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正確な音の再現のための卵型、イクリプス「TD307MK3」で聴く「YOASOBI/THE BOOK」

2021年05月17日 17時00分更新

素晴らしい音場感。広々としたステージが浮かび上がる。

試聴している状態のTD307MK3。サイズからすると1.5mほどの間隔は広すぎるようにも感じるが、優れた音場感を楽しむならば、このくらいの間隔の方がおすすめ。

 小型スピーカーはエンクロージャー自体も小さいため反射の影響が少なく、2ウェイの2つのドライバーの配置も近接しているので点音源に近い。つまり、大型スピーカーに比べると音像定位の良さや音場再現の優秀さがメリットとしてある。だが、TD307MK3の音を聴くと、完全な点音源であるフルレンジスピーカーのメリット、四角い箱に入ったスピーカーの反射の影響を実感してしまう。音場がとても広く深い。そして定位は極めて明瞭。輪郭を立たせてシャープな定位というわけでなく、何もない空間から音が出ているかのうような自然さがある。もしも映画の音をTD307MK3で聴いたとしたら、スクリーンから声が出ているように錯覚してしまうだろう。

 この音場と定位の良さは、一般的なスピーカーでは味わえないものだ。中高域の情報量を高めていることもあって、オーケストラの各楽器の音もきめ細かく描写する。まさしく映像を見ているかのようなステレオイメージだ。関心するのは、スピーカーの存在が消えてしまうこと。オーケストラの右端にあることが多いコントラバスの音は、右側のスピーカーから音が出ていることがわかってしまうが、センターの音像と同じように右端に定位する。スピーカーではなく、スピーカーの少し後ろにコントラバスが居て実際に音を出している感じだ。

 卵型のエンクロージャーで不要な反射がないこと、フルレンジユニットの定位の良さがはっきりとわかる音だ。前半の解説でユニットの設計や内部構造などもかなり手の込んだものになっていると紹介したが、それだけのことをやっていると納得のいく音だ。

 テンポ感というか、音の出るタイミングが揃っている感じも素晴らしい。正確なインパルス応答の追求がもたらしたもので、オーケストラが一斉に音を出すようなところでは、低音が遅れるような感じもなく、すべての楽器の音が揃っている。こういう音は、とても高価なハイエンドスピーカーを別にすれば、あまり聴くことのできる音ではない。

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