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6年間の集大成、それが乖離性ミリオンアーサー(後編):召喚★アプリ神

2015年03月02日 14時55分更新

 話題のスマホゲームのクリエイターとスクウェア・エニックス安藤武博氏が対談する連載『召喚★アプリ神(ゴッド)』。週刊アスキー本誌で掲載しきれなかったインタビュー内容を3回に分けて掲載します。

 第8回は『乖離性ミリオンアーサー』のプロデューサー岩野弘明さんを召喚!(前編中編後編

 なお、第9回のゲストはサムザップの『戦国炎舞 -KIZNA-』の代表取締役 桑田栄顕さん。追って掲載いたしますのでそちらもよろしくお願いします。

『乖離性ミリオンアーサー』

乖離性ミリオンアーサー:召喚★アプリ神
乖離性ミリオンアーサー:召喚★アプリ神
↑スクウェア・エニックス岩野弘明氏

■紆余曲折、試行錯誤の2年間で岩野氏が得たもの

安藤:乖離性は今から2年半前、拡散性が出てランキング1位になったころに、岩野から「もう次をつくらないといけない」と言われてスタートしました。当時はカードバトルゲームの全盛期でしたが、拡散性はカードバトルの中で最新の演出方法を持っているだけで、ゲームそのものは旧来のものであり当時から構造的限界が見えていた。今つくっておかないと2年後に拡散性が終わってしまう可能性があるから、すでにやばいと。だから今からつくらないとイカンということで始まったんです。

 スマホゲームの業界は移り変わり激しく、この2年半で4、5回トレンドも変わっています。早い流れの中で2012年に考えたものを2014年の11月に出すとなったときに、「これは面白い」と確信を持って進めていたものを時代に合わせて変えていくか、いかないのか、どうアジャストするかが大きなテーマで調整も大変だったよね。悩んでいる途中、色々なヒット作を遊んで考えることをしましたが、岩野も艦これやウィクロスにはまったりしていたよね。

岩野:実はウィクロスの影響は多大にあるんですよ。

安藤:ウィクロスが入手困難な時に、がさっと大人買いをしてきた(笑)。TCGに関してはいろいろハマってやっていたよね。

岩野:ウィクロスの前には、ブシロードの『ヴァイスシュヴァルツ』にハマっていました。TCGってストイックな絵柄のものが多いですけど、ヴァイスシュヴァルツはよりキャラ萌えにテーマを絞っていて、でもゲーム性もしっかりしている。初心者には入りづらいものだったんですけど、全く同じコンセプトをスマホのアプリで遊びやすくしたいと思ったきっかけになりました。あと乖離性ではマルチプレイを見越していたので4人のアーサーがいるんですが、その設定とウィクロスが似ていたので、かなり参考にさせていただきました。

安藤:岩野は乖離性が出るまでに他にもゲームを出しましたけど、1年もたずにクローズしたものもありましたよね。多作でありたかったからいろいろ立ち上げたんですけど、世に出ないもの、世に出てもうまくいかないものも多かった。そこから得た教訓はありますか?

岩野:チャレンジする部分とそうでない部分のバランスですね。スマートフォンゲームの文法として、ゲームサイクルやテンポはしっかりベースとしてつくっておかなくてはいけない。その上にオリジナリティーをのせるとき、発揮しすぎると邪魔に思われることもある。何作かやっていく中で、ちょうどいいバランスを見つけられた気がします。

安藤:本当にそこは難しいですね。その時々で最適解を見つけたものが受けていると思うんだけど、制作に期間もお金もかかるようになってきているので、本当に正しいのかドキドキの度合いが今までと違う。

岩野:ひとつ自信になったのは、それでもやっぱり乖離性はカードゲームなんですよね。カードゲームはもういいという方も多いし、パズルの『パズル&ドラゴンズ』があったりアクションを取り入れた『モンスターストライク』がヒットする中で、カードゲームもこう遊んだら新しいし面白いよと提示できたし、それが受け入れられたのはすごくよかったです。

安藤:特に旧カードバトル全盛のときは、みんなそこからの脱却を課題にしていた。「これでいいのか?カードバトルバブル!」みたいな時代の疑問に対して、乖離性は具体的な遊びを発展させ提示した。ついにやってのけた!という感がすごくあるよ。

岩野:いわゆるソーシャルカードゲームは、カードゲームとは言いながらTCGと全く違う概念なので、TCGが同じように見られることが釈然としなかったんです。TCGってこんなに面白いんだよということをぜひわかっていただきたかったので、本当によかったと思います。

乖離性ミリオンアーサー:召喚★アプリ神
↑現在は人が多すぎて、うまくマッチングしないこともあるという。問題点の改善も含め、岩野氏が語るようなコミュニケーション部分の発展にも期待したい。

■6年間の集大成、それが乖離性ミリオンアーサーだっ!

安藤:乖離性はおかげさまでご好評をいただいて、100万人突破のイベントをやっている最中に500万人突破のプレゼントがユーザーに配られたり、かなりの勢いで伸びています。ミリオンアーサーは拡散性の時から東アジア地域でも知名度があって、乖離性も始まった直後にもう海を越えて遊びに来ている人がいる。テレビでは実写の『実在性ミリオンアーサー(以下、実在性)』もやっていたりして、IPとして、ブランドとして立ち上がってきたなという感じがすごくあるし、さっきのキャラクターの話のように、もっと広げていきたいなと思います。乖離性は始まったばかりだけど、今後の育て方にどんなイメージをもっていますか?

岩野:コンセプトであるキャラ萌えをさらに強化することと、カードゲームとしての面白さを追求していくことですね。発展のしかたとしては、TCG的なアプローチで戦略やゲームそのものの仕組みを楽しめるようにしたいですし、キャラクター性もそれについていく形で強化していきます。マルチプレイもコミニュケーションが取れたほうが盛り上がるので、ギルドのような場を用意したいです。「俺が歌姫をやるからお前が盗賊をやってよ」なんて話し合って遊ぶのうのって楽しいですよね。

安藤:乖離性はこれからも丁寧にやっていきたいし、PS Vitaや3DSでも始まった拡散性も並び立てていきたいですよね。
 こうやって岩野と話していると、今回も大きく仕掛けたたなと思います。乖離性というタイトルもすごいチャレンジングで、普通の生活の中では使わない言葉ですし、最初は読めない人もいる。もしかしたら間違って呼んでいたり、読めないまま遊んでいる人もいるかもしれない。

岩野:タイトルは鎌池さんにアイデアを出していただいて、乖離性というのはこちらで決めさせていただきました。

安藤:UIにも発明があって、乖離性は現時点で僕が思い描いていた最強の形のひとつになっています。

岩野:UIに関してはやりきれなかった部分もありまして、今までに得たノウハウの最低限はクリアしたなというところです。最終的にバトルの仕様を大きく変えましたが、実はデッキの構成画面がそれに合ったものになっていないんです。もうちょっとソート機能を充実させたり、見やすくしたりしたかったですね。今後改善していきたいと思います。

安藤:全編にわたって守るべきところは守り、変わらなくていいところは変えず、それでも変えないといけないところは暗闇に向かってジャンプするような感じでチャレンジをしたよね。手前味噌ですが、現時点での我々の集大成という感じです。

 それはiPhoneでゲームをつくりはじめて丸6年の集大成。乖離性をつくりあげたのは岩野ですが、我々全員の6年間の物語でもあって、ラグビーのようにボールをつなげて最新型のトライができたという感じです。

岩野:僕がつくったゲームにはヒットにつながらなかったものもありますが、良かったところと悪かったところをリストにしているんです。そういった課題点を新しいタイトルに取り入れていっているので、どんどん洗練されていっているのかなと思いますし、そういった流れの中での乖離性なのかなという気はしますね。

安藤:想い返すと、今までトレンドの変化や時代にあった塩梅の見つけ方で多くのクリエイターがもがき苦しんできました。現場でもがいている岩野に対して僕が唯一できたのは、このアプリ神のようなコーナーを持っていただいて、最前線でもがき苦しんでいる人たちと会話を交わして、みんなどうやっているのか、何を考えているのかというのを捉えて伝えるぐらいでした。

岩野:安藤さんが会議で話されるちょこっとしたことが、実は入っていたりするんですよ。

安藤:それは嬉しいな!この連載で多くのアプリ神と出会い、カードバトルの可能性であるとか、テンポであるとかUIであるとか、塩梅の話や…みんなとつながること、選択と集中の大事などなど…様々なお話をうかがって、大変参考にさせていただきました。また、それが出来ているか、さらにそれを越えていくことを考えているかを常に意識してきました。それが実を結んでよかったと思うと同時に、かなり繊細な作業だったなとも思います。

 アプリ市場というレッドオーシャンで良い風を見いだしたり、難破したり遭難したりもしたけれど、艦隊としてみんなで新大陸に向かっていく。そして新天地の砂浜に足跡を付けることができた。この対談に出ていた皆さんから、乖離性の制作にお力をいただいたという気持ちが多分にありますし、そういう意味でも乖離性は僕の、我々の集大成だとつくづく思います。


※このインタビューは2014年12月に収録したものです。

乖離性ミリオンアーサー:召喚★アプリ神
↑スクウェア・エニックス安藤武博氏

■関連サイト
乖離性ミリオンアーサー 公式サイト
スクウェア・エニックスマーケット

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