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“big.LITTLE”デザインを採用したAlder Lake-Sの実力は?

CINEBENCH最強の座を奪還!Core i9-12900K、Core i7-12700K、Core i5-12600K速報レビュー

2021年11月04日 22時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集● ジサトラユージ/ASCII

DDR5メモリーやCPUクーラーについても要確認

【4】DDR5-4800動作には条件がある?

 第12世代CoreではDDR4メモリーに加えてDDR5メモリーにも対応し、DDR4なら3200(単位はMHzまたはMT/sec)、DDR5なら4800に対応する。第11世代インテルCoreプロセッサー(以下、第11世代Core)ではDDR4-3200動作について“Gear 1/Gear 2”仕様があったが、第12世代CoreのDDR4は4枚挿しでもDDR4-3200となる。

 注意したいのはDDR5メモリーの構成だ。インテルの資料によると、常にDDR5-4800で動くことが保証されるわけではなく、1SPC(1チャンネルあたりのスロット数)かつ1DPC(1チャンネルあたりのモジュール数)、つまりメモリースロット2本かつモジュール2枚挿しの場合は4800動作になると読める。また、メモリースロット4本すべて使った場合はDDR5-3600もしくは4000動作で、これはメモリーモジュールのランク次第となる。

インテルの資料より抜粋。メモリースロット4本で4枚挿し(2SPCかつ2DPC)の場合はDDR5-3600もしくは4000となる。ちなみに、4本スロットがあるマザーボードで2モジュールを教科書通りに設置した場合は1SPCかつ1DPCに該当するようだ

 今回はマザーボードメーカーよりテスト用マザーボードで動作確認のとれているKingston製DDR5-5200メモリーをお借りして検証したが、どの個体もXMPを有効化してDDR5-5200動作は達成できなかった(DDR5-4800用のXMPプロファイルでもPOSTで落ちる)。メモリーの設定をすべて「Auto」にすることで4本スロットのマザーボードかつ2枚挿しでDDR5-4800、4枚挿しだとDDR5-4000動作を確認した。

 ただし、今後DDR5やBIOSの熟成で4枚挿しでもより高いクロックで動作する可能性も残されている。RyzenでもDDR4-3200動作にするには2枚挿しという制限があったが、有名メーカー製モジュールを使っていれば4枚でも普通に動いた点を合わせて考えると、今後の動向次第といったところだ。

今回マザーボードとDDR5メモリーはマザーボードメーカーにお願いして動作確認のとれているセットでお貸し出し頂いた。今回使用したのはKingston製のDDR5-5200対応メモリー「FURY Beast KF552C40BBK2-32」だ

 また、今回検証したどのCPUでもメモリーまわりのクロックはデフォルトでGear 2、すなわちメモリーコントローラーのクロックがメモリークロックの半分になるモードで動作していた。BIOSでこれを1:1動作にすることもできるようだが、筆者が手にした環境では1:1ではまったく動作しなかった(POSTに失敗する)。こちらも今後の熟成待ちといったところだろう。

CPU-ZでCore i9-12900KとDDR5メモリー(4800動作)の組み合わせにした時のメモリーコントローラーのクロックを確認すると、メモリーのクロック(2400MHz)の半分になっている。つまり、第11世代Coreで言うところのGear 2動作になっているのだ

「HWiNFO」でも同様にGearモードが「2」として認識されている

【5】TDPは125Wだが、最大ブースト維持のために241Wを維持することが求められる

 第12世代CoreではCPUの消費電力や発熱量を考える際の指標が大きく変化している。まずTDP(Thermal Design Power)とPL1/PL2といった呼称は残っているが、第12世代CoreではTDPはPBP(Processor Base Power)へ、さらにPL2はMTP(Maximum Turbo Power)と言い換えるようになった。

 まずPBPの意味するところはPL1と同じく、CPUのクロックがブーストされた時の消費電力(イメージとしては仕事量に近い)を示す。そして、PL2はこれまでごく短時間(長くて数秒、大抵は一瞬で終わる)だけPL1の限界を超えてブーストされる時の消費電力を示していたが、MTPに言い換えられた第12世代Coreでは、MTPは可能な限り持続するものと再定義された。

 第12世代Core用のインテルZ690チップセット搭載マザーボードでは、CPU周辺の電源回路とそれを冷却するヒートシンクが巨大化しているが、これはCore i9-12900KのMTPが241Wと非常に高い値に設定されているためだ。

インテルの資料より抜粋。従来のTDPに相当するのがPBPだが、これは最低限の性能を出すために必要なパワーを数値化したものという感じだ。実際はMTPを維持するように運用することを目指しているため、マザーボードの電源回路やCPUクーラーは相応に高性能なものを使う必要がある

 ここで我々のようなレビュアーを悩ませるのが、CPUのパワーリミット問題である。近年のインテル向けマザーボードでは、インテル推奨値にしているマザーボードも存在するものの、PL1/PL2の制限を事実上無制限とするセッティングが半ば慣例化している。

 ASUS製マザーボードの場合、起動時にインテル推奨のパワーリミットに従うか、無視して無制限で動かす(とはいってもCPUの温度や電流などで制限はされる)かを選択できる。TDP=PL1にするのがこれまでの流儀だったが、この検証ではインテル推奨設定を使うことにした。

ASUS製インテルZ690チップセット搭載マザーボードにCPUを装着して起動すると、初回のみこのようなメッセージが出る。文章の順番が変だが、インテルのガイドラインに従うのであれば「ASUS Multicore Enhancement」を無効化せよとある。ちなみに、文章の順番は今後のBIOS更新で訂正されるとのこと

BIOS設定で「ASUS Multicore Enhancement」を無効にすると、パワーリミットはインテルの推奨値(CPUごとに異なる)に設定される

ASUS Multicore Enhancementを無効化しない、つまりパワーリミット無制限とした場合のパラメーター。CPUはCore i9-12900K

ASUS Multicore Enhancementを無効にし、パワーリミットをインテル推奨値とした場合のパラメーター。CPUはCore i9-12900K

【6】CPUクーラーは買い替えか、LGA1700用のアタッチメントが必要

 第12世代CoreではCPU形状が大きく変化しただけではなく、CPUクーラーをマザーボードに固定する穴の位置が数mm外側へ移動、さらにCPUソケットの高さも全体的に低くなった。そのため、既存のCPUクーラーとの互換性が完全になくなった。

 すなわち、LGA1700対応を明記したCPUクーラーを新たに購入するか、既存のクーラーを利用する場合はLGA1700用のアダプター/リテンションキットを別途用意せねばならない。マザーボードによってはLGA1200モデルと同じ位置に穴が設けられているものもあるが、CPUソケットの高さが変わっているため、LGA1700用のアダプター/リテンションキットは絶対に必要になる。

 前述のMTP 241Wという点も考慮すると、第12世代Coreをフル活用したいのであれば最低でもハイエンドの空冷モデル。可能ならば、簡易水冷(ラジエーターサイズは280mm以上、なるべく360mm)を用意しておこう。

ASUS「ROG MAXIMUS Z690 HERO」は、CPUクーラー固定用の穴がLGA1200とLGA1700のどちらにも対応できるようになっている。ただし、これでもLGA1700ソケットの高さに合わせるためのアダプター(簡易水冷クーラーの場合はスタンドオフ)が必須なので、穴が複数あってもメリットであるとは言いがたい

今回の検証のためにマザーボードとセットでお借りしたASUSの簡易水冷クーラー「ROG RYUJIN II 360」。水枕の接触面が十分大きいため、第12世代Coreのヒートスプレッダーをフルカバーできる。なお、接触面の小さいCPUクーラーは冷却に問題が出る可能性もある

【7】PCI Express 5.0(Gen 5)だが当面はおあずけ

 第12世代CoreではCPU内部のPCI ExpressコントローラーがGen 5に対応し、ビデオカード向けの16レーンがGen 5でリンク可能になった。とはいえ、現時点ではGen 5世代のGPUは出ていない(最短でGeForce RTX 4000シリーズが対応するとのウワサがあるものの、真偽は不明)。今のところは規格を先取りした程度の認識でよいだろう。

 また、M.2スロットに関してはGen 4までとなる。ただし、ビデオカード用の16レーンから分岐できるスロットにNVMe M.2 SSDが装着可能な拡張カードを挿せば、Gen 5世代のNVMe M.2 SSDを運用できるようになる。とはいえこれも肝心のSSDが出回っていないため、当面はおあずけだ。

ASUS「ROG MAXIMUS Z690 HERO」の製品紹介ページによれば、同梱の「ROG Hyper M.2カード」にはGen 5でリンク可能なM.2スロットが1基用意されており、これを利用すればGen 5世代のNVMe M.2 SSDがフルスピードで利用できるという(ただし、ビデオカードへの接続帯域はx8になる)

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