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電王戦タッグマッチは西尾明六段&ponanzaタッグが優勝!電王戦ファイナルの出場棋士も決定!

2014年10月13日 13時00分更新

西尾明六段&ponanzaタッグが激戦を制し優勝

電王戦タッグマッチ2014

 10月12日にニコファーレで行われた、プロ棋士とコンピューター将棋ソフトがタッグを組んでトーナメントを行なう『電王戦タッグマッチ2014』のファイナルラウンドは、西尾明六段&ponanzaタッグが優勝して幕を閉じた。予選から西尾六段とponanzaのコンビはお互いの力で棋力を高めている感じがあり、タブレットを駆使しての戦いは違和感なくとても落ち着いているようだった。
 大会終了後には、来年春に行なわれる『電王戦ファイナル』の出場棋士も発表。それは後半に紹介する。

電王戦タッグマッチ2014
電王戦タッグマッチ2014

 第1局の▲久保利明九段&習甦タッグ vs. △西尾明六段&ponanzaタッグの戦いは、162手までで西尾六段&ponanzaタッグの勝利。ponanzaの評価値では、序盤から徐々に差を広げていく感じで、ほぼプラス評価。最後、人間同士なら持ち時間も少なく後手が際どい局面だったが、コンピューターの後押しもあり西尾六段&ponanzaタッグが指し切った。西尾六段は、ponanzaの特性を開発者の山本氏より把握しているかのよう。すぐに攻めたがるponanzaをなだめながら指すあたり、コンピューターと人間のいいとこどりで、この指し手をしてくるコンピューターが生まれたら、もはやプロも太刀打ちできないのではなかろうか。対する久保九段は、事前に菅井五段から「あまりタブレットをいじらない」とアドバイスを受けていた。習甦はじっくり考えさせたほうが良いからとのこと。評価値的にはずっとマイナスだったが、これといった悪手は見当たらず、ズルズルといってしまったようだ。

電王戦タッグマッチ2014
電王戦タッグマッチ2014
↑ponanzaの開発者・山本氏も登場。すでに自分では何がどう強くなているのか理解を超えているという。
電王戦タッグマッチ2014
電王戦タッグマッチ2014

 第2局の▲佐藤慎一四段&ponanza(ver. 2013)タッグと△森下卓九段&ツツカナタッグの戦いは、112手までで森下九段&ツツカナタッグの勝利。序盤は定跡だったのか、ツツカナの評価値が全く反応せず。それでもponanzaの評価値もプラス・マイナスをウロウロする感じで推移。その後中盤に入ると、やっとツツカナが評価値を変化させ、徐々に有利な方向へ。ponanzaは評価値が楽観的と言われているが、ツツカナがプラス1000ぐらいのときにponanzaもプラス200とかを表示するときも。しかしツツカナを信頼している森下九段は、終盤の端の攻めも難なくかわし勝利した。森下九段は「コンピューターの後押しがあると安心して指せる」と言うように、考えた読み手に対しコンピューターの評価が高いと自身をもって指せるので、タッグマッチはやりやすいそうだ。一方、佐藤慎一四段は、端から攻めたかったが、ponanzaの読み手と違う手を指されたりして、ちょっと狂ったようだ。ただ、本局で指すことはなかったがponanzaの豪快な読み手を感想戦で披露。人間では思いつかないと森下九段もびっくりしていた。佐藤四段は「コンピューターは、有利なときは強気で攻めたりしていいけれど、不利なときは意外とズルズルと不利な方向へ行ってしまう」と感じているようだ。

電王戦タッグマッチ2014

 決勝は▲森下卓九段&ツツカナタッグ vs. △西尾明六段&ponanzaタッグの戦い。序盤はどちらも駒組み模様で相矢倉に。ツツカナは相変わらず評価値0だが、強気のponanzaはなんとマイナス。とはいえ、全くの互角で進む。中盤に入ると、これまでマイナス評価だったponanzaが、プラスに転じることも。しかし、ツツカナもプラス評価なので、どちらも楽観している模様だ。最初のうちは、深く読んでいくうちにマイナスに転ぶことが多かったponanzaも、徐々に逆転。難しい局面で森下九段が指し手を悩む間に、西尾六段が着実に良い手を指していき、中盤から一気に終盤へ。森下九段が1手30秒未満となり苦しい展開に。ponanzaの評価値は一気に1000を超え勝負あり。112手で西尾明六段&ponanzaタッグが勝利した。森下九段は「ツツカナに頼りすぎた部分があった」と感想戦で答えていたが、西尾六段のほうが苦しい時でも冷静にponanzaの読みを活用して勝利したと言ってもいいだろう。コンピューター将棋を熟知している西尾六段が、前評判通り優勝を果たした。

電王戦タッグマッチ2014
↑感想戦では森下九段の読みの勘違いも発覚。ただ、ツツカナとのコンビはかなりマッチしていた。
電王戦タッグマッチ2014
↑トロフィーを授与された西尾六段。

電王戦ファイナルは若手中心でリベンジなるのか?

 来年春に開催される『電王戦ファイナル』に出場するプロ棋士も発表された。若手を中心に勝率もよい棋士が選ばれている。

斎藤慎太郎五段

永瀬拓矢六段

稲葉陽七段

村山慈明七段

阿久津主税八段

 稲葉陽七段は公務のため欠席。ビデオでの出演となった。

電王戦タッグマッチ2014

稲葉陽七段「井上門下は船江五段、菅井五段に続く3人目なになりますが、井上門下で3連覇は許されないので、しっかり準備して頑張りたいと思います」

電王戦タッグマッチ2014

斎藤慎太郎五段「私はもともと電王戦に出てみたいと、軽い気持ちで思っていましたが、前回、前々回とそうそうたる棋士の方かだが苦戦して厳しい結果となりました。なので、もう軽い気持ちでは言えないと思い、立候補することはしませんでした。しかし、片上理事のほうからぜひ出てほしい、斎藤くんしか今は考えていないと言われ、私自身はまだまだ弱いと思っていましたが、そう言っていただけるなら私が出なければという気持ちになりました。褒められて伸びるタイプなのかもしれませんが、自信は今はあります」

電王戦タッグマッチ2014

永瀬拓矢六段「今回、片上理事から依頼がありましたが、実は米長会長のときも出てみないかと、親しい感じでおっしゃられたのですが、その時はお断りしました。今回は、片上理事から出てほしいと言われたとき、出ない理由はないかなと思いました。なので出てみようかなという気持ちではなく、自分が出て棋士威の威厳を保たなければならないと思いました。私は、ほかの棋士に比べて長けた部分は一切ないと思っているので、一つ一つ積み上げて、微々たるものでどこまで到達できるかわかりませんが、それが結果につながることを信じて、少しずつ少しずつ進んでソフトに勝てるようにしたいと思います」

電王戦タッグマッチ2014

村山慈明七段「私は、結構前から電王戦は出たかったんです。去年はちょっといろいろとありまして出場できませんでしたが、ぜひ今回は出させていただきたいと立候補いたしました。片上理事からは5人の中で一番前向きだとと言われてまして、この電王戦に出場して戦ってみたいという気持ちがあります。普段から公式戦に向けてソフトを使用しており、研究や対戦をして自分の公式戦を解析させたり密接にソフトと関わっています。やはりコンピューター将棋は人間同士が指す将棋とは全く別物だと考えてます。ですので、普段から使い慣れているので、研究パートナーと真剣勝負をしてみたいという気持ちもありました。電王戦まで約半年間。そんなに長くない期間ですが、自分なりにしっかり準備をすれば、きっといい内容の将棋、結果が出ると思います」

電王戦タッグマッチ2014

阿久津主税八段「もともとコンピューター将棋にかなり興味がでてきて、そのきっかけは、第2回、第3回で現役の棋士が、内容的には押している将棋もあったと思うけど、結果的には厳しいものになったので、その(コンピューターソフトの)強さがどこからくるのか非常に興味がありました。今回の選定基準は若くて強いと言われていたのですが、私一人だけ30代ということで、若くないからダメなのかと思ったのですが、片上理事は自分より年下が若い基準なのか、幸い片上理事より1つ年下ということで、それで声をかけてもらえたのかと思っています。勝率の方は、ここ数年下がってきているところもありますが、このまま下がっていくのも困るので、今回の電王戦で刺激をもらい、自分の将棋力を磨いて長い棋士人生の中でプラスにもって行きたいと思います。いい将棋をさして、求められることは勝つということ手だと思うので、最善を尽くして頑張っていきます」

電王戦タッグマッチ2014

片山大輔理事「今回、みなさん固唾を呑んで見守っていたという印象を受けまして、私の知る限りこの発表会でこれだけ笑いがないのは初めての経験です。それだけ今回は、本気を感じ取ってもらえたのかなと思います。棋士というのは真剣勝負のとき、控えめというか謙虚というか、阿久津八段がもう自分は若くないとか、永瀬六段や斎藤五段が今の勝率ではとか、私みたいな人間から見れば謙虚を通り越していると思うのですが、これが棋士が真剣勝負に望むときのスタンスであります。今回は、結果が求められることはもちろんですが、一人一人これからの棋士人生をかけた戦いになると思うので、全力を出し切って欲しい。今コンピューターはいろんな分野に進出していますが、この将棋が最もコンピューターの力と人間の力が拮抗していて、なおかつお互い高めあえる関係にあるという話を聞きました。我々は将棋を指すだけなのですが、人間がコンピューターにどう向き合うのか、その代表だと言われているようです。ですので人類の代表というと大げさですが、この5人の代表を見守っているという心境です。これから半年近く、準備は大変だと思いますが、自分一人だけでなくチームワークも大切だと思いますので、力を合わせて頑張ってもらいたいと思っております」

 この後質疑応答で、どんな会場がよいかと各棋士に質問されたが、意外と広い会場でホツんといるのは避けたいようだ。観客がいてちょっとでも応援してほしいとも。孤独な戦いではあるが、狭い部屋のほうが集中力が高まるのかもしれない。

 さて、今回の5人すべてのプロ棋士を知っていたら、かなりの将棋ファンだろう。これまで、コンピューターソフトに勝っているのは若手のみ。そんなとこから、今回の選定基準として選ばれた。コンピューターソフトもより強くなっているものの、豊川七段のようにみっちり研究する力があれば勝てない相手ではないと思う。来年は団体戦では最後。しっかり研究して望んでほしいところだ。

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●関連サイト
電王戦タッグマッチ2014特設ページ
将棋電王戦FINAL特設ページ
日本将棋連盟

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