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No Maps 2018で開催されたセッション「空飛ぶクルマから始まる地方創生」

空飛ぶクルマが日本でも始動 課題とニーズを北海道から探る

 電動垂直離着陸が可能な次世代モビリティ「空飛ぶ車」は、世界で120~130社が参入している今注目の業界だ。国内では、有志団体「CARTIVATA」(カーティベーター)と慶応SDM研究所空飛ぶクルマラボを中心に、主要大学や企業と連携して社会実装に向けた共同研究を進めている。

 No Maps 2018の10月12日に開催されたセッション「空飛ぶクルマから始まる地方創生」では、CARTIVATORの開発する日本発の空飛ぶ車の紹介と、北海道ならではの観光、災害救助、医療などへの活用について議論が行なわれた。

 登壇者は、有志団体CARTIVATOR共同代表/株式会社SkyDrive代表 福澤知浩氏、慶應義塾大学大学院SDM研究科特任教授/北海道大学大学院農学研究員客員教授の林 美香子氏、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社 代表取締役/No Maps実行委員長の伊藤博之氏の3名。司会は、デロイトトーマツ コンサルティング シニアマネージャー/慶應SDM研究所 空飛ぶクルマラボの海野浩三氏が務めた。

世界最小・ドアtoドアの空飛ぶクルマ

有志団体CARTIVATOR共同代表/株式会社SkyDrive代表 福澤 知浩氏

 CARTIVATORは、自動車、航空業界、スタートアップを中心に2012年に結成された有志団体だ。2050年までに誰もが空を飛べる世界にすることをミッションに掲げ、2020年東京五輪開会式でのデモフライトを目指している。

 同社が開発しているのは、世界最小の空飛ぶ車だ。世界で開発されている空飛ぶクルマは、固定翼をもつ大型の機体と、ドローンの延長線上のプロペラで飛ぶ機体の2種類に分かれている。

 固定翼のあるタイプのほうが長い距離を飛べるが、そのぶんサイズが大きくなり、陸上で走れる場所が限定されてしまう。ドアtoドアでの輸送を実現するには、できるだけ小さいほうがいい。SkyDriveは、航続距離は短くなるが、小型化の可能なプロペラ式を採用。3つのタイヤで陸を走り、4つのプロペラで飛行する構造だ。

 2018年5月に発表した2代目の機体「SD-01」は、4メートル四方のサイズで1~2名が乗車可能。ヘリコプターよりも安定し、騒音も少ない。地上では時速60~70キロ程度で走行可能だ。

 ドローンとは異なり、航空機としての認証が必要になるため、屋外での飛行実験が難しい。そこで、まずは屋内での無人での飛行実験を行ない、これから有人機の開発に取り掛かる段階だ。

開発中の空飛ぶ車「SD-01」

救急搬送、エンターテインメント、離島輸送などから、商用化へ

 2018年9月には株式会社SkyDriveを設立。2020年の東京五輪以降は、事業として世の中への普及を目指す。初期段階では、ドクターヘリに代わる救急搬送、観光地のエンターテインメント、離島への輸送の3つの用途を想定している。

 緊急用としては、コンビニの駐車場2台分のスペースで着陸でき、狭い路地を走り、要救助者を迎えに行ける。また、ヘリコプターに比べて飛行コストが半分~4分の1程度と安いため、観光地のエンターテインメントや離島への輸送などへの活用を想定しているそうだ。

電動化・量産化で、機体コストは高級車より安く、輸送コストはタクシーなみに抑えられる

 空飛ぶクルマのメリットは、1.低コスト、2.操縦が簡単、3.点から点への移動が可能――の3つだ。経済産業省の試算によると、小型ヘリコプターに比べて機体コストが低く、量産化すれば高級車よりも安くなると想定している。また、燃料費やメンテナンスコストが下がり、将来的にはタクシー程度のkm単価で輸送サービスを実現できるかもしれない。

 2つ目の操縦については、ドローンと同様にセンサーで機体の傾きを検知し、自動で安定飛行できるため、飛行機やヘリコプターに比べて操縦が容易であるという。

 3つ目は、滑走路が不要なので、既存のヘリコプターや陸路の交通機関に比べて、圧倒的に短距離・短時間での移動が可能だ。

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