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au × iPhone5で生ずる5つの可能性

2011年09月22日 22時22分更新

文● 遠藤諭(アスキー総合研究所)、編集●ACCN、協力●牧野恭子

 ジョブズは、もともと携帯電話もテレビも嫌いなのだという話がある。iPhoneが出たときには「5年先をいく携帯電話」と言ったが、「PCの30年の歴史はこれのためにあった」という意味のことも言った。実際に、そう言えるだけの素晴らしいデバイスだと思う。

au_iPhone5
↑週刊アスキー編集部が予想に基づき作成したiPhone5の模型。

 そのiPhoneを、auが売るという情報が流れている。米国では、auとほぼ同じCDMA方式を採用しているベライゾンが、今年2月からiPhoneを扱っているわけなので可能性としてはあった。しかし、これが本当だとすると業界への影響は少なくない。

1. iPhone勢 × Androidの2大勢力時代が来る

 ソフトバンクとauの加入者数を合計すると、NTTドコモの加入者数の約6000万件に近づいてしまう。両社のiPhone顧客争奪戦は激しいだろうが、図式としては、ソフトバンク+auのiPhone連合とドコモのAndroidというものが浮かび上がってくる。

2. Android auはどうなる?

 “Android au”を標榜したKDDIだが、iPhoneを手に入れるためにそれらをなかば放棄する可能性がありうる。ソフトバンクもAndroidを売っているし、auも今後も売り続けるだろう。しかし、ソフトバンクがiPhoneを重視してAndroidより端末価格やパケット料金で割安感を出しているように、iPhoneは特別なのだ。アップルが、auにだけ甘いことはないだろう。

3. iPhoneのシェア

 まるでムーアの法則のように世界中で毎年倍々で売れているのがiPhoneだ。ソフトバンクからだけでは販売ペースは維持できないが、KDDIを加えることで維持できる。アップル的には、最初は1社相手でラクに立ち上げて最終的にはキャリアを増やしたいというシナリオ通りだろう。米国の例では、iPhoneを売ってきたAT&Tは対前年ほぼ横ばい、ベライゾンのぶんだけ伸びている。

4. auの売り上げ

 音声通話の売り上げが頭打ちである以上、データ系で売り上げを伸ばそうというのがiモード以降の各キャリアの戦略だったはずだ。ところが、iPhoneでは、コンテンツ仲介料もユーザーIDもアップルが独り占めする。パケットの使い放題で回線もパンク状態だ。それでもiPhoneに走ったのは、iPhone以上の勢いでAndroidが伸びるからそれに賭けた可能性もある。全体シェアを確保するということで、やがて次の時代が来るという考え方だ。

5.ソフトバンクはどうなる

 ジョブズが、iPhoneを携帯電話と考えていないフシがあるとすると、携帯キャリアとiPhoneはお互いを必要とはしているが、もともと相性がよいわけではない。しかし、ソフトバンクはどうしてもiPhoneがやりたかった。ひとつは、同社の生命線とも噂される“純増数”を維持できること、もうひとつはホワイト家族24に象徴される従来客に比べてiPhone利用者は“優良客”だからだ。auからiPhoneというのは、ソフトバンクにとっては痛いというのはあるだろう。それでは、どうするのか?

 私が、iPhone3Gを買った秋葉原の某店の女性店員は「私は、日本でいちばんiPhoneを売っていると思う」と言った。彼女によれば、ソフトバンクはiPhoneについて非常に賢いハンドリングをやっているという。2009年2月に開始したiPhone for Everybodyキャンペーンは“ホワイトプラン”限定であることに大きな意味がある。

 携帯の料金プランは、本来、優良客に対して高額請求とならないようによく使ってくれる人にはサービスしてあげるとういものだが、このキャンペーンではあえてホワイトプランで契約してもらうことで、売り上げをカバーしているというのだ。今回も、知恵を絞ってなんらかの対策を講じてくるだろう。

 それでは、auはどうなのか? KDDIといえば、いちはやくパケット定額を採用、メディバという公式CP的な子会社をつくり積極的なコンテンツ戦略をすすめてきた。auには音楽配信のLISMO、テレビで光TVと同チューナーがある。いずれも、iTunesやアップルTVと競合するのは見てのとおりだ。

 しかし、逆にいうと、そうした客をたくさん掴んでいるということだ(auといえば音楽ファン、アニメファンが多いと言われている)。携帯電話キャリアが、コンテンツに注力したというのはデータ通信量を増やすための市場づくりの意味があったと思う。ところが、スマートフォンの登場によってデータ通信量は、一転、むしろ使われ過ぎの状況なっている。

 データ通信の市場は十分に育ったので、携帯通信キャリアはふたたび土管で稼げる時代が来ているのかもしれないのだ。これは、NTTドコモも同じだろう。iPhoneであろうが、Androidであろうが、これから4~5年はとにかくトラフィックを使う利用者が広がればいいと考えている(そのためには、パケット定額の見直しやLTEの促進、WiMAXや無線利用などの工夫が必要だが)。アスキー総研のデータでも、ガラケーの利用者に対してスマートフォンの利用者は、月額1000円ほど多く払っているのだ。

 逆に、コンテンツではなくおサイフケータイなどに関する部分は、携帯電話キャリアは同じようには考えられない。携帯電話はパーソナルなIDそのものともいえるものだからだ。その意味では、auからiPhoneよりも、Google Walletのほうが、今週のニュースとしては要注意とも思える(日本人のサイフが将来どうなるかというような話になってくる可能性だってあるからだ)。

 ネット上で流れているiPhone5に関する情報をまとめてみていくと、ちょうど『MacBook Air』が物理的な部分でコンピューターのあり方を変えようとしているようなキーになる商品になる可能性がある。それくらい凶悪な端末になると、なんとなくみんな期待している。しかし、それとはまったく異なるところで、携帯電話キャリアは、自分たちのソロバンをはじいていると思う。

au_iPhone5
↑多くのウワサが飛び交っているが、依然、謎のベールに包まれているiPhone5。新CEOクック氏に華を持たせる意味でもiPhone4から大きく変わるのではないか。編集部予想は4インチ以上の液晶、A5チップ搭載で極薄というもの。通信方式は3G+CDMAを同一モデルでサポートか?

 
 

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