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「SPORTEC2022」の基調講演レポート

オリンピックのレガシーを伝統へ スポーツ産業15兆円への挑戦

15兆円の達成には好循環な戦略を立てる必要がある

 PCWというコンサルティング会社が実施した調査で、東京都が「世界でトップのスポーツ都市」に選ばれた。これは間違いなく東京オリンピック・パラリンピックの効果で、パリ(2024年開催地)やロサンゼルス(2028年開催地)も、五輪開催都市ということでイメージアップすることが予想される。東京都はオリンピックの影響で1位となったものの、今後このランキングを維持できるかは分からないと原田氏は話す。

 そのためにも、オリンピックで得た経験やスポーツへの意識を継続させ、ライフスタイルのアクティブ化によるスポーツ関連消費の拡大が求められる。さらに、スポーツ関連消費の拡大には「コトづくり」が重要になる。

 原田氏によると、「モノ」は「コト」を構成する要素ではあるが、コトがないとモノが売れないという。例えば、巨大なマラソンイベント(コト)を実施することで、マラソンに興味を持つ人が増え、マラソンシューズ(モノ)が売れる。「コト」を提供する産業を育成する中で、高付加価値の「モノ」を生産するのが望ましい形となる。

 現在、東京都では「コト」を創出するために国際スポーツイベントの誘致活動に注力してるが、優れたコトづくりを加速させ、価値のあるモノを売りながら、東京のスポーツマップシティーを拡大させるといった、好循環な戦略と新しいパラダイムが求められるという。

スポーツツーリズムが地方創生につながる

 新しいパラダイムを創造するためには、「スポーツによる地方創生・まちづくり」や、高付加価値を生み出す「スポーツホスピタリティー」、さらには「スポーツツーリズム」の3つが需要となる。

「スポーツホスピタリティー」に関して、これまで日本では高いホスピタリティーを生み出せる施設や仕組みがなかったが、最新鋭の施設が増えてきたことにより、海外レベルのスポーツホスピタリティーが誕生する可能性が高まっている。また、「スポーツツーリズム」は、いわば「スポーツで人を動かす仕組み作り」で、アクティビティーを設けることで、あらゆる場所に価値を生み出し、観光資源化させることが可能になる、と原田氏は話す。

 域外ビジターの訪問が増加し、地域の収入が増加する。そうなると、雇用も増えるなど、「スポーツツーリズム」は地域活性化と経済効果の担い手としても重要な役割を果たす。「地方創生・まぢづくり」を成功させるには、地域内での政策実施だけでなく、アウターの存在も需要で、インナー(地域内)とアウナー両方を対象にした施策の実施が求められるとして、原田氏の講演は終了した。

 今後の日本のスポーツ界をさらに盛り上げるには、東京オリンピック・パラリンピックの遺産をどのように継承していくかが重要。もちろん、遺産は施設だけでなく、大会をきっかけに生まれた「健康意識」も挙げられる。国民の高いスポーツ意識を継続させるためにも、スポーツにおける新しい産業の創出や、「スポーツホスピタリティー」や「スポーツツーリズム」が今後どのように活用されていくのか注目したい。

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