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新仕様の補助電源は次世代への布石か

RTX 30シリーズの最終兵器、GeFore RTX 3090 Ti登場!消費電力や実際のパフォーマンスは?

2022年03月29日 22時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集● ジサトラユージ/ASCII

CGレンダリングや動画エンコードでの性能は?

 ゲームにおけるRTX 3090 Tiは、フラッグシップならではのパフォーマンスの高さは見られる。しかし、最強GPUにしてはどうも微妙では……という印象を持ったことだろう。RTX 3090 Tiを輝かせるためには、特に解像度設定が重要だ。ただそれは、RTX 3090 FEのレビューでも同じことを言っていた。究極のゲーム体験をするためにTX 3090 Tiは有効かもしれないが、それより10万円安いRTX 3080 Tiでも、RTX 3090 Tiの2割引き程度の性能で楽しめる。

 だが、RTX 3090と同様にRTX 3090 Ti最大のメリットは24GBという広大なVRAM領域を使えることにある。ゲームではかなり厳しいが、クリエイティブ系のアプリではどうだろうか?

 まずは、VRAMをがっつり使う「DaVinci Resolve Studio」におけるエンコード時間を比較してみよう。再生時間約75秒のフルHD動画に対し、Super Scaleでx4(シャープネスおよびノイズリダクションはMedium)することで8Kにアップスケールするプロジェクトを準備し、これを8KのMP4形式に書き出す時間を計測した。ビットレート指定は自動認識に任せたが、出力された動画を確認したところ172Mbpsとなった。エンコーダーは“Native”としている。

「DaVinci Resolve Studio」のエンコード時間

 今回は、用意したプロジェクトを処理する際のVRAM使用量が少なかった(11GB程度)ため、8K動画のエンコードであってもRTX 3090 Ti〜3080 Tiの差は認められなかった。

 続いて、「Premiere Pro 2022」上で用意した約3分の4K動画を、「Media Encoder 2022」で4K MP4形式で書き出す時間を比較する。エンコード設定はVBR/1パスエンコード、平均50Mbps、フレーム補間はオプティカルフローとした。コーデックはGPUへの依存度が高いH.264と、CPUでの処理が重いH.265の2つを使用している。

「Media Encoder 2022」における4K MP4書き出し時間

 H.264で最速だったのは、意外なことにRTX 3090だった。RTX 3090 Tiはそのすぐ後ろで、RTX 3080 Tiはさらにその後となった。H.265の処理時間が変わらないのは、CPU処理への依存度が高いためである。

 さて、ここまで微妙な結果が続いてしまったが、RTX 3090以上でないと駄目だったテストもあった。下のグラフは3DCG
ソフト「Blender」の最新版で、「The Junk Shop」を1フレームレンダリングした時間を比較したものだ。レンダリングはGPU Computeを、デノイザーはOptiX(RTXテクノロジーを利用した技法)を指定している。

「Blender」におけるレンダリング時間

 RTX 3080 Tiの結果がないのは、VRAM不足で処理が止まってしまったためである。VRAMを多量に使用するシーンでは、RTX 3090以上でないと作業が止まってしまうこともあるのだ。ただし、RTX 3090と3090 Tiには大きな差があるとはいえないので、RTX 3090ユーザーがあえて買い換える必要はないだろう。

 ちなみに、今回のドライバーのチューニングの問題か、ベンチマーク側の不具合が原因なのか不明だが、RTX 3090 Tiで性能が出ない状況も確認できた。下のグラフは「V-Ray Benchmark」でGPUを使ったレンダリングテストを実施した時の結果である。とはいえ、こちらはいずれ改善されることだろう。

「V-Ray Benchmark」の結果。スコアーの単位が異なる2つのテストを1つのグラフにしているが、見やすさ重視ということでご容赦いただきたい

TGP 450Wのカードは実測何Wなのか?

 システム全体の消費電力は前のほうのページで検証済みだが、実際TGP 450WのRTX 3090 Tiはどの程度の消費電力になるのか、カードのTBPを正確に測ってみたい。GeForce系カードの場合「HWiNFO」を使えばTBPの割と正確な値が把握できるようになっているが、NVIDIA製のデバイス「PCAT」を使い、さらに正確を期することにした。

 ここでの検証はCyberpunk 2077で画質は“レイトレーシング:ウルトラ”+DLSS“バランス”、解像度は4Kとした。プレイ状態で放置し、その間のTBPをPCATで計測する。

RTX 3090 Tiカードの消費電力を電源ライン別に追跡したグラフ。1秒ごとの移動平均でプロットしている

 上のグラフはRTX 3090 Tiだけにフォーカスし、電源ラインごとの消費電力を追跡したものだ。8ピンの補助電源3系統は1系統あたり150W前後を推移している。さらにPCI Express x16スロット側からも12W程度だが電力を消費している。これらを合算したのがTBPで、グラフの1番上、450Wあたりを走っているグラフになる。平均では450Wあたりになるが、瞬間瞬間でみた場合は450Wをやや超えることもある、ということだ。

テストに使用した各カードのTBPの推移を比較したもの(移動平均)

上のグラフに使った生データから最小/平均/最大値をまとめたもの

 上の2つのグラフは、RTX 3090 Ti〜3080 Tiを同じゲームの同じシーンで動かした時のTBPの推移をプロットし、そのデータから最大/最小/平均値を求めたグラフだ。これによると、今回テストに使用したZOTAC製のRTX 3090 Ti搭載カードは、瞬間的に約480W消費することがあるが、15分弱の平均値では約455Wにとどまった。

 これはZOTAC GAMING RTX 3090 Ti AMP EXTREME HOLOのTGP、即ち450Wとほぼ合致している。一方、RTX 3090カードではTBPは最大約493W、平均約448WとRTX 3090 Tiカードと大差ない。つまり、RTX 3090のハイエンドOCカードを支えられる環境であれば、TGP 450WのRTX 3090 Tiカードを極度に恐れる必要もない、ということだ。

RTX 3090 Tiカードで観測された約8700のTBPサンプルが、どの程度の頻度で出ているか分析したヒストグラム

 上のグラフはZOTAC GAMING RTX 3090 Ti AMP EXTREME HOLOのTBPにおいて、どんな値がどの程度の頻度で出現しているかを分析したものだ。TBP平均454Wは青いヒストグラムの山の中央付近にあり、ちょうどここが累積頻度50%とほぼ重なっている。

 つまり、サンプリングした時間の約半分は450W以上の電力消費となる。そのほか、上位5%点は473〜474Wであるが、これはゲーム中に観測されるTBPのうち、95%は474Wより下であるということを指す。よって、電源ユニットの12V出力はざっくりその3分の1、40Aは絶対に必要になる。電源ユニット選びの手がかりになれば幸いだ。

まとめ:究極や最新規格のためには
金を積んでもいいという人のための製品

 以上でRTX 3090 Tiのレビューは終了だ。RTX 3090を超えるGPUということで大きな期待を寄せていた人は失望したことだろうが、TITAN RTXの時しかり、RTX 3090の時しかり、超々ハイエンドGPUはこういう結果になりやすいのだ。

 とはいえ、既存のRTX 3090に対して最大10%程度性能が上がっているので、何としても最高のパワーを手に入れたいという人には是非オススメしたい。実売価格で10万円程度安いRTX 3080 Tiで十分対応できることも多いが、VRAM 24GBというスペックを今すぐ手に入れたいなら、RTX 3090 Tiは検討に値するGPUといえるだろう。

 しかし、ネット界隈では次世代GeForce(RTX 4000シリーズ)が今年投入されるのでは、という噂に満ちている。RTX 30シリーズが2020年秋ローンチなのだから、2022年秋に新世代突入というのはあり得る話だ。その時にTGP 450WクラスのGPUを先鋒として投入したいからこそ、RTX 3090 TiはTGP 450Wで出し、かつ12VHPWRという新たな規格を先取りさせたのではないか、と筆者は勝手に想像している。

 北米では4月からGeForceの販売価格を最大25%(!)下げるメーカーも出現するという報道もある。このことは次世代GeForceのために在庫調整フェーズに入ったと考えられ、これも年内の新世代GeForce登場を裏付ける。RTX 3090 TiはエンスージアストやクリエイターのためのGPUだが、同時に次世代GeForceへの地ならしをするための戦略的な色の強い製品といえる。

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