みなさん、こんばんは。MacPeople元・編集長の吉田でございます。1984年1月24日に初代Macintoshが誕生して2014年で30周年。MacPeople編集部では短期集中連載として、初代Macから最新のMac Proまでに盛り込まれたテクノロジーについてひも解いていきます。
8回目に取り上げるのは、初のPowerPCを搭載した第1世代のPower Macintoshシリーズです。CPUのアーキテクチャーを68KのCISCからRISCに変更しただけでなく、命令セットも異なるPowerPCを採用するという意欲的すぎるシリーズでした。このCPUの変更を下支えしたのが、68Kエミュレーターの存在ですね。その後のMacがインテルCPUの採用を決めたのも、このときのCPU変更がうまく進んだからといえるでしょう。
第1世代Power Mac(Power Macintosh 6100/7100/8100)
Power Macintoshは、MacのCPUがそれ以前の68KのものからPowerPCに全面的に変更されたことによって誕生したモデル。ただし外装も含めて華々しく登場したわけではなかった。
第1世代Power Macのミドルレンジ機、Power Macintosh 7100/AV |
68Kエミュレーターを搭載
68KのCPUからPowerPCへとスイッチしたMacは、OSの基本的なアーキテクチャーこそ大きく変更されることはなかったものの、CPUが直接実行できる機械語の命令はまったく異なっていた。つまりそれまでのアプリケーションは、そのままではまったく動かなくなってしまう。主要なアプリの開発元は、比較的早い段階でPowerPC用に書き直したソフトウェアをリリースしたものの、当初はまだ市場に68K CPUを搭載したMacが多く残っていたこともあり、すべてのアプリが直ちにPowerPC用に切り替わることは到底望めなかった。
アップルもそれを見越して、ある特別な機能を持ったソフトウェアを、PowerPCを搭載したMac用のOSに仕込ませていた。それはPowerPC上で68K CPUのコードを実行できるようにする、一種のエミュレーターだった。このエミュレーターを利用することで、多くの68K時代のアプリを、Power Macintosh上で実行することができた。なお、MacがPowerPCからインテルCPUに移行した際に活躍したエミュレーターも基本的には同様で、ユーザーはまったく意識することなく、その機能を利用できた。しかし、この68Kエミュレーターは、正確にはFPU(浮動小数点装置)を含まない68LC040のエミュレーターだったため、68KのFPUの実装を不可欠とするアプリは動作しなかった。当初は、PowerPC自体の性能がさほど高くなかったこともあり、旧アプリの実行速度についても不満が残るものだった。
とはいえ、このような仕組みをあらかじめ用意したことにより、Macとして初めての大きなCPUのスイッチを、なんとか乗り切ることができたのは間違いないだろう。ちなみにCPUのアーキテクチャーが変更される過渡期には、68K CPUとPowerPCの異なるプログラムをワンパッケージにしたファットバイナリーと呼ばれるアプリの形態も登場した。マシンの環境に応じて最適なプログラムが起動するという仕組みで、PowerPCからインテルCPUへ移行した際も同様の手法が採られた。
ピザボックス型スタイルを採用した最終モデル、Power Macintosh 6100 |
Power Macintosh 6100の背面 |
さて、絶賛発売中のMacPeople 3月号では、Macintosh 30周年を記念した特集記事を組んでいます。初代Macintoshのさまざな写真はもちろん、SE、SE/30、Color ClassicなどのコンパクトMac、Macintosh IIやIIci、IIsi、IIfx、LC475などのセパレート型Macの驚愕のテクノロジーをひも解いていきます。もちろん、68K MacだけでなくPowerPC搭載のiMacやPower Mac、インテルCPU搭載マシンを含む一体型、デスクトップ型すべてです。そして第2特集では、最新のMac Proを詳しく紹介。この2つの特集記事だけで80ページ以上ありますよ!
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