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アップル発表会から考える「アップル・エコシステム」の変化(西田宗千佳)

成長が鈍化する中で「高価なiPhone」をどう選んでもらうのか

 こういう流れだと「iPhone 14シリーズはしょぼいと思ったのか」と突っ込まれそうだ。それはちょっと違う。

 ただ、半導体のプロセスルールの進化が遅くなり、スマートフォン向けに求められる新しい要素が小粒になってきたので、7、8年前のように「毎年のように駆け足で進歩していく」ような状況にはないのも事実だ。

 その中で今年は、おそらくは長期的なビジョンに基づいて写真撮影用のエンジンを作り替えたり、ノッチからDynamic Islandに変えて通知のあり方について変化を考えてみたりと、iPhoneの持っている機能を変えていく試みも見える。

 1インチのイメージセンサーや二つ折りディスプレイのような尖った新デバイスの採用はないが、ハードウエアとしては間違いなく業界トップクラスのハイエンドだ。

 また、世界的にスマホの買い替えサイクルは長期化しており、日本でも3年を超え、4年くらいという人が多い。iPhone 13という去年のモデルを比較対象にすると小幅だが、2年・3年前のモデルと比較するなら納得できるだけの性能アップではある。

 とはいえ「高い」ということは否めない。アメリカではなんとか昨年並みに価格を維持したものの、ドル高市場の影響を受け、日本を含めた他国の売価は上がっている。

 ハイエンドスマホには厳しい時代だが、だからこそアップルは「安心安全」という要素をシステマチックに組み込んできているのかもしれない。アメリカ・カナダでしか使えないが、「衛星通信による緊急通報」は、まさに「万が一のための備え」そのものだ。この考え方が規格化され、一般化する道のりを辿るのか、それとも、レスキューへの連携までのシステム化をアップルが担うことで製品差別化のために使われ続けるのか。

 その辺が、アップルの戦略を見定めるポイントになるのかもしれない。

 

筆者紹介――西田 宗千佳

 1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。 得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「ソニー復興の劇薬 SAPプロジェクトの苦闘」(KADOKAWA)などがある。

 

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