今週のテーマは8月後半の新作です。三宅デスクはもうすぐ新作が公開される「スター・トレック」の前作を、諸富デスクはブルース・ウィリス主演の「LOOPER/ルーパー」を選びました。
スター・トレック |
今年の夏は1000年に一度の猛暑とのことだが、8月のロードショーも同じくらいアツい。すでに「ワールド・ウォーZ」と「パシフィック・リム」を消化したので、残りは……
「ホワイトハウス・ダウン」
「スター・トレック イントゥ・ダークネス」
「マン・オブ・スティール」
を観ないといけないのだが、一日2本のダブルヘッダーは当然で、こんな大作ラッシュは記憶にないくらい。
昔は2本立てとか3本立ての旧作映画館などで、平気で朝から観ていたけれど、今は画面も音響もド派手で結構疲れる。あと、大抵1本目の印象が曖昧になるので、本命を後回しにしたほうがよいようです。もうゾンビ映画は、ロボットvs.怪獣映画に上書きされました。
さて、今回はすでに今週末から先行ロードショーされている「スター・トレック イントゥ・ダークネス」に関連して、J・J・エイブラムス監督作品の1作目を観ましたよ。とっくにセルビデオが発売されているのだが、iTunes Movieでは新作のようです。
日本でのスター・トレック人気はもうひとつで、昔からの根強いファンに支えられているが、この作品はシリーズをまったく観たことがない人でも楽しめるように企画された、前日譚的な存在だ。後々大活躍するカーク船長の子供のころからスタートするため(なぜかエア・ジョーダン履いている)、新旧12本ある劇場版の中で、最初に観るならこれしかない一本。
また、エンタープライズ号の建造シーンなんかも見どころなのだが、この船は劇場版でしょっちゅう壊されるため、続編で新艦の建造シーンから始まる。そこにクルーが高揚しながらデッキに集まるシーンがお約束のようにあるため、シリーズを重ねると「男はつらいよ」における寅さんの悪口を言っていると当人が帰ってくる場面くらい、「よし来た!」感が楽しめるパートだ。
物語は父親を殺した宿敵に、同じく艦隊員となったカークが再び相まみえるという遺恨もので、前知識がなくても入っていきやすい親切さ。敵の船が宇宙戦艦ヤマトのズォーダー大帝の超巨大戦艦くらい圧倒的にデカイので、シリーズ屈指の艦隊戦も堪能できる。
個人的に思い入れのある劇場版は……
「スタートレックIV 故郷への長い道」
超巨大な謎の生命体の探査船が地球に接近。地球は壊滅状態で、コンタクトするにはとっくに絶滅したザトウクジラを連れてくるしかなく、タイムスリップして現代の地球に向かう。未来人と現代人のギャップが楽しいコメディ作品。
「スタートレック ファーストコンタクト」
人類がどうやっても勝てないボーグの超巨大船ボーグシップと、宇宙艦隊の艦隊戦で超興奮できるシリーズ8作目。過去に逃げて人類の歴史を変えようとするボーグを追って、タイムスリップして現代よりちょっと未来の地球に向かう。
……て似たような話じゃん、と思うが、この繰り返し感がとても楽しいのがスター・トレックなので、ぜひこの作品から入ってファンになって、ボックスとか一気観してほしい。最近、座頭市を一作目(1962年)から見直したら、賭場のいかさまシーンの台詞が1989年の作品と同じで、繰り返しの醍醐味を堪能できましたよ。(三宅)
スター・トレック(字幕版)
HD版レンタル:400円、SD版レンタル:300円
LOOPER/ルーパー |
僕ぁね、映画産業はもうダメかもしれないなと思いましたね。この映画を見たからじゃないです、見る前。だって、大物ブルース・ウィリスと、若手注目株のジョゼフ・ゴードン・レヴィットのダブル主演ですよ? 本作の予告編を見た時、よっしゃこれは劇場に見に行ったろと思ったわけです。そんで上映館を探してみたらあなた、首都圏で2カ所しかやってなかったんですよ? 映画館だきゃあ星の数ほどあるこの大都会大東京でたった2館て。ブルース・ウィリスが主役でもミニシアター系以下の扱い……。泣けるぜ。
まあただ、映画業界の人もバカじゃないです。ヒットしそうな作品をそんな扱いにするわけないんで。否が応にも湧き出てくる駄作の予感。最近のハリウッド作品は大スターを使って平気でウ●コみたいな作品を出してきますから。まあでも、それ込みで楽しむのが映画ファンなわけでありまして。前説が長くなりましたが、とっとと感想にまいりますか。
えー、ざっくりまとめると「そこそこ面白く作られた中坊向け映画」です。話はテンポよく進みますし、未来描写、アングラ描写、暴力描写、銃撃戦──などなど、中坊が好きそうな要素がいっぱい。あ、もうひとつ「超能力」ってのも出てきます。わかりやすい伏線を張ってきちんと回収する、親切なつくりとなっております。よく出来た中坊映画というのは、イコール男なら誰でも楽しめます。ほら男って心の何割かはずっと厨二やん?
ストーリー設定も面白いです。「LOOPER」というのは、30年後の未来からタイムマシンで送られてきたターゲットを射殺する殺し屋のことです。LOOPERはマフィアみたいな組織に雇われた下っ端で、ジョゼフ演じる主人公もその一人。その彼の下へ、ある日「30年後の自分」(ウィリス)が抹殺対象として送り込まれきちゃった、さてどうしよう! 組織の掟により、誰であろうと抹殺対象は殺さねばなりません。えー、でも未来の自分殺すのってどうなの? みたいに躊躇してたら未来の自分に逃げられてしまい、哀れ主人公は、組織に追っかけ回されながら、未来の自分を探してぶっ殺すために奔走する羽目になるという殺伐としたお話です。ユニークっちゃユニークですけど。
見どころは、まずレヴィットとウィリスが30年の時を隔てているとはいえ、同一人物であるということの整合性をどうやってとっているかという点。二人が並んでいても、何となく似て見えるように撮ってあるんです。メイクか、多分CGだと思うんですけど、レヴィットとウィリスの両方の顔に、お互いの顔の特徴をレタッチで張り付けたように見えるシーンがいくつかあるんですね。特に、ウィリスが未来から送られてくるのを待っている時のレヴィットの顔、見てみてください。なんか気持ち悪いというか、違和感ありまくりですから。
あと秀逸だと思ったのは、「過去から未来へ『リアルタイムに』メッセージを送る方法」です。めっさアナログ。でもそれだけに怖い。その例示として、主人公の友人がその目に遭うのですが、その描写はマジで怖かったです。
そんなわけで、タイムスリップものに付き物の「タイムパラドクスをいかに解消するか」への回答も含め、それなりに楽しめる作品です。惜しかったのは、アクションが物足りなかったことと、低予算なんだろうなーと思われるロケーション(クライマックスシーンが畑ですよ、畑)ですかね。あと、LOOPERの存在理由というか、マフィアがタイムマシンを使う動機自体に致命的な欠陥があるのが残念。まあ中坊映画なんでね、気にしなきゃいいんですけど。
LOOPER/ルーパー(字幕版)
HD版レンタル:500円、SD版レンタル:400円
【MacPeopleデジタル版をNewsstandでも配信中!】
1ヵ月の定期購読なら最新号が600円で読めます
-
680円
-
17,800円
-
1,610円
-
999円
-
3,436円
-
2,610円
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります