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【BUILDレポートDay4】Windows8はタブレットPC全盛時代の幕開けを告げるのか?

2011年09月20日 20時30分更新

 9月16日に幕を下ろしたマイクロソフトの開発者向けイベント『BUILD』。話題がMetro Styleに代表されるWindows8のタブレット向け機能中心となったのが印象的だった。

 実際のところ、今回のBUILDで発表されたWindows8は、Windows8のすべてではなく、特にタブレットの上で動作するいわば“タブレットエディション”とでもいうべきWindows8の姿だ。というのも、今回搭載されるWindows RunTime(WinRT:Metro Styleアプリケーションの実行環境)からは、従来のWin32の機能を呼ぶことができないだけなく、Win32で動作する従来のアプリケーションと直接コミュニケーションを取ることさえできない“タブレットアプリケーション”専用の環境になっている。これはおそらく、オンラインアプリケーションストアとなる“Store”サービスとの関係(ダウンロードされたアプリケーションがクラックされるのを防ぐ)などのためと考えられる。

 Metro Styleのアプリケーションと従来のDesktop Styleのアプリケーションは、もちろん、同じファイルにアクセスしたり、Windows Liveなどを使ってネットワーク上で通信することは可能だが、プロセス間通信などAPIを使った直接の通信や、相互の呼び出しは不可能になっている。つまり、WinRTは、Win32の中にあるもうひとつの独立した“Windows API”なのである。

BUILD
↑Windows8のアプリケーション実行環境。Metro Styleは、WinRTの上で動作するが、この環境自体は、従来のWin32実行環境の中で動く。つまり、Windowsの中にタブレット用の実行環境が埋め込まれた格好になる。
BUILD
↑WinRTが提供するAPIとしては、たとえばメディアのキャプチャー機能(静止画や動画、音声のキャプチャー)など、機能の“大きな”APIが用意される。
BUILD
↑従来の.NET Framework(図の黒い箱)で、Windowsがもつすべての機能(青い箱)を使おうとすると、“小さな機能”のAPIを使って、“大きな機能”を実現するようなコード(赤い箱)が必要になっていた。たとえば、カメラで静止画を撮るためには、デバイスを設定し、そこからから画像を取り込む機能や、プレビューの機能、ファイル形式の変換といったさまざまな機能を自前で用意する必要があった。
BUILD
↑WinRTでは、メディアキャプチャーなどの“大きな機能”のAPIが用意されているため、大量のコードを用意する必要性が減っている。たとえば、カメラで静止画を撮りたいなら、メディアキャプチャー機能を使えば、デバイスを意識する必要もなく、プレビューやファイル変換、撮影後のクリッピングといった補助機能も含めてWinRTがめんどうを見てくれる。

 デスクトップ側は、ウィンドウズエクスプローラーがリボンになったり、ファイルコピーダイアログが改良されたりと、細かな違いはあるものの、基本的にはWindows7と同等であり、大きな違いはない。もちろん、プログラムをつくる側から見ると、搭載されているのが『.NET Framework 4.5』(Windows7には3.5が標準搭載)といった違いはあるが、これでユーザー環境が大きく違ってくることはないはずだ。

 今回、公開されたのはDeveloper Previewで、開発スケジュールでいうと、ベータ版の前になるマイルストーン3というもの。これは、どちらかというと計画した機能や仕様などが実現可能か、実用的なのかを確認するためのものであり、仕様がほぼ固まるのは、ベータ版からである。また、今回のBUILDで出された要求のうちのいくつかは、タブレットでのみ有効なものであり、デスクトップやノートPCの上で動くWindows8については、まだ明確な要求条件は出ていないようだ。

 そういうわけで、Windows8については大まか、今回のBUILDで公開された方向性に沿うものの、実際にどうなるかについては、まだわからないことも多い。

 BUILDでの発表がタブレット向けの機能中心となったのは、iPadやHonycomb(Android 3.x)タブレットなど、先行するタブレットに追従するため、というのは想像にかたくない。すでにWindows7タブレットがあるとはいえ、現状のWindows7はタブレットへの最適化が行なわれておらず、高性能ではあっても、iPadやHonycombよりも使いやすいというわけでもない。Windows8は、これを挽回し、タブレット市場で戦うための製品なのである。このため、来年のWindows8の出荷時には、タブレットタイプの製品については、ARM CPU製品などもあることから、その他のフォームファクター(デスクトップやノート型)とは違った扱いになると予想される。以前、関係者は、ARM版のWindowsはOEMにのみ出荷、つまりパッケージ版は存在せず、ハードウェアにプリインストールされた形でのみ提供されると語っていた。

 WindowsPhone7でも、最初にハードウェアを出荷できたのは限定されたメーカーだったことから考えると、おそらく、タブレットにWindows8を搭載して出荷できるメーカーも限られることになるのではないだろうか。

●関連サイト
BUILD公式サイト

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