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正確な音の再現のための卵型、イクリプス「TD307MK3」で聴く「YOASOBI/THE BOOK」

2021年05月17日 17時00分更新

上級機と同様に、振動板にグラスファイバーを採用

 前モデルを知っている人からすると、TD307MK3は見た目は何も変わっていないように感じるかもしれない。比べてみないとわからないが、サイズは少々大きくなっていて、エンクロージャーの容積は200cc増えている。筆者は、サラウンド再生のためのトップスピーカーとして、上級機のTD508MK3を4台天井に吊り下げているが、ますます外観が508に近づいた印象だ。

 前後左右から見てみると、平面がどこにもない曲面構成の形であることがわかる。エンクロージャーは樹脂製だが卵型の形状ということもあって剛性感はかなりのもの。中央で前後に分割される形状で、後ろ側の上面と側面に見える穴にネジ留めで組み立てられている。後方を見ると、中央付近にバスレフポートとスピーカー端子がある。スピーカー端子はバナナプラグ対応の本格的なもので、安価ながらしっかりとした装備だ。卵型スピーカーとしては必然であるスタンドも基部は金属製で非常に強度が高い。安定感も抜群だ。なお、カラーはお借りしたホワイトのほか、ブラックの2種類がある。

TD307MK3の前面と背面。前面の目玉おやじのような造形が可愛らしい。背面のバスレフポートは楕円形で開口部をフレア形状として風切り音を低減している。

TD307MK3の側面。フォルムとしては卵型だが、流線形のスポーツカーのような雰囲気もある。

筆者の視聴室でトップスピーカーとして使われている上級機のTD508MK3。ユニット口径は8cm。基本的な特徴はまったく同じ。

 TD307MK3はエンクロージャーの容積を拡大しているが、これは低音再生の向上のため。ドライバーユニットは口径こそ6.5cmと同じだが内容は一新されている。振動板の素材はパルプ(紙)から上級機と同じグラスファイバーとなった。高い剛性と適度な内部損失を備え、音質への色づけも少ないという。これに合わせてセンターキャップの形状もTD508MK3の形に近いものになっている。上級機と同じ振動板素材になったこともあり、上級機と組み合わせた場合でも音色的なつながりが向上している。

TD307MK3の正面。振動板はグラスファイバー繊維を織った素材になっていて、これは上級機と同じものになっている。

 駆動のための磁気回路も大型化された。f0(最低共振周波数)は80Hz(従来モデルは100Hz)。トータルでの出力音圧レベルは大きく変わっていないが、中域では2〜3dB向上して音の厚みをたかめ、高域は5dB向上により空間再現力を高めている。このほか、振動板の振幅も最大で1.4倍となり、直線動作領域でも1.0mmから1.8mmに拡大され、低音再生能力の向上やパワーリニアリティも高めている。このほか、イクリプスが重視するインパルス応答もTD508MK3に近い性能を実現したという。

 前作もロングセラーのモデルだったが、コスト的な制約が大きく、コンセプトは同じでも上級機と比べると性能的な差があったが、TD307MK3では性能的にもTD508MK3に近いものになった。これは大きな進化だし、デスクトップでノートパソコンと組み合わせて使うこともできるサイズだけに、これだけ本格的な実力を備えたモデルは貴重だ。

 また金属製のスタンドは、エンクロジャーとの取り付け部分が可動し、-25度から30度の範囲で向きの調整が可能。左右方向は360度可動する。角度調整のためには付属の六角レンチで締結用のボルトを緩めて行う。調整後はしっかりと締め直そう。やや手間のかかる調整方法だが、きちんとした角度調整と剛性の確保のためには不可欠で、しっかりとボルトを締めればグラつくこともないので安心感がある。このスタンドも流線形のデザインで見た目もよいが、後方には穴が空いていて、ケーブルを通すこともできるようになっている。また、スタンドの裏面にはネジなどで壁や天井に取り付けるための穴も空いてあり、壁掛けなども比較的容易に行える。自由度の高い角度調整機能を活かして、壁掛けで使えば邪魔にもなりにくい。

スタンド部分の底面。ネジ留めのための穴が空けられていて、DIYレベルの工事で壁掛けや天井吊りが実現できる。

エンクロージャーとスタンドの接続部分。ここの太いボルトを緩めると角度調整が行える。

スタンド部分の背面。後ろ側のくぼみの奥はスタンドの底までぬけた穴が空いており、スピーカーケーブル(細めのもの)を通すことができる。

 TD307MK3は単独(1本単位で購入可能)での販売のほか、TD307MK3を5台とサブウーファーの「TD316MK2」をセットにしたサラウンド再生用パッケージ「TD307THMK3」(24万7500円/セット)もある。先にネタバレしてしまうが、このシステムは強烈にいい。サラウンド空間の再現力では、大型スピーカーによるシステムさえ超えてしまうと思うほどだ。このシステムを基本にTD307MK3を追加して、ドルビーアトモスなどの5.1.2ch構成へのグレードアップもしやすい。ステレオ再生での実力は後のページで紹介するが、ホームシアターとしてもかなり有力なモデルである。

[試聴曲1] YOASOBI/怪物/優しい彗星(48kHz/24ビット FLAC)

 今回の試聴曲はYOASOBI。小説を音楽にするプロジェクトから誕生したユニットで、コンポーザーおよび楽曲の演奏をするAyaseとボーカルのikuraによる音楽ユニットだ。さまざまな小説を題材とした楽曲を提供し、デビュー曲となる「夜に駆ける」(原作小説は星野舞夜「タナトスの誘惑」)がYouTubeno再生回数で1億回を超えるなど、大きな注目を集めた。その後、映画やCMとのタイアップも数多く行った。筆者は例によってアニメ「BEASTERS」第2期のオープニングで曲の良さと作品の世界をきちんと描いた歌詞に注目し、今ではすっかり夢中だ。

 本作は純粋に「BEASTERS」を原作としたものではなく、原作者の板垣巴留が執筆した小説を原作としている。CD版のブックレットに収録されている原作小説を読んでみると、オープニングテーマの方の「自分の胸に自分の耳を押し当てて」は、TVシリーズでも描かれていた裏市へ向かう場面のレゴシの内面を書いたものだし、エンディングテーマの方の「獅子座流星群のままに」は、ルイとイブキの別れの場面を描いたものとなっている。特にエンディングのアニメーションはその場面を幻想的なタッチで描写しており、ふたりの友情と切なさを感じさせるものになっている。

 アニメソングはその作品のために制作されたオリジナル曲であることが理想だが、現在は多くがタイアップ曲となっている。アニメソングの人気を考えれば当然だと思うし、タイアップ曲でもアーティストがきちんと作品の世界観に合わせた曲を提供することも多いので、昭和末期にあった、作品と何の関係もない旬のアーティストの人気曲との組み合わせが耐えがたかった頃に比べれば良い時代になったと思う。だが、やはりきちんと原作に寄り添った楽曲を提供してくれることが理想であることは間違いなく、その点でもYOASOBIのコンセプトはアニメに限らず、映画などの主題歌としてはぴったりだ。

[試聴曲2] YOASOBI/THE BOOK(96kHz/24ビット FLAC)

 もう一枚は、YOAOBIのこれまでの主要な楽曲を集めた「THE BOOK」。「Epilogue」で始まって「アンコール」と続き、「Prologue」で終わるひねくれた構成も大好きだ。残念ながら原作小説のすべては読んでいないが、楽曲ごとに編曲や曲調のバラエティーが豊かで、短編集を読んだときのような味わいがある。

 試聴では、イクリプスのTD307MK3と、筆者の手持ちのスピーカーであるB&W 607で聴き、それぞれの印象の違いを比較しながら紹介している。再生機器はMac miniで再生ソフトはAudirvana Plus。D/AコンバーターはCHORDのHugo2で、パワーアンプのアキュフェーズA-46に直接アンバランス接続して聴いている(ボリューム調整はHugo2で行っている)。

試聴するスピーカー。左がB&W 607で、右がイクリプスTD307MK3。小型スピーカーと比べてもかなりサイズが小さい。デスクトップで使いたい人にも適している。

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