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内閣官房(コロナ室)、内閣府(科技)主催「ニュー・ノーマル・テックピッチ」開催

空飛ぶクルマなど新しい日常を築くテック企業8社

ドローンで撮影しながらリアルタイムに周辺3次元データを計測、解析

 最後に登壇したのは、ルーチェサーチ株式会社。同社は、現場をいかに測るかを重視した「リアルタイム移動体3D計測」が可能なドローンを開発しているメーカーで、ドローン自体も自社で設計をしているのが特徴だ。ドローンの制御技術を開発しているメーカーは世界でも多いが、機体の設計を工夫しているメーカーはかなり少ないため、自社の強みとして意識していると、登壇した代表取締役 渡邉豊氏は話す。

ルーチェサーチ株式会社 代表取締役 渡邉豊氏

自社で開発設計から環境設計・画像解析まで一気通貫で行なっている

 自社で開発したドローンを利用して現場を撮影し、3次元解析やレーザー解析などの画像解析を行なう。年間でおよそ100業務1000フライトの実績があり、農林水産業や気象観測、国土交通省メインの土木測量や橋梁の点検などに取り組んでいる。「会社が現場になる」をコンセプトにしており、現場に行かないとわからないことが多い現状で、いかに精緻に情報を取得するかがキーポイントになると渡邉氏は話す。

近年は、地震や豪雨などの大規模災害時にも活動している

 3D計測においては、その日のうちに撮影から処理も含めて終わらせることが可能。ドローンにセンサーを搭載することで、リアルタイムに移動をしながら3次元撮影ができ、解析も完了するという。これまでは人が実際に調査していたが、ドローンを活用することにより、安全に進めることができ人員の削減にもつながる。また、取得したデータは高スペックなパソコンでないと解析できないことも多かったが、テレワークでも完結できるという。

同社が開発したドローン「SPIDER-ST」

飛行しながら3D撮影を行ない解析まで完了する

 取得したデータの活用をするための施策も進めている。従来は、データを取得しても、その先にどう活かすかという部分が途切れていたため、3次元データをいかに活用するかを考えていきたいという。「管理面のDXはよく言われているが、現場にもDXの視点を導入できるように進めている」と渡邉氏は話した。

橋梁など複雑な構造物に対して、取得したデータを元に現実空間に近い形で把握することができる

 コメンテーターの石井氏からは、「災害時にはいち早く全容が見えることが重要で、3Dデータは非常に役立つと思うが、夜間や強風時などのコンディションが悪いときに、ドローンをどこまで活用できるのか」という質問があった。渡邉氏は、「過去には産業用の大きなドローンを最大風速15~6mでも飛ばしており、その程度の環境にも耐えられるように設計している。夜間についても、航行自体は可能なので、航空法と安全性の観点を鑑みてどのタイミングでスタートさせるかだけだと思う」と答えた。

 最後に、各コメンテーターからイベントの総括が行なわれた。佐藤氏は「今回は、ニュー・ノーマル・テックピッチということで、普段知り得ない技術を中心としたベンチャー企業の話を聞けて非常に有意義だった。このような分野をベンチャーキャピタルとしても推進していきたい。一方で、国をあげてバックアップしていく仕組みをベンチャーキャピタル以外にも作っていく必要がある。また、我々自身も技術を理解して投資できるような人材を揃えていかなければいけないと感じた」と話した。

iSGSインベンストメントワークス 佐藤真希子氏

 本間氏は「シリコンバレーのスタートアップは、ニュー・ノーマルに向けてリモート前提で会社を作っている。さらに、GAFAは一昔前の会社という気概でベンチャーキャピタルやスタートアップは活動しているという話を聞いた。それを考えると、全く新しいやり方でゼロベースからサービスを作れる我々の方が、より面白いものを生み出せるかもしれないという期待感を持ちながら話を聞いていた。ただし、社会実装を実現するには、お客さんも社会も政府も一丸となって取り組まなければいけない。民間人ももちろん頑張らなければいけないが、国や政府の力ももっと借りる必要がある。ゴールは全員一緒で、より良い社会を作っていくために頑張っていきたい」と話した。

インキュベイトファンド株式会社 代表パートナー 本間真彦氏

 石井氏は「新しい技術やサービスを政府や自治体、企業で積極的に活用することにより、社会実装を進めていきたいと考えているが、現場で新しいことに挑戦するのはハードルがある。そこで一歩踏み出せるかどうか、あるいは意思決定をする人が失敗のリスクを恐れずチャレンジすることを推奨して、現場の後押しをする動きに期待する。政府の中でも社会実装に向けた取り組みや、規制改革を一層推進していきたい。オーディエンスの方も一緒に新しい技術の実装、連携をしていただければと思う」と話した。

内閣審議官(内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室)渡邊昇治氏

 最後に、渡邊氏が閉会の挨拶を行ない、「本日は、実績のある企業や素晴らしいコメンテーターが集まり、密度の濃いイベントだった。話しを聞いていると、災害や危機以外の平時でも使える新しいデュアルユースのサービスが多い印象だった。また、新しい技術が入ってくるときは、提供側と利用者側の双方のコミュニケーションが大切。厳しい言い方になるが、発信する側はもちろん、受け取る側も頑張らなければいけない。そのためには、人々のアンテナの感度を上げていく必要があり、私も微力ながら貢献していきたいと感じた」と話してイベントを締め括った。

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