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人類とコンピューターとの戦いがいよいよ明日から・第2回電王戦開幕

2013年03月22日 22時30分更新

文● いーじま 撮影●岡田清孝

3月23日から毎週土曜日に5戦連続対局

第2回電王戦開幕

 いよいよ明日から第2回電王戦が開幕だ。今回は現役プロ棋士vs.コンピューターのがち勝負。4月20日までの毎週土曜日はニコ生から離れられないぞ。おら、ワクワクしてきたぞ!

 さて今回の電王戦に向けて、昨年秋ぐらいから月に1回、大学関係の人たちの協力を得て、勉強会が行なわれている。この勉強会は、第1回の米長永世棋聖も受けていたそうだ。勉強会っていったい何をやっているの? と思い、2月に将棋会館へ潜入取材をした。

第2回電王戦開幕

 この日の講師は東京農工大学の小谷善行教授。テーマは『コンピューター将棋の思考と弱点』だ。今回対戦する5人の棋士全員が参加して1時間半ほどの講義を聴いていたが、内容はどのようにコンピューター将棋は読んでいるのかということを、人間と比較して解説していた。

第2回電王戦開幕

 私も第1回のときいろいろ取材をし、コンピューターの思考方法を勉強したことがほとんどなのだが、棋士にとってはちょっとわかりにくい部分も多かったのではないだろうか。三浦八段が「たとえば何十手先に有利になるような手を指せても、一手一手指していったら、その手が読まれますよね」と質問していたが、まさにその通りで必ずしもそれが有利になるとは限らないのである。

 また「コンピューターを考えさせることが重要」と教授。序盤は、定跡にない手(それは一駒でも位置が違うだけでいい)だと、コンピューターは考えるが定跡どおりだとほぼ0秒。人間の思考は5分を超えるとコンピューターより深く読むことができると言われているので、よりコンピューターに考えさせ持ち時間を有効に使うのが吉、ということだ。このことは、第1回で米長永世棋聖が下した決断、△6二玉に表われている。

第2回電王戦開幕

前回の電王戦・米長永世棋聖の勇姿。

 

 講義のあとはディスカッションを兼ねた実践編、ということで実際に対局するバージョンよりは弱いものの一丸貴則氏開発の『ツツカナ』が提供され、ノートPCで対局した。持ち時間10分でその後は1手30秒のルールだったのだが、結構意外な展開を見せた。5人のうち、勝ったのは阿部四段と塚田九段の2人。塚田九段は序盤から序々に差をつけて勝っていたが、阿部四段は、終盤に逆転勝ち。逆に佐藤四段は、途中までよかったものの、読み違えての逆転負け。船江五段と三浦九段は、序々に差をつけられて途中で投了していた。短時間ではさすがにコンピューターが有利ではあるが、その指しまわしや一部の戦法ではプロ棋士たちをうならせていた。

第2回電王戦開幕
第2回電王戦開幕

 この日の時点では、阿部四段は『習甦』を、佐藤四段と船江五段は『ツツカナ』を実際に自宅でもプレーしていたようで、1時間の持ち手でも勝ったり負けたりのようだ。三浦八段はPC1台版だが『GPS将棋』を、塚田九段は米長永世棋聖が使っていた『ボンクラーズ』をこれから使って研究するところで、意外とこの時点まで自宅で対コンピューターとの実戦はしていなかった。また、5人の棋士がいづれも「結構強い……だけど人と指すのと違う部分がある」と感じており、この日から本格的に数多く指して特徴を見いそうとしていた。

第2回電王戦開幕
第2回電王戦開幕
第2回電王戦開幕
第2回電王戦開幕

 

 そんな勉強会から1ヵ月以上たち、先週ニコ生でも中継された記者会見が行われた。

 北島六段理事「勉強会によってだんだんコンピューター将棋の特性を掴みつつ、棋士の皆さんはだいぶ慣れてきた。またコンピューターが強いことも理解できた」とし「勉強会にはほかのプロ棋士の参加もあった。知識を共有するために若手棋士を中心に参加していた」とのこと。今後を見据えて「コンピューター将棋とは?」ということを多くの棋士が理解しておくことは重要なことだ。

 また、対局する棋士はそれぞれ以下のコメントをした。

阿部光瑠 四段
第2回電王戦開幕

 「最近は長時間で指すこともあります。手ごたえというとこまでは行かないが、十分勝ちやすいのではないかと。自信は出てきた。まわりを気にせずやりたい」

佐藤慎一 四段
第2回電王戦開幕

 「今回対局するソフトは提供されていないので、ツツカナで練習をしている。練習する前から強い強いと言われていたが、実際に指してみても強いという実感はある。ただ、強いといってもプロより上なのかというと、そうは思っていない」

船江恒平 五段
第2回電王戦開幕

 「ふだんは20分ぐらいの持ち時間でよくやってきた。実力差は、なんとなくわかってきたつもりだし、どうなるかわかってきたと思う。処理速度によって強さの差が出るので、より高性能PCで練習したい。また、これからは本番に向けて、持ち時間を長くして練習したい。本番と同じような状況で練習することは大事だと思っている」

塚田泰明 九段
第2回電王戦開幕

 「ボンクラーズを提供してもらったのが2月6日のことで、そこから練習している。持ち時間1時間でそのあと1分という設定で指しているが、序盤は難があるけど、終盤は強い。本番に向けて、持ち時間3時間、そのあと1分の設定でやりたい」

三浦弘行 八段
第2回電王戦開幕

 「私の場合は最後なので、まずみなさんの対戦を見て、どのくらいなのか実力を把握したい。パソコンの性能によって全然違うので、GPS将棋の場合、本番はおそらく読みの速度は20数倍違うので、そのあたりは気にしている」

※各棋士の写真は勉強会のときのもの。

 

 このあと第1局のプロモーションビデオを公開(関連サイト)した。結構おもしろいので見ていない人はぜひ。

 また、今回完全ヒール役に徹している前回の覇者『ボンクラーズ』の開発者・伊藤氏のビデオも公開。
 伊藤氏いわく「どちらが勝つか、世間を通じて知れわたるのがいい。コンピューター将棋のアルゴリズムや技術としては、もうやることがなくなりつつある。ただ、CPUの性能がどんどん進化しているので、開発しなくてもどんどん強くなる。今回の勝負は4勝1敗とか5勝でコンピューターが勝つでしょう」

 確かに、『ボナンザ』の登場以降、しらみつぶしに探す方式が浸透し、コンピューターの処理能力がアップすればアップするほど、読みが深くなるため強くなる。たとえソフトが現状のままでも、人間が勝てなくなる日がいずれ訪れるだろう。

 今回は電王戦を考案し実現した米長永世棋聖が第2回電王戦の記者発表の数日後に永眠されたことをうけ、弔い戦の様相でもあるのだが、そのあたりを各棋士に伺った。

阿部四段
「米長前会長は昇段したとき強く手を握ってもらったことが印象に残っています」

佐藤四段
「自分が指した△6二玉はどうだったかと聞かれ、勝てるのかと聞かれたから、勝てると答えたので、ぜひ今回は勝ちたい」

船江五段
「第2回電王戦の出場を直接電話で言われたので、恩がえしいたい」

塚田九段
「敵討ちをするという考えはないけど、対局相手が元ボンクラーズなので、勝ちたいとは思います」

三浦八段
「元会長は将棋連盟の将来を考えていた。命尽きるまで電王戦を盛り上げようとしていたので、がんばりたいと思う」

 果たして、チェスにつづき将棋もコンピューターがプロ棋士に勝つのか、はたまたプロ棋士が意地を見せるのか、23日から5週連続で行なわれる電王戦は必見だ!

<<第2回将棋電王戦 大盤解説会概要>>

●日 時:3月23日(土)~4月20日(土)までの毎週土曜日
 午前9時開場/午前10時より大盤解説開始~対局終了まで
 ※9時45分より解説者・聞き手が登場し、対局前の
 現地(東京・将棋会館)の様子をレポート

●会 場:ニコファーレ
●料 金:一般1500円、大学生以下1000円
      (当日チケットのみ・税込)

  ※1局あたりの料金となります
  ※全席自由・立ち見あり
  ※学生の方は、チケット代金支払い時に学生証をご提示ください
  ※ニコファーレのエントランスホールでのモニター観覧は無料
  ※ニコニコ生放送の視聴は無料
●対局者および解説者/聞き手:
 第1局 (3/23):阿部光瑠四段 vs 習甦(しゅうそ)
 ◆解説者:阿久津主税七段/聞き手:矢内理絵子女流四段

 第2局 (3/30):佐藤慎一四段 vs ponanza
 ◆解説者:野月浩貴七段/聞き手:山口恵梨子女流初段

 第3局 (4/6):船江恒平五段 vs ツツカナ
 ◆解説者:鈴木大介八段/聞き手:藤田綾女流初段

 第4局 (4/13):塚田泰明九段 vs Puella α
 ◆解説者:木村一基八段/聞き手:安食総子女流初段

 第5局 (4/20):三浦弘行八段 vs GPS将棋
 ◆解説者:屋敷伸之九段/聞き手:矢内理絵子女流四段

●持ち時間:各4時間(1分未満切り捨て)
 先手番は、第1局 阿部光瑠四段
 (2局目以降は先手番・後手番が交替)
●主 催:株式会社ドワンゴ、公益社団法人 日本将棋連盟
●詳 細:「第2回将棋電王戦」公式ホームページ

●関連サイト
日本将棋連盟

※北島理事のお名前を間違っておりました。大変失礼いたしました。(3/23 12:08)

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