話題のスマホゲームのクリエイターとスクウェア・エニックス安藤武博氏が対談する連載『召喚★アプリ神(ゴッド)』。週刊アスキー本誌で掲載しきれなかったインタビュー内容を3回に分けて掲載します。
第7回は『剣と魔法のログレス いにしえの女神』の板倉基之さんと下川晶平さんを召喚(前編、中編、後編)!
なお、第8回のゲストはスクウェア・エニックス『乖離性ミリオンアーサー』のプロデューサー岩野弘明さん。追って掲載いたしますのでそちらもよろしくお願いします。
『剣と魔法のログレス いにしえの女神』
■ ログレスのヒットで起こった変化とマーベラスの社風
安藤武博(以下、安藤):Aimingさんは、非常にたくさんゲームをつくられている印象がある会社です。椎葉さんの前職でつくられた『ブラウザ三国志』の影響を強く受けたシステムの作品も多数ありましたが、去年から今年にかけて『スマホでゴルフ! ぐるぐるイーグル』のようなスポーツゲームが出たり、セガさんと組んで『幻塔戦記グリフォン』のような横スクロール型のアクションMORPGも出されている。今後マーベラスさんとAimingさんの共同事業でつくられるものも、業界人としてもファンとしても何が出てくるかわからないワクワクがあります。ログレスが出てヒットしたことで、Aimingさんの今後の動向や会社全体の雰囲気、大阪のAimingさんと東京のマーベラスさんとの関係で何か変化があったら教えてください。
下川晶平(以下、下川):弊社の社内では、プロジェクト間のコミュニケーションが前よりも活発になりました。お互いに情報提供しあう関係になってきたと思います。ログレスがヒットして、東京のマーベラスさんとの情報交換もやりやすくなりました。
安藤:お互いに聞きたいことが増えますしね。実は僕は、このところ大阪の開発会社さんが突き抜けたものをつくるなという印象をもっているんですが、大阪で開発する良さ、メリットはありますか?
下川:あくまで私の持論なんですが、大阪はいい感じで情報がフィルタリングされている気がします。
安藤:ノイズが少ないというか、東京は距離があるからその間に余分な情報が削ぎ落とされるのかもしれないですね。逆に大阪だと不便なことや、やりづらいことはありますか?
下川:それがまったく同じなんですけど、逆に必要な情報が入ってこないことがあるんです(笑)。
板倉:ウチからの情報が伝わらないことがあるみたいです(笑)。
安藤:そうなんですね。開発チームと距離が離れていると難しい部分もあると思うんですが、そのあたりについて板倉さんはいかがでしょう。
板倉基之(以下、板倉):私は以前、ほかの会社でオンラインゲームを担当していまして、そのときは中国や台湾で開発していたんです。
安藤:もっと距離が離れていたんですね。今の方がむしろ近い(笑)。
板倉:電話をして、会話ができるというだけでずいぶん違いますよ。
安藤:マーベラスさんもAimingさんと同じく、コンソールからネットワークゲームからモバイルまで、かなりチャレンジをする会社だという印象があるんですけど、ログレスのヒットによって何か変わったことはありますか?
板倉:チャレンジという点では特にないと思います。弊社は以前からプロデューサーがそれぞれ好きなものにチャレンジしていくという社風ですから。
安藤:以前ほかのメディアで、『閃乱カグラ』シリーズをプロデュースされたマーベラスの”爆乳プロデューサー”、高木謙一郎さんと対談させていただいたことがありますが、今日とは違っておっぱいの話が中心でした(笑)。同じ会社でもバラエティーに富んでいて、そこがマーベラスさんの面白いところですよね。
板倉:そうですね、ログレスがヒットしたからといって、会社からMMORPGをつくれとは言われないと思いますし、私も今MMORPGでもRPGでもないものを1本つくっています。
↑MMORPGなので、イベント開催マップには多くの人が集まる。もちろんいっしょに戦うこともできる |
■ 更新の多さにユーザーも満足!MMORPGの未来に向けて今後も進む
安藤:スマホのゲームというとサイクルが早い印象がありますが、ログレスは基礎がネットゲームなので、きちんと受け入れられたら『FF XI』や『ラグナロクオンライン』のように5年10年続いていくと思うんです。そこに対しての覚悟や、長く続けていくという意識はありましたか?
板倉:まさにおっしゃる通りで、普通のPCのMMORPGと一緒で比較的安定して年月を重ねられるかなと思っていたんですけど、意外とそうはなっていないんですよね。コンテンツを追加し続けないと、ユーザーさんに納得していただけない傾向がPCよりも強く感じられます。
下川:PC版ログレスの方は3周年を迎えて絶えずしんどい状態ですが、やっていただけることはありがたいことなので、いろんな遊びを長い間提供していきたいなと思っています。
板倉:ログレスはPCのころから特殊で、一気に大型アップデートをするという考え方があまりないんですよ。PC版ログレスだと毎週木曜日にアップデートがあって、スマホ版は不定期ですが主に火曜日にアップデートをして、ほぼ毎週何かを入れていくんです。
下川:そのやり方は弊社でも少ないかもしれませんね。そもそもの完成度が30%なので、気付いたところから直していきたいんです。ただ、最初に毎週アップデートしていたので、ユーザーさんがそれに慣れてしまって「今日はアップデートはないの?」みたいな(笑)。そういった形でログレスは突き進んでいます。
安藤:いいですね、毎週運営が何かをするというのは、良いサービスを提供している証拠だし、プレーヤーにとっても幸せですよね。今後のスマホにおけるMMORPGについて、なにか思うことはありますか?
板倉:いつかスマホで、月額のMMORPGにチャレンジしてみたいですね。ユーザーにとってもメーカーにとってもお互いにメリットがあると思うので、そこはなんとかしたいです。
安藤:なるほど。僕は月額課金は、とても安心して遊べるいい仕組みだと思っているんです。今のお話を聞くとスマホにおけるMMORPGのデザインやマネタイズはまだまだ変わっていきそうですね。
戦闘中のチャットの話や、月額課金の話もそうですが、ログレスはスマホのエンターテインメントとして最先端のことをやっていると思うんです。未来って驚きを伴って現れるのではなくて、ログレスのようにいつの間にか身近なものになっていることなんだと思います。ネットワークゲームの歴史から見ると、ついにMMORPGだとユーザーに感じさせないようなところまできてしまったんだと、時代の変遷を感じます。
Aiming社長の椎葉さんは東アジア地域のMMORPGを輸入してスマホで動かそうとしたり、PCのノウハウをスマホで活かせないかと一貫して模索してきました。成功が多い印象ですが、挑戦と失敗を誰よりもやってきた。ログレスはそういった継続的な動きのひとつの答えだと思いますし、Aimingさんとマーベラスさんのチャレンジの結晶ですよね。
下川:インタビューなどでは、「なぜ売れたと思いますか?」という質問が実はいちばん答えにくいんです。いろんなことを頑張りましたとしか言いようがないんです(笑)。これを頑張ったからヒットしました、というわけではないんですよね。
板倉:同じことを社内で聞かれたときに、シンプルに答えました。「ちゃんとMMORPGをつくったからですよ」って。やっぱりMMORPGは面白いですし、みんなが遊んでくれると思っていました。
安藤:ログレスをつくり上げたお2人だから言えるカッコいいセリフですね。本当にその通りだと思います。でもそれをやってのけるのは本当に難しいですし、ゲームの神様に愛されて奇跡的に完成したものなんだなと、改めて強く感じました。最後にユーザーの皆さんに伝えたいことがありましたらお願いします。
板倉:おかげさまで、スマホ版ログレスももうすぐ1周年になります。ありがとうございます。
下川:感謝の気持ちを込めて、12月の上旬から大きな1周年イベントがスタートします。いろんなイベントてんこもりで、年末年始にかけて1ヵ月間ぶっ通しでお祭り騒ぎが続きますので、ぜひ参加してください。
安藤:サービスの開始が年末なのがいいですよね。ネットワークゲームって年末年始に盛り上がりますものね。
下川:ただ、開発者としては辛いですね(笑)。
安藤:下川さんのお正月がなくなってしまいますね(笑)。でも楽しみにしています!
※記事の内容は2014年11月26日のものです。
↑スクウェア・エニックス安藤武博氏(左)、マーベラス プロデューサー 板倉基之氏(中)、Aiming プロデューサー下川昌平氏(右)。 |
(c)Marvelous Inc. Aiming Inc.
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