトラブルの発生率はきわめて低くくなっている。とはいえ、飛行体であることは間違いないので、安全が十分に確保できないところでは飛ばすべきではない。Rolling Spiderのような小さな機体でも酒場の宴会芸にするのは、よほどお店の人やそこにいる人たちが全員オーケーで「やれやれ!」という場合でも、あまりやるべきではたぶんない。
【筆者近況】
遠藤諭(えんどう さとし)
株式会社角川アスキー総合研究所 取締役主席研究員。元『月刊アスキー』編集長。元“東京おとなクラブ”主宰。コミケから出版社取締役まで経験。現在は、ネット時代のライフスタイルに関しての分析・コンサルティングを企業に提供し、高い評価を得ているほか、デジタルやメディアに関するトレンド解説や執筆・講演などで活動。関連する委員会やイベント等での委員・審査員なども務める。著書に『ソーシャルネイティブの時代』(アスキー新書)など多数。『週刊アスキー』巻末で“神は雲の中にあられる”を連載中。
■関連サイト
・Twitter:@hortense667
・Facebook:遠藤諭
(2014年12月26日19:10訂正:記事初出時、『Parrot Bebop Drone』のヨドバシ・ドット・コムでの発売開始時期が間違っておりました。お詫びして訂正いたします。)
●関連サイト
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