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日本法人設立30周年を迎え、改めて考えるアドビの価値と日本法人の役割

これからもデジタルで心をおどらせる 神谷社長に聞く次のアドビ

2022年04月22日 09時00分更新

デジタルで収益を上げる、顧客体験を上げることが優先事項になっていない

大谷:コロナ禍の日本法人の運営や従業員に対しての施策でどんなことをやったのか教えてもらえますか?

神谷:いろいろな見方がありますけれど、会社は社員が中心になって作るモノだと思っているんです。だから、社長に就任してから、社員に「みなさんはアドビジャパンを10年後にどのようにしたいのか」と問いかけ、社内協議を重ねた結果、「心、おどる、デジタル」という日本向けのビジョンを作りました。

このビジョンは社員の中ですごく浸透してきています。全社ミーティングでも、お客さまとの対話でも、「心、おどってる?」という会話が出てきます。われわれのツールは、ユーザーに近い位置のデジタルツールなので、やはり「人を幸せにできるか」がミッションなんです。これを共通のゴールにしています。

大谷:特にクリエイティブの領域は、心おどらないといい作品できないですよね。

神谷:あと、アドビの会長兼CEOのシャンタヌ・ナラヤンが、アドビの社員がアドビの製品を好きでいなければ、とよく言っていますが、僕もそう思います。もちろん、PhotoshopやIllustratorは個人でも使えますが、MAツールは個人で使うのは難しい。でも、Adobe Creative Cloud Expressのような直感的に使えるクリエイティブツールであれば社員の自己紹介で使えます。プレゼンでもそうですが、自社ツールをとにかく社内の多くの場面で活用しています。

テレワーク自体は以前からできていたのですが、コロナ禍でコミュニケーションが取りにくい場面もあったと聞きます。社長としてはそこには注意を傾けてきました。アドビではハイブリッドワークを推奨していますので、必要に応じて社員の皆さんが来られるオフィス、コラボレーションできるオフィスに改装しています。

大谷:日本市場での課題とか、問題意識はありますか?

神谷:デジタルマーケティングの事業を直接見始めてまだ1年ですが、北米から10年くらいは遅れていると考えています。少なくとも北米ではデジタルトランスフォメーションという言葉はもうあまり使われていません。日本ではデジタル上で収益を上げるとか、顧客の体験を向上させることが、まだまだ企業の優先事項になっていない。まだ1つのプロジェクトにとどまっている印象があります。

Adobe Summitに登壇したNIKEのCEOもそうですが、北米のトップはデジタルエコノミーにおいて先駆的ツールを導入することへの意識が高いですが、日本は遅れている感じがしますね。でも、コロナ禍の影響もあり、企業はデジタルでユーザー体験を届ける必要性に迫られています。

デジタルが当たり前になり、デジタルという言葉がなくなる?

大谷:長らくプロ向けのツールを提供してきましたが、テクノロジーの民主化という観点で、最近では新しいツールを提供していると聞きました。

神谷:昨年12月に発表したAdobe Creative Cloud Expressは、まさに「すべての人に『つくる力』を」というアドビのミッションを体現するものです。

これまでのマーケティングではマスメディアが主体だったので、予算がなければ大掛かりな広告を打つ、といったようなことは難しかったのです。でも、今やSNSの時代なので、コンテンツさえきちんと作れば、誰でも自身の店をブランディングできる。今までは作るハードルが高かったのですが、Adobe Creative Cloud Expressであればもっと簡単にできる。今後10年間をかけて、老若男女問わず、こういったツールを使える環境を整えていきたいです。

特に中小企業には幅広く使っていただきたいと思っています。イギリスの事例ですが、とある街のドーナツ屋がInstagramで自社のドーナツをブランディングした結果、今やヨーロッパ中に店舗が広がっています。そういう事例が世界中にあります。

今後、SNSというプラットフォームは、中小企業の成長に大きな影響を与える。しかし、魅力的なコンテンツでないと、インフルエンスしていかない。そこをお手伝いしていきたいですね。

大谷:エンドユーザーもどんどん変化している気がします。うちの子供も最近ではPCでプレゼンを作ったり、スマホで動画編集するみたいなことを当たり前のようにやっています。

神谷:政府は現在1人の子供に1人のPCというプロジェクトを進めていますが、日本では例えばPhotoshopを使うには、配布されているPCのスペックが十分ではないということがあります。こうした状況はなんとかしたい。一方で、今はPCだけではなく、スマホやタブレットのようなデバイスの方が日常的に使われているので、デバイスに依存せず、誰でもクリエイティビティを発揮できるツールが必要だと考えています。

また最近では、デジタルクリエイティブツールのスキルを重視する企業が増加しています。多くのお客さまと話をしていると、デジタル人材の不足は深刻で、ExcelやWordしか使ったことないという方は多い。ですから、学校の現場でもアドビのツールを導入いただく機会が増えていますし、今後は動画や3Dといったスキルはますます必要とされると思います。これはうちの子供にも言っています(笑)。

大谷:サブスクやEコマースなどのチャレンジを経て、最近のアドビはAI倫理やNFTへの取り組みも進めています。神谷さんとしては、まず市場がどうなっていくか教えていただけますか?

神谷:デジタルがますます重要になり、生活の中心になっていくと思います。デジタル体験をベースに、ユーザーがモノを購入し、企業が収益を上げるという時代はすでに到来していますが、この流れがより加速していくと考えています。

10年後にはデジタル中心の世界は当たり前になり、もしかしたら、デジタルという言葉自体をあまり使わなくなっているかもしれません。さらにみなさまと「心、おどる」体験を実現していきたいと思います。
 


■関連サイト

(提供:アドビ)

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