【前編はコチラから】
■OSX Mountain LionはiOSの利便性を取り込んで行く
MacBookシリーズの刷新、そしてRetina対応のブランニューモデルの追加で場内を湧かせたあと、話題は新しいMac OSX“Mountain Lion”に移った。
フィル・シラー副社長からバトンタッチされ登壇したのはOSXソフトウェア担当副社長、クレイグ・フェデリーギ氏だ。
MountainLionは、OSXとして8回目のメジャーリリースとなる。フェデリーギ氏によれば、Macのインストールベースは直近で全世界6600万本。現行OSである“Lion”は2600万本の販売を記録している。実に40%のユーザーが、スムーズにLionへと移行している。
こういう数字が出ると、ではWindowsのインストールベースにおけるWindows7比率は……という話を考えがちだし、実際にWindowsと比率を比較したグラフも提示されたが(7は27週で同等の比率になったそうだ)、この比較にはプロモーション以上の意味はあまりない。
母数の桁がそもそも違うということもあるが、ソフトウェアで収益をあげるマイクロソフトに対して、アップルはハードウェアで収益をあげるメーカーだ。アップルにとってOSはハードの陳腐化を遅くし、価値を高めるためのもの。別の言い方をすれば“儲けを考えなくていいもの”とも言える。だからLionの場合は2600円(ダウンロード版)という低価格でリリースすることができ、それゆえに価格面でのユーザーの移行障壁も低い。
フェデリーギ氏によればMountain Lionには200の新機能が追加されているという。なかでも特徴的な新機能についてフェデリーギ氏自らデモを見せたが、内容としてはiOSで利便性の高かった機能を、OSXにもってくる、というアプローチが多い。
“Notification Center”などはまさにその例だし、“Sharing”も、iOSが実現しているOSレベルでのTwitter対応を拡大させたもの、と解釈できる。
また時代の流れを感じさせるのは、OSX、iOSともに中国向け機能を搭載し、個別に時間を割いて紹介したことだ。OSXの場合、中国語IME、中国語辞書のほか、Safariの検索機能のBaidu対応、中国でメジャーな無料メールプロバイダーへの対応などが示された。
Mountain Lionの発売は7月。価格は19.99ドル(日本版1700円)で、個人所有のMacには何台でもインストールできる。また、6月11日以降、対象となるMacの購入者には無償アップグレードが適用される。なお、基調講演当日から開発者向けのデベロッパープレビュー版の配布開始もアナウンスされた
●Notification Center
デスクトップ画面にはさまざまな通知が好むと好まざるとにかかわらず表示される。iOSでも同様の問題があり、それ解決するため、Androidそっくりのドロワーに通知関係をまとめた機能がiOS5で追加された。OSXのNotification Centerは、そのUI設計、機能性ともに、iOSのソレをそのまま持ってきたような内容になっている。
●Sharing
写真やブラウザーでサイトを見ていて、ちょっと友達と共有してみようというとき、1クリックで共有できる機能。OSレベルでのサポートという意味では、iOS5のTwitterサポートと似ている。OSXのコンテンツプレビュー機能“Quicklook”やウェブブラウザー“Safari”など、Moutain Lionのすべてのアプリには“Share”ボタンが付く。
どのソーシャルサービスに対応するかリスト化はされていないが、公式サイトによれば少なくともFacebook、Twitter、Flickr、Vimeoに直接投稿できる。
●PowerNap
スリープ中にカレンダーやメール、Todo、メモ、PhotoSharingといったデータを自動的に同期しておく機能。たとえば、朝起きて一度も起動せずにMacを持ち出したとしても、各種データベースは最新情報が反映されている。
●GameCenter
iOSのゲームスコア共有コミュニティのOSX版。クロスプラットフォーム対応になっており、iOSとMacとで同じゲームを対戦してスコアを競うことができる。
●Safari
URLフィールドに入力した文字から過去の履歴やブックマークなどで近いサイトをリコメンド表示する“スマートサーチ”機能の追加。またiCloud連携により、手持ちの全デバイス(iOSでバイス含む)で開いていたウェブサイトを、瞬時に呼び出すことができる。
■ベールを脱いだiOS6、iPhone5は秋になる?
トリを務めたのは、iOS6。壇上に上がったのはiOS担当の副社長、スコット・フォーストール氏だ。まず最初に述べておくと、既報のとおりiOS6の登場は今秋。と、いうことは、おそらくは“iPhone5”とされる新型iPhoneも、そのタイミングでの発表になるはずだ。
さて、iOS6の新機能は、OSXに比べて数が多く、スマートフォンというライフスタイルデバイスであるがゆえに、実用的なものが多い。また、リリース後、何かと物議を醸しそうな新機能もある。
後者(物議系)でいえば、FaceTimeとMapのナビゲーション機能は、とりわけ気になる存在だ。
iOS6ではFaceTimeがケータイキャリアのネットワークでも使えるようになる。これはユーザーにとってはもちろん便利で素晴らしい機能だ。その反面、スマートフォンの普及で回線負荷低減に四苦八苦しているキャリアからすると、気の重い新機能になるだろう。
そういった事情もあってか、現時点では全世界のキャリアネットワーク上で使えるわけではない、という注意書きもある(公式ページ)。
また、ある種の無料電話と見ることもできるため、キャリアのビジネスモデルとの競合もあるかもしれない。
Mapアプリは今回から自社開発とし、さまざまな新機能のほか、見たところかなり高機能な印象の、サードパーソンビューのナビゲーション機能を搭載してきている。
関係者に確認したところ、詳細は未公開だがMapアプリ自体は日本にも対応しているという。となればナビゲーションも動作する可能性はある。ご存知のようにAppStoreにはナビゲーションアプリが複数存在し、個々にユーザーを抱えている。
既存のデベロッパーと共存できるのか、あるいは「無料のアップル純正ナビでいいや」となってしまうのかは、今秋のリリースを待って触ってみるしかない。
キーノート後、今回の内容(特にiOS6)について、「予定調和的で驚くところがあまりなかった」と語った開発者がいたが、確かにそういう見方もあるかもしれない。Facebook連携などは、便利ではあるだろうけれど、なぜiOS5のタイミングでTwitterと同時実装にしなかったのか? とも思う。
とはいえ、今年起こるであろう宿題については、ほぼすべて形が見えた。MacBookシリーズ刷新は済マークがついたし、Mountain Lionも開発は順調だ。
またiOS(=おそらくiPhone)については、昨年に引き続き秋の発表になることが判明したことで、アップルが能動的に製品の投入タイミングをホリデーシーズンに変更したことも確認できた。
iOS6の概要がわかったことでiPhone5の楽しみは薄れたという人は早計すぎる。Siriがそうであったように、ハードウェアと密接に結びつく新機能は、おそらくハードの発表日まで隠されたままのはずだ。
特に今年はiPhoneのメジャーアップデートの年。iPhone4がデビューした2010年と同じ期待感をもって、秋のAppleスペシャルイベントを待ちたい。
iOS6の注目機能まとめ
●Facebook対応
OSレベルのサポートとすることでかなり広範囲にわたって、Facebookのデータを取り込み、またアウトプットできるようになる。
直接のFacebook投稿は当然として、友人の個人情報をFacebookからインポートできる。カレンダーも同様。また、AppStore、iTunesStore内に“Like”ボタンが設置され、ストア側のFacebook対応も進めて行く。
●Maps
大きく変更が加わったMapアプリ。自社デザインによるベクターベースのデータを使い、音声案内付きのナビ機能、“Flyover”と呼ばれる主要都市の3Dマップ機能もある。またクルマ向けの機能として、“Eyes Free”と呼ばれる、ステアリング上のボタンと連動した音声コントロール機能にも対応。提携自動車メーカーの中にはトヨタ、ホンダが含まれている。
●Siriの強化
対応言語の強化のほか、グルメ評価サイト(Yelp)や映画レビューサイト(Rotten Tomatoes review)、スポーツ情報のデータベースと連携して、さらに多くの得んため情報を引き出せるようになった。日本でどこまで対応できるかは現状不明。
●Phoneアプリの機能拡充
地味ながら非常に実用的な提案が揃っていたのがこのアプリ。
“Reply”では、着信通知に対して、“SMS or iMessageで返信”が選べ、定型文から選択して返信も可能。
“Remind”はReplyに似ているが、“1時間後にもう一度しらせる”のほか、位置情報を使って、現地から離れたときにしらせるなどインテリジェントなリマインドが可能。
“Do Not Disturb”はその名の通り、深夜の着信や通知をサイレント化する機能。コンタクトグループを分けておけば、たとえば友人からだけは電話が鳴るようにもできる。
●Passbook
飛行機の搭乗券や映画のチケット、お店のクーポンなどを統合管理するアプリ。位置情報を利用して近くの店のクーポンを表示したり、飛行機の搭乗口の変更をロックスクリーン画面で伝えたりしてくれる。日本でどのような対応になるかは現状不明。
●Accessibility
視覚にハンディキャップがある人など向けにボタンや画面の一部を無反応にするなどの制限を加えられる。また、単一のアプリしか起動できないようにするモードを用意。子供にデバイスを使わせる際や、組み込みデバイスのように端末を使いたい場合などに役立ちそうだ。
●中国向け対応
中国語辞書、中国語IME、手書き入力に加え、SafariのBaidu検索対応、中国内の有名SNSやメールサービスへの対応など。
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