CES開幕前夜は、恒例のマイクロソフトによる基調講演だ。もちろん同社CEOスティーブ・バルマー氏が担当する。今年は、製品発表のタイミングなどの関係で、今後は自社主催の展示会やセミナーに注力し、CESからは撤退すると宣言し、マイクロソフトが行なう基調講演が最後になるとのことで、いやがおうにも期待は高まる。
↑CES主催者側のシャンピオ氏と固い握手をするバルマー氏。 |
CESにおけるマイクロソフトの基調講演は1995年以降、過去に15回行なわれている。そのうち最初の11回をビル・ゲイツ氏が担当、残りの4回がスティーブバルマー氏の担当だ。
そして開演した基調講演。ステージに登場したのはライアン・シークレスト氏。
↑最初に登場したのは人気司会者のライアン・シークレスト氏。 |
アメリカン・アイドルや、American Top 40などで有名な米国の司会者タレントだ。バルマー氏のスピーチというと、舞台をところ狭しと歩き周りながら、奇声をあげたり騒いだりといった様子を期待してしまうのだが、今回は、どうもそうではなさそう。
ステージに置かれたスツールに向き合うように座るシークレスト氏とバルマー氏。なごやかな雰囲気の中で基調講演が始まった。
↑基調講演は二人の対談という形式で進行。 |
今、現在進行形で、マイクロソフトに起こっている新しいイノベーションを順に紹介しようという趣旨で、まず、最初は Windows Phone 7が紹介された。スマートフォンはいろいろあるが、Windows Pnone 7は、ほかとは違う。人と人をつなぐことができる点で優れているという。
基調講演が始まったのは18:30を少しまわったところだが、バルマー氏がポケットから取り出したケータイには、ビル・ゲイツ氏から18:07に不在着信があった模様。どうせなら、そこで呼び出してほしかった。
以降も、各担当者が呼び出されて聴衆の前でさまざまなデモが披露されていく。ちょうどノキアからLTE対応の新製品が出たばかりということもあり、バルマー氏はそのスピードを絶賛する。
そして、話はPCに転じる。Windows 7が好調であることがひとしきり話され、現在のPCはスマートデバイスとしてダントツの存在であることがアピールされた。ただ、ものごとは変わり続けているというのも確かで、人々は最良のものを常に求め続け、何もあきらめないとバルマー氏。そして、今、トレンドとなりつつあるウルトラブックの数々が紹介された。
もちろん、Windows 8のこともしっかりと紹介された。
↑スタートスクリーン。 |
Windowsストアのデモンストレーションでは、あらゆる言語で利用できるストアであることが強調されていた。多くの人たちにとっては、すでによく知っているWindows 8ではあるが、この日のデモでは、タッチやキーボードのほかに、マウスで使っても快適であるということが強くアピールされていたように感じた。Windows 8の登場までは、まだ時間がある。ウルトラブックの数々は、まだ、タッチスクリーンを備えていないが、買い控えることはないということを言いたかったのだろうか。今、Windows 7が使えるPCがあるなら、そのすべてはWindows 8に移行することができるということだ。
クラシックデスクトップでワードドキュメントを開き、メトロアプリをサイドに表示したり、メトロスタイルのIEをフルスクリーンで表示し、タブの代わりにサムネールで開いているサイトを一覧するなど、ブラウズ体験がとてもナチュラルな操作ででき、ハードウェアアクセラレーションも極めつけだとデモが続く。
そして、ここでツウィート聖歌隊が登場、ゴスペルふうにここまでの話の内容を振り返る。とにかく今夜のバルマー氏は言葉少なく、いつもの強引さがない。
↑ツウィート聖歌隊が基調講演の内容を歌い上げる。 |
続いてステージにはXboxの担当者が呼ばれ、やりたいことをコンピューターが解釈するナチュラルインターフェースが紹介された。
検索エンジンのBingとの融合により、いろいろなものが簡単に探せるし、iOSのSiriのように、音声でコントロールができ、Windows Phoneとの連携も実現されている。最近は、エンターテイメントコンテンツ系のパートナーが増えていることも強調され、今まで一方通行だったテレビが、どんどん双方向になりつつあることが示された。
↑デモではゲストも登場し、セサミストリート的世界とXboxの融合がアピールされた。 |
ジェスチャーでコンピューターをコントロールするデバイスとしては、Kinectが有名だが、2月1日、ついにWindows用のKinectが登場するという。ちなみにこのニュースは、この日の基調講演で明らかにされた唯一の新ネタだった。
↑『Kinect for Windows』は、日本を含む12カ国で2月1日に発売。米国での価格は249ドル。 |
バルマー氏は、次のマイルストーンとしてWindows 8は重要な存在であり、マイクロソフトとしても、いちばん大切なものとして、妥協のないものに仕上げたいとした。その体験を少しでもよりナチュラルなものにすることに努めているという。
その根底にあるのは、将来的にすべてをメトロスタイルにしていくことだ。そして、携帯電話もゲーム機も、あらゆるデバイスをまとめて統合していく。業界の中で、新しいやり方を示せるのはマイクロソフトだけだとしながらも、彼らでさえ想像できないものもたくさんある。でも、それは、きっとメトロから生まれる。つまり、マイクロソフトが1のメトロを提供することで、パートナーが協力してくれるなら、1+1=3となる世界が訪れる。
バルマー氏は、最後のタイミングで「メトロ! メトロ! メトロ!」と叫び、さらに「Windows! Windows! Windows!」と繰り返した。期待どおりの奇声に聴衆は大喜び。
こうしてマイクロソフトのCES基調講演16年目の夜が幕を閉じた。
↑CES主催者側のシャンピオ氏から、これまでの基調講演を振り返る記念品もプレゼントされた。 |
15年前からすれば、はるかに大人になったマイクロソフトという企業の姿がそこに垣間見えた。その大人の彼らが、今後、コンシューマーに注力していくというが、どのような方法論がとられるのか、そこが気になるところだ。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります