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“面白くなかった” 乖離性ミリオンアーサーがヒット作へ昇華(前編):召喚★アプリ神

2015年02月28日 21時00分更新

 話題のスマホゲームのクリエイターとスクウェア・エニックス安藤武博氏が対談する連載『召喚★アプリ神(ゴッド)』。週刊アスキー本誌で掲載しきれなかったインタビュー内容を3回に分けて掲載します。

 第8回は『乖離性ミリオンアーサー』のプロデューサー岩野弘明さんを召喚!(前編中編後編

 なお、第9回のゲストはサムザップの『戦国炎舞 -KIZNA-』の代表取締役 桑田栄顕さん。追って掲載いたしますのでそちらもよろしくお願いします。

『乖離性ミリオンアーサー』

乖離性ミリオンアーサー:召喚★アプリ神
乖離性ミリオンアーサー:召喚★アプリ神
↑スクウェア・エニックス安藤武博氏(左)、スクウェア・エニックス岩野弘明氏(右)。

■“面白くなかった”乖離性がヒット作へ昇華

安藤武博(以下、安藤):今回は僕の部下でもある岩野を召喚しました。この企画では2回目の登場で、『拡散性ミリオンアーサー(以下、拡散性)』のプロデューサーであり、続編『乖離性ミリオンアーサー(以下、乖離性)』のプロデューサーでもあります。手前みそなので言いにくいんですけど、同一ブランドの続編がリリース直後からお客様に受け入れられるのはスマートフォンゲームやネットワークゲームでは珍しい。でもここまでの道のりは大変だったよね。

岩野弘明(以下、岩野):ようやく出せたという感じです。本当は2014年の5月ぐらいに出す予定でした。拡散性の良さであるキャラクターをよりフォーカスして、キャラ萌えを中心にどれだけ拡散性のお客様に喜んでもらえるかをコンセプトにつくっていたんですが、ゲームが面白いかどうかというキモの部分が最後まで決まらなくて。

安藤:5月が8月になり、さらに11月の末まで伸びた。8月の時点では、今とは全然違うゲームでした。端的に言って面白くなかったんです。今だから聞けるけど、その時期岩野はどんなことを考えていたの?

岩野:完成形はなんとなくイメージ出来ていたので、そこに落ち着けば面白くなると思っていたんですが、何かが足りない。その足りないものによって面白さが左右されるという状態でした。1週間ぐらいあれこれやって、そこでカチッと固まったので、あとはスムーズにいけました。

安藤:乖離性はいっしょにやった拡散性と違い、完全に岩野ひとりでプロデュースした作品で、僕はゲームの中身を見ていないしノータッチなんです。見たり口を出すと、僕のものになってしまうから。ただ乖離性は1年ぐらい前に、すでに今の絵面のクオリティーがあって、制作経験が少ないクリエイターには出せない色気があった。これはイケるなと思っていたし、あえて改修の過程も見ていないんですけど、最終的にどこを変えたの?

岩野:戦闘シーンを大きく変更しました。ターンが経過するごとに使用コストの石が増えていって、それによって複数のカードを出せる。そこが新しく入れたところです。乖離性の根底にはTCG(トレーディングカードゲーム)の概念があって、よりそこに近づけていきました。改修前は毎ターン1枚しかカードを出せなかったので、強いカードだけ出しておけばよかった。今までのカードゲームとあまり変わらなかったんです。

安藤:そうだね、それだと力押しで終わっちゃいますね。

岩野:そうなるとインフレする未来しか見えないし、本来カードゲームは制限の中で戦略を練ってカードを出していくものなので、最後にそのシステムを入れました。変更を入れたことでリリースがまた何ヶ月可能性もあったんですが、制作会社のヘッドロックさんに1ヵ月で仕上げていただきました。

安藤:ヘッドロックさんはネットワークゲームの制作デベロッパーとしては老舗で、僕もずいぶんお世話になりましたし、拡散性の続編をつくるにあたって骨太な制作会社と組みたいなと思っていたんです。今回そこにちょうどゲームアーツのスタッフが合流していて、家庭用ゲームの歴史そのものと言える宮路洋一さんがいらした。乖離性は宮路さんにかなり現場に出ていただいたプロジェクトで、ゲームとして面白いと言われているのは宮路さんに関わっていただいたことが大きいんです。理解力があって、なによりクオリティファーストがありますよね。

岩野:面白くないものは絶対に出さないというマインドをお持ちですし、最後の改修を実現するクオリティもありました。

安藤:面白いよね。スマホの最新のゲームで宮路洋一さんの名前が出てくるんだから。最近、『テラバトル』などいわゆるレジェンド系のクリエイターの底力がにじみ出るアプリが増えている気がするんですが、実は乖離性ミリオンアーサーもそうなんですよね。

岩野:乖離性を立ち上げた当時、今までのブラウザゲームではなく、コンシューマーに近い色気をつけなければいけないということもあって、ブラウザゲームとコンシューマーの中間ぐらいを狙っていたんです。特にスマートフォンのゲームにはボタンがないので、UIだとか見せ方とか、あとはネットワークゲームであるという基本的なことを理解した上で開発してくれるところということで、ヘッドロックに声をかけたんですよね。そこにさらに宮路さんのような方がいらして、根性も乗っかって、乖離性は今の形になりました。

乖離性ミリオンアーサー:召喚★アプリ神
↑画面中央下にあるのが使用コスト。2枚のカードで攻撃と支援を同時に行なったり、ほかのユーザーとの“Chain”でスキル効果を上げることもできる。岩野氏が悩んだ末に生み出しただけあって、奥が深いバトルとなっている。

■乖離性にはカードゲーム本来の楽しさが詰まっている

安藤:乖離性にはそういった生みの苦しみがたくさんある。当初はいわゆる旧カードバトル系のお作法にのっとっていたので、クエストで探索してから戦闘に行くという形でした。でもどうもテンポが悪いので、思い切った改修もやりましたよね。

岩野:それまでは探索だけがひたすらあって、その先で今でいうところのバトルを連戦していく、というものでした。

安藤:「探索って必要か?」という話にも何度かなった。記憶にあるのは『艦隊これくしょん(以下、艦これ)』の登場で、あれはそういった段階を経ずにいきなりクライマックスがやってくる。「これでいいじゃん」という話をしたこともありました。

岩野:探索をバトルと切り分けて残したのは、バトルの経験値が何%アップとか、報酬獲得率が何%アップとか、いわゆるバフを将来的に探索でかけられるようにしたかったからです。バトルに行く前に探索をポチッと押すといいことが起こる。バトル楽しむためのギミックとして残した方がいいだろうと。結果として、お客様にご好評をいただけたのでよかったです。

安藤:乖離性では、あきらめるところは徹底的にあきらめた。もっとやりたかったことやあきらめたことが、これからの課題として残っていると思いますが、そこについてはどうですか?

岩野:乖離性にはプレイヤーが4人まで参加できる協力バトルがあるんですが、ロールプレイングの幅が広いほうが面白くなりますよね。4人のアーサーがジョブのクラスチェンジをしたり、あるいは5人目のアーサーが出てきたり、アーサーのアバターも変えられるようにしていきたいです。発展のさせ方はまさにMMOですね。

安藤:拡散性の時は、今後どう発展させるかが難しかった。でも乖離性では、すでにあるものをどう磨き込むか、厚みを増していくかという話になるので、ベースのシステムは最初から完成されている印象がありますね。

岩野:拡散性の時と大きく違うのは、拡散性は違いを出すためにインフレをさせるしかなかったんです。

安藤:よくも悪くも、いわゆるソーシャルゲームの旧カードバトルゲームでしたからね。

岩野:でもTCGの仕組みだと、パックが追加されるごとにギミックが増えていくんですよ。第二弾パックでは敵を凍結させて動きを止められる、第三弾パックでは凍結した敵を壊せるという具合に、システムを熟成させていくんです。そういう感じでTCGとして発展させていくことができれば、インフレが起こらない。最高火力が1万7000ぐらいだとして、それを増やす必要はなくて、横の広がりでもってカードの価値や面白さを高めていけます。すごく健全だし、お客様に納得していただけるいいカードを提供することができる。それが乖離性のいいところだと思っています。

安藤:ゲームシステム的には、他にも改変したところがありますよね。開発中の4人協力バトルでは、もっとバリバリにチャットができていたよね?

岩野:そうなんですよ。バトルの仕組みがよりTCGになって考える時間が増えてしまったので、チャットで会話している余裕がなくなってしまったんです。設定してある30秒の待ち時間も、長いかなと思っていたんですが結構ギリギリまで使って考えてしまうんです。これでは文字なんかは打てないので、簡易チャットにしたんです。ただ、簡易チャットの数は全然足りていないので今後増やしていく予定です。

※このインタビューは2014年12月に収録したものです。

■関連サイト
乖離性ミリオンアーサー 公式サイト
スクウェア・エニックスマーケット

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(c) 2014-2015 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.

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