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「SPORTEC2022」の基調講演レポート

オリンピックのレガシーを伝統へ スポーツ産業15兆円への挑戦

 日本最大級のスポーツ、健康産業の総合展「SPORTEC2022」が2022年7月27日に東京ビッグサイトで開幕した。スポーツに関わる企業や団体が展示する「最新の製品や技術」を見ることができるほか、業界の識者・専門家によるセミナーも数多く実施される。2022年度の「SPORTEC2022」で特に注目を集めたセミナーが、「日本のスポーツ産業15兆円への拡大のロードマップ」と題した基調講演だ。今回は、日本スポーツ界の行く末が垣間見えた、同講演の模様をレポートする。

スポーツ立国調査会長が日本のスポーツ政策を語る

 最初に登壇したのは、自由民主党選挙対策委員長であり、同党スポーツ立国調査会の会長である遠藤利明氏。2013年にはスポーツ庁の設置プロジェクトの座長として、同庁設立に尽力。2021年に開催された東京2020オリンピック・パラリンピックでは組織委員会副会長を務めた人物だ。

 遠藤氏は、これまでの日本スポーツ界がどのように歩んできたのか、どんな方法で難題を乗り越えていたのかの事例を交えつつ、現在のスポーツ界の課題とそこに対する政策を語った。いわば「日本のスポーツ政策の総論」だ。

スポーツ界、政財界、行政とが共に取り組める仕組みを作る

 遠藤氏によると、日本のスポーツ界は、長い間「地域政策が不足していた」という。地域のスポーツを支えていたのは企業だった。しかし、2000年代後半のリーマン・ショックなどの不況により、多くの企業で経済状況が悪化。数千という数の企業スポーツチームが撤退を余儀なくされた。そこで、日本のスポーツを盛り上げようという流れが生まれ、スポーツ基本法の制定やスポーツ庁の設置につながった。

 結果的に、産学官連携でスポーツミッションに取り組んだり、「地域スポーツから学校体育を見る」という取り組みも形になってきている。しかし、根本的な課題として、「縦軸で動こうとするスポーツ団体が多い」と遠藤氏は話す。横軸でつながることで良い取り組みが生まれる可能性があるのに、「自分たち主導」で動こうとするために、横の連携が生まれないのだという。

 横のつながりを生むために、スポーツ庁や日本オリンピック委員会、日本パラリンピック委員会と連携し、「スポーツ政策推進機構」を設置。スポーツ界、政財界、行政とが一緒になって取り組める仕組みを設けることで、新しいスポーツ振興に取り組むと話した。

 その他にも、今後は「スポーツホスピタリティー」(より上質で満足度の高いスポーツ体験)や「データでスポーツを発展させる取り組み」に注力し、日本のスポーツ界の発展を目指すという。日本社会の課題でもある「地域スポーツへの対策」も含め、政府として連携・支援を行っていくと語り、第1部は終了となった。

スポーツ以外の社会課題の解決にもつながる「SOIP」

 第2部で登壇したのはスポーツ庁の室伏広治長官。「スポーツ基本計画」(スポーツ基本法を基に作られた「5年間の日本のスポーツの重要な指針」)を構成する12の施策のうち「スポーツによる健康増進」「スポーツの成長産業化」「スポーツによる地方創生、まちづくり」をメインに、これからのスポーツ施策を語った。

 まずは「スポーツの成長産業化」について。スポーツ庁では「スポーツオープンイノベーションプラットフォーム」、通称「SOIP(ソイップ)」という取り組みを行っている。これはスポーツ+「何か」で新しいサービスや産業を生みだそうというものだ。

 中央競技団体を核としたSOIPプロジェクトの継続的実施や、新事業の創出支援を行う「アクセラレーション」、事業拡大支援を目的とする「コンテスト」という大きく3つの取り組みがある。当メディアで何度も紹介している「INNOVATION LEAGUE」が、まさに「SOIPの先進事例形成」を目的に行われているものだ。

 今回の講演でも、2021年度の取り組み例として、「INNOVATION LEAGUE アクセラレーション2021」の採択企業や「INNOVATION LEAGUE コンテスト」の受賞プロジェクトを紹介。こうした取り組みを続けることで、スポーツ以外の社会課題の解決にもつながる可能性があると語った。

参考記事:「INNOVATION LEAGUE アクセラレーション2021」採択企業5社発表

参考記事:「INNOVATION LEAGUE 2021 DEMO DAY」レポート

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