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【後編】ソリッド・キューブ原田奈美社長インタビュー

原田社長が「モーション業界に“ヒーロー”を作りたい」理由

2022年11月20日 15時00分更新

モーションでアニメの表現が広がった!

―― ゲーム業界の場合は、予算が潤沢で自前の撮影スタジオもあるという理由から早々に使われ始めたモーションキャプチャーですが、アニメ業界でも時代を経ると利用が増えたというのはどのような理由からでしょうか? アニメ制作の予算が急に増えたとは思えませんが……。

原田 予算増ではなく、ひとえに技術の進化と『新しい表現にチャレンジしたい』という思いの賜物かと思います。

 もちろん、原作のゲーム作品がモーションを使っていたのでアニメでも使ってみよう……という流れもあったでしょうし、3DCG専門のアニメ制作会社が増えたり、ソフトや機材の進化によってモーションデータが大きな修正なしに使えるレベルになったり、という事情もあるかと思います。

 しかし、何よりも制作者として「モーションを取り入れることで、アニメの表現が広がる」ことが大きな理由かなと思います。

―― モーションによってアニメでできる表現が広がる……? そのあたり詳しく教えてください!

原田 1つにはカメラワークがあると思います。アイドルものの場合、大きな会場でのライブシーンを描く際、どんな風にステージを使えばよいのかという問題が持ち上がるのですが、CGですと具体的にイメージしやすくなります。

―― アイドル作品のダンス描写はアニメにおけるブレイクスルーでした。アイマスの劇場版などで顕著ですが、大人数のキャラクターを踊らせるときのステージの使い方は、背景も含めてこだわりどころですよね。

原田 アクターさんのダンスをアニメに反映すると、たとえば「前後に位置するキャラクターは、カメラを一定の位置に置いたとき、どのように見えるのか?」がわかります。すると、カメラを立体的に動かしやすくなり、実際のライブ以上に臨場感が出るんです。

 カメラワークのほか、ダンス自体もアクターさんを使うからこそできる表現があります。アニメーターさんはダンスの専門家ではないので、曲のどこでリズムを取って動きを変えるか、など描写が難しい点も出てきます。そこでアクターが実際にダンスや芝居をすることで豊かになる表現があると思います。

―― アニメでは2010年代前半に「アイドルもの」作品という流れができました。アイマスのほか『ラブライブ!』『プリティーリズム』、手描きですが『うたの☆プリンスさまっ♪』など、作品が一気に増えました。こうした作品の醍醐味である「大人数を同じステージで踊らせる」という表現を支えているのが、モーションアクターさんなのですね。

コラム:アイドルアニメにおけるダンス事情

 2000年代後半以降は、ゲームと連動した作品で「アニメ」にもフル3DCGダンスが登場した。その流れをざっと紹介したい。

 2009年、アニメ業界で大きな話題となったのが(アイドルものではないが)『フレッシュプリキュア!』エンディングのCGダンス。

 2011年4月放送開始の『プリティーリズム・オーロラドリーム』でCGダンスパートが登場。筐体ゲーム時代からCGモデルとダンスパートは存在していたが、アニメのCGディレクター兼副監督の京極尚彦氏は、それをアニメで「プリズムショー」としてダンスをさせた。

 2011年、『うたの☆プリンスさまっ♪』では「メインアニメーション」として劇中歌に合わせたアイドルたちのダンスが人気に。2作目までは手描きだが、3作目以降は3DCGも使用するようになった。

 2012年10月、バンダイの筐体カードゲーム「アイカツ!」稼働に合わせてアニメ『アイカツ!』が放送開始。

 そして2013年1月、アニメ『ラブライブ!』放送開始。フルCGのダンス/コンテは、前述したプリティーリズム・シリーズのCGディレクターだった京極尚彦監督が手掛けた。

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