【レビュー】新iPad(第10世代)は「iPad Air」の普及バージョンだ
難しい世代交代
すでに述べたように新しいiPadの位置づけは、これまでの標準iPadの新型というよりも、iPad Airの「普及版」という印象の強いものとなっている。以前にも述べたように標準iPadは、業務用としての多く利用されていて、メーカーとして形状や仕様を不用意には大きく変えられないという制約を負っている。
しかし今回のiPadは、そのような制約を打ち破るように、かなり大きく仕様を変えてきたと言える。外形寸法も異なるし、充電・通信用のポートもLightningからUSB-Cへと変更された。カメラも4Kビデオの撮影が可能となるなど、性能的にも新世代のiPadシリーズの仲間入りを果たしたと言える。それでいて、Apple Pencilへの対応は第1世代のまま、採用するチップはAシリーズと、旧来の仕様をキープしている部分もある。
これをどう捉えるか、現状で答えを見つけるのは難しい。アップルは、この第10世代のiPadで、「標準iPad」の世代交代を狙っているのだろうか。今のところ旧iPad(第9世代)も現行製品として併売されていることからすれば、業務用の標準iPadの役割は第9世代に任せ、一般ユーザー向けのiPadには独自の進化を始めさせようとしているのかもしれない。今回のiPadの仕様は、どっちつかずのようにも感じられる。その答えが見えてくるのは、次の第11世代のiPadが登場するころになるのだろう。
思い出してみればiPad Airも、2019年に登場した第3世代のモデルまでは、第9世代のiPadのように、旧世代のiPadのデザイン、レイアウトを採用するものだった。わずか3年前のモデルだ。それが、現在のiPad Airのデザインに変更されたのは、たった2年前、2020年に登場した第4世代からだ。それを追うようにiPad miniも、昨2021年に登場した第6世代から、iPad Air風のデザイに変更された。iPad Airはもちろんminiも、もはやそれで何の違和感もない機種として定着している。本家のiPadが、その方向に進化するのは、むしろ当然のことだろう。
いずれにせよ、新しいiPadは一般のユーザーにとって旧世代よりもかなり魅力的なマシンに進化したことは間違いない。価格だけを比較すれば、確かに旧世代からの値上げ幅が大きいように感じられる。しかしiPad Airが、M1チップを採用するなど、iPad Proの領域に近づき、価格帯も10万円前後とハイクラスになってしまったことを考えれば、64GBで7万円弱、256GBでも9万円強で買えるiPadのプライスパフォーマンス的なメリットは大きい。新世代デザインのiPadは使いたいが、iPad ProはもちろんiPad Airでも価格が高すぎると二の足を踏んでいた人には、新iPadは間違いなく買いだ。新iPadでのみ使えるMagic Keyboard Folioの魅力も大きい。
それでも返す返す残念なのは、対応Apple Pencilが第1世代だということ。さらに、ケーブルとアダプターを介して充電しなければならないのはやむなしとしても、Apple Pencilは充電中は機能しない仕様になっている。仮に充電中でも使えるなら、iPad AirやiPad Proの側面に吸着させて充電する第2世代では不可能な、新iPadのメリットとなっただけに、この点も残念だ。
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