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今や“おうち”をハックする時代がやってきた!コンテストは11月30日締め切りby 遠藤諭

2015年11月20日 21時00分更新

週刊アスキー電子版では、角川アスキー総合研究所・遠藤諭による『神は雲の中にあられる』が好評連載中です。この連載の中で、とくにウェブ読者の皆様にご覧いただきたい記事を 不定期に転載いたします。

文具とパソコンの話

インターネット・オブ・調味料がいい

 お台場で“おうちハックナイト”という楽しげなイベントがあるというので出かけてみた。主催は“おうちハック同好会”という人たちで、なぜか会場であるお台場のイベントスペース“東京カルチャーカルチャー”を運営するニフティとの共催となっている。IoTで未来のおうちを快適にしちゃおう! というサブタイトルがついている。

 “おうちハック”という言葉の響きもよくて、なんとなく『ゴロ寝デスク』的というか、スタートアップ的な目をキラキラと輝かせた意識高い系とは対極の人柄のよさを感じさせるものがある。ところが、このFacebookの公開グループで登録しているメンバーが約500人もいたりする。実際、中心メンバーらによるハックの実例もライトニングトークも勉強になったし楽しかった。

 もうひとつ、このイベントに出かけた理由は、1年ほど前から私自身が“おうち”にかかわる仕事を少しだけやってきたというのがある。HEMS(ホームエネルギー マネジメント システム)と言えば、家の省エネや自動制御システムのこと。これの普及をめざす家電・通信・電力系の企業のあつまりである“HEMSアライアンス”のお手伝いをさせてもらってきたのだ。アプリ開発の相談や主婦の方々に“おうち”を便利にするヒントを聞く会なんかにも参加させてもらっていた。

快適IoT
↑開催された“おうちハックナイト”の風景。なぜニフティが共催なのかというと、同社は“クラウドIoTプラットフォーム“の提供など社をあげてIoTに注力しているからだそうな。

 それの関係で“快適IoT”という文字どおり“おうちハック”的なコンテストを、HEMSアライアンス、株式会社LIXIL、東京大学エネルギー工学連携研究センターと共催ではじめたばかりでもある。それで、「同じようなテーマなら」ということで、おうちハックナイトに潜入させてもらってライトニングトークの末席で宣伝をさせてもらったのだった。

 快適IoTの募集内容はホームページを見てもらうのが早いのだが、“スマホアプリ部門”、“自作ホームオートメーション部門”、“アイデアジェネレータ部門”とある。アイデアジェネレーターというのは、駒場の東京大学生産技術研究所の敷地内にある“COMMAハウス”などの実験ハウスのためのAPI。自分でアプリを書いて、家の換気窓や照明などをロボットのようにコントロールできる。要するに、IoTなど最新のテクノロジーで、家を楽しく便利にするためのコンテストである。

 おうちハックナイトの翌々日には、BBA(ブロードバンド推進協議会)の“Field TechUP Programデモデー”というものの審査員をやらせてもらった(会場は汐留のソフトバンク本社)。こちらは、同協議会が4ヵ月間にわたって開講してきたハードウェアセミナーの受講生たちの成果発表会である。おうちハックの腕に覚えのある人たちとは対照的に、自分のビジネスに役立てたくて参加したというイメージ先行の人も交じっていて、これはこれで楽しいものがあった。

 おうちハックも、FieldTechUPも、こんな形で盛り上がってきているのは、センサーやRaspberry Piなどの自作ハック用のコンピューターが充実してきたこと、そして、なんといってもそれらがクラウドにつながったというのがあるのは間違いない。

 Field TechUPで、“ちょみ研”という人たちの発表があった。これは醤油などの調味料を使うと塩分・糖分などが集計されるというシステムである。これがやっているのは、なんのことはない醤油などのビンをのせる台の重さの変化を記録しているだけである。これだけ聞くと、中学生の夏休みの工作といったら失礼だが、たいしたことやってないじゃんと思うかもしれない。ところが、調味料をどれだけ使ったかがクラウド経由でスマホに入ったとたんに、“バシッ”と稲妻のようなものが走っている。

 私は、自分でカレーをつくって月に1回40人くらいに食べてもらっているが、オリジナルレシピをつくっているときには、調味料(香辛料)をどんだけ使ったかすぐにわからなくなる。それが、このシステムを導入したら何時何分にどの香辛料を何グラム使ったかわかる。これは便利! ちょみ研は「調味料台のIoT化と消費量推移の見える化により、ユーザーの健康を支援する」などとうたっているが、私はまったく違った「メニュー開発のログ」として使いたいと思ったわけだ。また、栄養学などの専門家なら、塩分・糖分の摂取統計をとるのに使えると考えそうだ。調理系の商品開発の参考にしたいという人もいそうである。

 ただの調味料の減り具合がインターネットにつながっただけで(インターネット・オブ・調味料)、人それぞれに想像力が刺激される! そこからスタートして、ビジネスでも研究でも自分や家族の健康でもいろんなことができるというワクワクした気持ちになれる。IoTのシンプルだからこそのスゴさにいまさら感心してしまった。

 コンピューターのすばらしさって、私は、それを買っただけで「自分にも何かできる」という勇気を持てることだと思っている。それに似た、ポジティブな魅力がIoTにはある。ところで、おうちハックとはいうけれど、よく考えると“おうち”(=家)自体が、ひょっとしたら人類最大のハックのような気もするのだがどうだろう? 最初に横穴式住居から出て家をつくるハック!

快適IoT
↑“快適IoT”の募集概要。〆切は2015年11月30日。審査員は、池澤あやかさん、林信行さん、船田巧さんほか。賞金総額は100万円だ。

●関連サイト
快適IoT

【筆者近況】
遠藤諭(えんどう さとし)
株式会社角川アスキー総合研究所 取締役主席研究員。元『月刊アスキー』編集長。元“東京おとなクラブ”主宰。コミケから出版社取締役まで経験。現在は、ネット時代のライフスタイルに関しての分析・コンサルティングを企業に提供し、高い評価を得ているほか、デジタルやメディアに関するトレンド解説や執筆・講演などで活動。関連する委員会やイベント等での委員・審査員なども務める。著書に『ソーシャルネイティブの時代』(アスキー新書)など多数。『週刊アスキー』巻末で“神は雲の中にあられる”を連載中。
■関連サイト
・Twitter:@hortense667
・Facebook:遠藤諭

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