【前編】『機動戦士ガンダム 水星の魔女』Season2放送直前! プロデューサー岡本拓也氏インタビュー
今描くべきガンダムとして「呪い」をテーマに据えた理由――『水星の魔女』岡本拓也P
ガンダムシリーズファン層をいかに広げていくか
岡本 今作の方針として意識していたのは、ガンダムのファン層をいかに広げていくか、ということです。
―― ガンダムはすでに国民的コンテンツです。ここからさらにファン層を広げていかないといけない、と感じたのはなぜでしょう?
岡本 ガンダムファンの中心は30代、40代以上の方々が多いことが挙げられます。今までガンダムを応援して来てくださったファンの方々に喜んでいただけるようなコンテンツを送り出していくことはもちろん大切なのですが、やはりガンダムといえど、ファン層を広げていかなければコンテンツとして収束していってしまうという危機感を持っているからかもしれません。
『水星の魔女』は立ち上げ当初、今よりもっと戦争の色が濃い、いわゆる『ガンダム』らしい作品だったんです。大河内さんが上げてくださった第1話の脚本も、とても面白いお話でした。
第1話の脚本を書き終わり、第2話の構成もほぼできたというところで、一旦立ち止まって、考えるタイミングがあったんです。「今描くべき、届けるべきガンダムはこれでよいのかな?」と。ちょうどここから書き進めていくか否かという最終ジャッジのタイミングでもありました。
他のインタビューでもお答えしたのですが、ちょうどその少し前に社会科見学で会社に来た中学生や、新入社員でうちの会社に入ってきた若い人たちに話を聞く機会が何度かあったんです。
すると、「“ガンダム”って付いているだけで見ないです。だって僕らのものじゃないと思っているから」「ガンダムっておじさんたちのものでしょ」「お父さんが見てるけど、なんか難しそうだよね」って。
「ガンダムと付いているだけで壁になる」という感覚があるということに、そこでリアルに直面しました。
―― そのインタビュー読みましたが、衝撃的でした……。SNSを見ていると20代のファンも多いようですが、中学生から見たら「入りにくい」のですね……。私も中学生のときにはガンダムシリーズを観ていたので、その発想はなかったです。
岡本 確かに私自身に当てはめてみても、長期連載やシリーズものの作品って、新規で入りづらいところがあるなと思います。「続編をやってます」と言われても、今から見るのは敷居が高い、最初から観ないとわからないのでは、なんて考えてしまったり。
それはある種、ガンダムが長くやってきたことによる積み重ねで、伝統でもあるのですが、同時に「重し」のようなものになっているのだな、と。
そんな若い人たちへのインタビューの内容を打ち合わせの場でもお話していたこともあって、少し立ち止まるキッカケにもなったのかもしれません。
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