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祝 Macintosh 30周年!! どこがボータブル?Macintosh Portable|Mac

2014年02月28日 18時00分更新

文● 柴田文彦、吉田博英MacPeople編集部) 撮影協力●多摩美術大学 メディアセンター

 みなさん、こんばんは。MacPeople/週刊アスキー編集部の吉田でございます。1984年1月24日に初代Macintoshが誕生して2014年で30周年。MacPeople編集部では短期集中連載として、初代Macから最新のMac Proまでに盛り込まれたテクノロジーについてひも解いていきます。今回からはこれまで取り上げてこなかったノート型マシンを紹介します。

 ノート型マシンとして最初に取り上げるのは、もちろんMacintosh Portable。1989年9月に登場した初のバッテリー駆動のMacです。初代Macintoshとほぼ同じスペックのハードウェアをコンパクトに詰め込んだ意欲作です。コンパクトとはいえ、実際はニークラッシャーという異名をとるほど重くて携帯性には優れませんでした。価格も100万円超と一般ユーザーには手が出せませんでしたが、当時の熱狂的なAppleユーザーはまあ一般ユーザーではなかったからそれでもよかったのかも。また、独フロッグデザイン社が手がけたポータブルマシンとしても有名ですね。

 今から思うとどうしてこんなマシンを出すの?と不思議に思うかもしれません。しかし、それは利便性を追求した結果だったといえます。初代Macと同じ操作感を実現するには、フルサイズのキーボードが必須だったといえます。また当時では数少なかったGUIを備えたMac OSを操作する手段として、マウスに変わって本体に一体化するポインティングデバイスも不可欠だったと思います。このマシンがあったからこそ、名作PowerBook 100シリーズが登場するのですから。

Macintosh Portable

 「ポータブル」と呼ぶのは気が引けるほど大きく重い本体ながら、バッテリー駆動を実現し、電源コンセントに接続しなくても使えるようになった記念すべき最初のMac。ただし、その後のPowerBookの前身とは言い難い、孤高の製品だ。

Macintosh Portable
Macintosh Portableは当時としては異例ともいえる、デスクトップマシンと同じキーボードを搭載していた。ポインティングデバイスとしてトラックボールを採用したことにも注目だ。なお、このトラックボールはキーボードの左側に配置することも可能だった

どこがポータブル?

 ここでで取り上げる製品が厳密に「ノートブック型のMac」だとすれば、このMacintosh Portableは除外しなければならないだろう。いわゆるラップトップ型の本体は、液晶モニター部分を閉じても、まったく小さくなるわけでもなく、とてもノートのようにカバンに入れて気軽に持ち運べるわけではない。横幅は38.7cm、奥行きは37.7cmもあり、重量は初代Macintoshより辛うじて300gほど軽い7.2kgもある。専用のキャリングバッグも用意されていたが、CRTを内蔵した初代Macintoshを専用のショルダーバッグに入れた場合のほうが、むしろ手軽に移動できるのではないかと思えるほどだ。

 机の上に置いた際に占める面積も、初代Macよりもずっと大きい。しかし、Macとして初めて液晶モニターを内蔵し、バッテリー(鉛蓄電池)で駆動できるようになった意義は大きい。この製品は、ジョブズがアップルを追われたあと、製品開発の指揮を執るようになったフランス・アップル出身のジャン=ルイ・ガセーが手がけたものと言われている。当時のガセーは、安価で多くの人に届く製品よりも、付加価値を付けた利益率の高い製品の開発を目指していたようだ。セパレート型として登場したIIシリーズの最高峰であるMacintosh IIfxも、ガセーの意図を忠実に反映したモデルとして知られている。付加価値が高ければ、そのぶん製品の価格も高い。

 このMacintosh Portableはハードディスクを内蔵しないフロッピーディスクモデルでも、辛うじて100万円を切る99万8000円。40MBのハードディスクを内蔵したモデルは、116万8000円という定価だった。このMacintosh Portableは、持ち運びが可能で、電源コンセントにつながなくても使えるという点では、もちろん後のPowerBookや、現在のMacBookシリーズの原点にあたる製品だ。しかし、少なくとも製品のコンセプトや、そこからくる形状について言えば、この製品を継ぐものは二度と開発されなかった。

Macintosh Portable
Macintosh Portableの液晶面に向かって右側面。3.5インチフロッピーディスクのメディアスロットが見える。内部にはこのフロッピードライブの上に、3.5インチハードディスクを搭載していた
Macintosh Portable
Macintosh Portableの専用キャリングバック。本体のほか、内蔵できる鉛蓄電池、ACアダプターなども一緒に収納できた
Macintosh Portable
重さは8kg弱あり、専用のキャリングバックを肩からさげると肩に食い込むほどの重みを感じた

PC-9801シリーズと同じ解像度の液晶を採用

 Portableには、ハードウェアとしてSEとはまったく異なる点もあった。内蔵モニターがCRTではなく液晶という違いは言うまでもなく、最も大きな違いはその解像度だった。SEのCRTが初代Macと同じ512×342ドットだったのに対し、Portableでは640×400ドットという、それまでのモニター一体型Macにはない解像度を採用していたのだ。もちろん、いずれもモノクロで、1ピクセルが白と黒のいずれかの状態となるだけの表現力しかもっていない。従って、見た目はそれほど変わらないが、SEよりは縦横ともにひと回り広いデスクトップ環境を実現していた。このように、一見すると中途半端な解像度の違いも、最初からウィンドウシステムを採用していたMac OSや、その上で動作するアプリケーションにとっては大きな問題ではなかった。

 このPortableより先、すでにIIシリーズで、より高解像のモニターに対する表示も実現していたこともあって、新たな解像度の追加による混乱もなかった。このPortableの液晶パネルは、現在では一般的なバックライトを備えたものではなく、反射光を利用した仕様だった。液晶パネルとしてはコントラストの高いTFT方式を採用していたので、明るい場所では非常にくっきりとシャープな表示が可能だった。その半面、暗い場所ではコントラストが低く、読み取り難いという欠点もあった。

 この液晶パネルの640×400ドットという解像度は、当時IBM-PCとその互換機が採用するV G A規格として一般的だった640×480ドットとは異なり、どちらかというとNEC(日本電気(株))のPC-9801シリーズの標準的な解像度だった。当時すでにラップトップ型を発売していたPC-9801用に開発された液晶パネルを流用したものではないかと推察される。

Macintosh Portable
Macintosh Portableの液晶画面は640×400ドットと、当時のパソコンの汎用解像度であるVGA(640×480ドット)とは異なっていた。Macintosh Portableのこの解像度は、NECのPC-9800シリーズと同じだった
Macintosh Portable
Macintosh Portableの内部。右側に鉛蓄電池を装着できる。中央には、ROM/メモリースロット、PDSが備わっていた

 さて、好評発売中のMacPeople 4月号では、Macintosh30周年特集第2弾として、Macintosh PortableやPowerBookなど歴代ノート型Macをたっぷり紹介しています。そのほか、2014年知っておきたい最新テクノロジー解説、Googleサービス使いこなし術、MacやiPhone/iOSのトラブル解決技など、じっくり楽しんでいただけること間違いなしです。

4月号はPortableと両Airが目印
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 また、MacPeople 3月号では、Macintosh 30周年を記念した特集記事を組んでいます。初代Macintoshのさまざな写真はもちろん、SE、SE/30、Color ClassicなどのコンパクトMac、Macintosh IIやIIci、IIsi、IIfx、LC475などのセパレート型Macの驚愕のテクノロジーをひも解いていきます。もちろん、68K MacだけでなくPowerPC搭載のiMacやPower Mac、インテルCPU搭載マシンを含む一体型、デスクトップ型すべてです。そして第2特集では、最新のMac Proを詳しく紹介。この2つの特集記事だけで80ページ以上ありますよ!

3月号は初代Macと最新Mac Proが目印
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