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“big.LITTLE”デザインを採用したAlder Lake-Sの実力は?

CINEBENCH最強の座を奪還!Core i9-12900K、Core i7-12700K、Core i5-12600K速報レビュー

2021年11月04日 22時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集● ジサトラユージ/ASCII

「3DMark」ではPコアの物理コア数が影響

 グラフィックの描画性能を計測する「3DMark」では、新たに(といっても6月だが)加わった「CPU Profile」テストも試してみよう。これはTime SpyのCPU物理演算テストにおいて、スレッド数(=アクティブコア数)を変化させながら実行する。スレッド数が減った/増えた時にどれだけスコアーが変化するかに注目したい。

「3DMark」CPU Profileテストのスコアー

 ある程度スレッド数を増やしていくと、一定のラインから後はスコアーの伸びが悪くなる。ここではCore i7-12700Kが特徴的で、8スレッドまでは順調に伸びているが、16スレッドで伸びが悪くなり、最大スレッドではさらに鈍化する。Ryzen 9 5900Xは8スレッド時点ではCore i7-12700Kよりも下だが、16スレッドで逆転している。

 Core i9-12900Kも8スレッドまでは順調だが、それ以降は伸びが鈍化。つまりこの2つのCPUは、Pコアの物理コア部分(言葉が変だが、HTで増えたコアでない部分という意味。以下同様)を使っているぶんにはすこぶる処理効率が良いが、HTで増えたコアも使い始めると効率がやや落ちる(熱や電力制限も加味されると推察)ことが示されている。Core i5-12600Kは4〜16スレッドまで伸びが鈍化していないように見えるが、4スレッド以降はEコアも常に使われている状態であり、元々鈍化していると考えられる。

 ちなみに、3DMarkのガイドによれば4スレッド時の性能はDirectX 9ベースのゲーム(Counter-Strike: Global OffensiveやLeague of Legendsなど)性能に影響し、8スレッド時の性能はDirectX 12ベースのゲーム性能に影響するとしている。

Windows10環境では振るわない「PCMark 10」

 次はPCの総合性能を測る「PCMark 10」を使う。今回もゲーミング性能以外の性能を計測する“Standard”テストを実施した。総合スコアーのほかに、各テストグループのスコアーも比較する。

「PCMark 10」Standardテストのスコアー

 総合スコアー(青)で見るとトップはRyzen 9 5900Xで、Core i9-12900KはRyzen 7 5800Xよりも下、上から4番手という残念な結果となった。Core i7-12700KはCore i9-11900KどころかCore i5-11600Kにすら負けており、big.LITTLEなハイブリッドCPUのメリットがあまりないように見える。

 ただ、ITDとの連携が最適化されるWindows 11だと結果が変わってくる可能性もあるので、Windows 10環境では第12世代Coreのパフォーマンスが振るわないこともある、程度の結論にとどめておきたい。

「PCMark 10」Standardテスト、Essentialsテストグループのスコアー

 しかし、Essentialsテストグループのスコアーは、総合スコアーとは正反対の輝きをみせている。アプリの起動時間をみる「App Start-up」では第12世代CoreはほかのCPUを完全に上回っており、最下位のCore i5-12600KですらRyzenの上位モデルよりも良いスコアーをあげている。Firefoxによるブラウジング性能を見る「Web Browsing」でも、差は小さいが同じ傾向が確認できた。

 このスコアーが何から来るのか、まだ断言できるほどデータが蓄積されていないが、ストレージはすべて同じGen 4 SSDを使っていることを考えると、DDR5メモリーの効果もしくはCPUアーキテクチャーの優越性に起因する可能性がある。これについてはDDR4+第12世代Core環境でベンチマークを回してみてから結論を出したい。

 ただ、その一方でOpenCLで顔認識などを行う「Video conferencing」のスコアーが低い。これはEコアに落ちる処理が多いためと推察できる。

「PCMark 10」Standardテスト、Productivityテストグループのスコアー

 LibreOfficeによる実務作業を想定したProductivityテストグループでは、総合スコアーではRyzen 9 5900Xがトップに立ったものの、表計算(Spreadsheet)では第12世代Coreが全体的に良いスコアーを出している。しかし、文書作成(Writing)では第12世代Coreと第11世代Coreの差がほとんどないことを考えると、第12世代Coreの得手不得手はかなり分かれることがあるといったところだ。

「PCMark 10」Standardテスト、DCC(Digital Content Creation)テストグループのスコアー

 クリエイティブ系作業を行うDCC(Digital Content Creation)テストグループでは、第4世代Ryzenが圧倒的に強く、第12世代Coreは良くて第11世代Coreと同等、Core i7やi5では旧世代を下回るという残念な結果となった。Pコア/Eコアの使い分けが単純にうまくいかないだけなのではないかと推察している。

写真編集の伸びが凄い「UL Procyon」

 3DMarkのUL社は近年、実際のアプリを直接操作して細かく性能を計測するベンチマークを開発している。それが「UL Procyon」だ。まずはAdobeのPhotoshopとLightroom Classicを実際にインストールして使う「Photo Editing Benchmark」を試す。写真編集に関係する様々な処理にかかった時間をスコアー化しているため、高スコアーほど高性能となる。

「UL Procyon」Photo Editing Benchmarkのスコアー

 Image RetouchingとBatch Processingの違いは、前者が全行程Photoshopのみの処理なのに対し、後者はPhotoshopとLightroom Classicの連携であるということだ。そして、今回の検証では第12世代CoreはBatch Processingで第4世代Ryzenを大きく引き離している。

 Lightroom Classicは巨大なL3キャッシュを抱える第4世代Ryzenが圧倒的に強いことは経験として掴んでいる。だが第12世代Coreでは第4世代Ryzenを完全に上回った。これがDDR5の力なのか、ハイブリッドデザインのCPUによるものなのかまでは断言はできないが、DDR5+第12世代Coreの組み合わせはクリエイティブ系アプリでも強みを出せることを示した。

 ではPhoto EditingはなぜRyzenのほうが優秀なのか……という話になるが、これはPhotoshopがうまくPコアを使えていないからではないかと推測している。ただし、これに関してはもっと別のアプローチからの検証が必要だ。

 もう1つ、UL ProcyonにはWord/Excel/Powerpointなどを実際に動かす「Office Productivity」テストが存在する。元々PCMark 10に入っていたテストをより強化したテストだ。検証にあたっては、実際にOffice 365をインストールする必要がある。

「UL Procyon」Office Productivity Benchmarkのスコアー

 第11世代Coreに対して第12世代Coreは高いスコアーを出しているが僅差。だがそれよりも、Core i9-12900K以外は第4世代Ryzenのほうが同ランク帯で見れば良いスコアーを出せている場面が多い。特にPowerPointの評価は、第12世代Coreよりも第4世代Ryzenのほうが高い。

次回は本命のゲーミング対決

 新しい構造のCPUのことを知るには、より多くの検証から結果を導き出す必要がある。だが1本の記事に全データを詰め込むと書き手も編集する側も辛いので、基本性能編の速報レビューとしてはこのあたりで一旦シメにしておきたい。

 ベンチマークによってはRyzenに負けることはあるものの、CINEBENCH R23では圧倒的なスコアー差をもって勝つことが示された。ただし、OCCTといった超高負荷なテストを行えば、その最大消費電力は第11世代Coreの比ではなく増加していた。とはいえ、そのような状況になりうるソフトは多くはないだろう。ワットパフォーマンスにおいては後日掲載する続報で、実際のアプリを使っている時の消費電力も考慮して評価したい。

 そして、インテルはなにもCINEBENCH R23で頂上をとるために第12世代Coreを投入したのではない。インテルの本命はゲーミングPC向け最強CPUの座を奪還することにある。次回の記事は可及的速やかにアップされるはずだ。お楽しみに!

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