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『Vainglory』Android版配信開始 「コミュニティーに注力する」開発元インタビューを掲載

2015年07月03日 17時30分更新

 iOS版が先行リリースし、月間150万人のアクティブユーザーを獲得したという、スマホ向けのMOBA(マルチプレイヤー・オンライン・バトル・アリーナ)ゲーム『Vainglory』のAndroid版が、本日7月3日に配信開始されました。

 ダウンロードはこちら(iOS/Android

Vainglory

 ゲーム動画配信サービスの『Twitch』では2015年5月の1ヵ月間で、27万人の視聴者がVaingloryのゲームプレイを1300万分以上視聴したとのこと。これはVaingloryが、非常に競技性が高く、観戦の楽しさがあるゲームなためではないでしょうか。モバイル用のゲームとしてはこれまでにない楽しみ方をつくってくれそうです。
 さらに、世界大会を開催するにあたり、同社は4K対応の実況用デスクトップクライアントも開発。8つのカメラアングルを備え、試合中に複数のアングルを切り替えることができ、これまでの俯瞰的なアングルのみではなく、様々な角度から観戦できるようになります。

コミュニティー活動に注力していくVainglory

 Android版のリリースに合わせて、Super Evil Megacorpのメンバーにお話を聞くことができました。

Vainglory
↑Super Evil Megacorp アジア太平洋ジェネラルマネージャー YUN TAEWON(ユン・テウォン)氏。

――よろしくお願いします。まずは、Super Evil Megacorp(SEM)でのテウォンさんの役割を教えてください。

テウォン氏:アスキーに取材して貰えることは、小さい頃アスキーの雑誌を読んでいたのでとても光栄です。記事を読むと言うより写真を見て楽しんでいましたが(笑)。
 私は、アジア太平洋のジェネラルマネージャーを務めています。本社のカリフォルニア・サンマテオ外で雇われた初の従業員です。『Vainglory』を日本にもってきて、たくさんの人にプレイしていただくという以外にもいろいろと業務をもっています。例えば市場調査やPR活動、e-sportsを確立していきます。
 そしてVaingloryをその地域の特性や要件を吸い上げてカスタマイズし、開発するという任務があります。中国や韓国、日本に向けたビルド(製品)をつくるという方法もあるのですが、我々の基本的な考え方は“どこでも使える製品を開発する”ということです。例えば日本でユニークな製品があれば、それを世界中で実装できるようにする任務もあります。

――アジアの中でも日本は特殊な市場だと思いますが、どのように分析されていますか。

テウォン氏:どの国でも「自分の国は特殊だ」というのですが、それにしても日本は特殊です。以前私は欧米のパブリッシャーで働いていましたが、そのときも日本はなかなか参入できない市場でした。
 1999年、エレクトロニック・アーツに務めていたときは、MMORPG『ウルティマ オンライン』の担当者でした。アメリカで開発され、そこまで認知度があるタイトルではないと感じていましたが、なんと日本人プレイヤーが3分の1を占めていました。
 このときに、日本人プレイヤーは他の地域と比べて非常にクリエイティブだったことに驚きました。ウルティマ オンラインはサンドボックス型のゲームだったので、例えば城や家などをデコレーションすることができました。他の地域はPvPに集中していましたが、日本人プレイヤーはほかのプレイヤーには見せられないにもかかわらず、アイテムを使ってデコるプロセスを楽しんでいたことが非常に印象的でした。
 私だけで無くSEMのメンバーは日本のゲームで育ってきたので、自分達が開発したゲームを、日本のプレイヤーに遊んで貰うことが夢でもありました。それにより、日本のゲームコミュニティーに貢献できると思っています。

――私個人はMOBA(マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ)と言うゲームが大好きなのですが、日本人はPvPのような対人戦が嫌いな印象があります。VaingloryはまさにPvPに特化したゲームです。MMORPGも日本人ゲーマーにとってはコミュニケーションツールとしての役割が強かった。MOBAはMMORPGの対人戦部分を抽出したようなゲームですし、日本で本当に楽しんで貰えるのかどうか不安ではありませんか?

テウォン氏:私もそう思っていました。しかし、まず日本のゲーム市場が想像以上に大きく(こういうジャンルのゲームに興味をもつ人が多かったので)、Vaingloryのマーケット活動をそこまで力を入れていたわけではないのに、このゲームに“ワクワク感”をもっていたプレイヤーが信じられないぐらい多かったんです。
 さらに、日本のプレイヤーを見ていて印象的なのが、友達が2、3人集まってこのゲームについて話し合っていることです。コミュニケーションをしながら助け合っているということですね。

――このジャンルでは、PC用ですがRiot Games『League of Legends(LoL)』が有名です。すでに日本で遊んでいるプレイヤーもいますが、VaingloryにとってLoLがどのような影響を与えていると思いますか?

テウォン氏:LoLはMOBAというコンセプトを日本に紹介し、開放したタイトルだと思います。 Vaingloryは、こういった状況があり、LoLの土台に基づいて開発できたと思います。
 ただし、ご存じのようにPC向けに開発されたものですし、日本においてはPCゲームはかなりニッチな存在だと思います。VaingloryはLoLとは違うプラットフォーム(iOS/Android)で配信しているので、日本で多くの人が使っているデバイスで遊んで貰えるのではないかと思っています。
 また、LoLはオンラインコミュニティーについて、そこまで管理してこなかったと分析しています。2ちゃんねるのような【好き勝手に語り合う】場ができていたと思います。ですから、LoLがオンラインコミュニティーにどう取り組もうとしているのかは、私たちを含めてゲームメーカーは注視し、学ぶことが多いと思います。ただ、私たちSEMは、もっと積極的にコミュニティーに関与すべきだと思います。

――同意します。日本人は道を示してあげたほうがスムーズに進められる気質があると思います。それをメーカーが行ない、“ユーザーの近いところにいる”ことはとても喜ばれると思います。

テウォン氏:まさにそれをやろうというところです。

――日本人プレイヤーからのリクエストがあると思いますが、機かさて貰えることはありますか?

テウォン氏:まずは、「(対戦中に)日本語チャット」がしたいという意見ですね。ほかには、日本向けのヒーローの実装や、「“?”マークを無くして欲しい!」という声もありました

――“?”マークは、“煽り”に使われているからですね。

テウォン氏:日本語でチャットできなかったので、プレイイングに不満を言うことができず、代わりに“?”が使われているんですね。

――最も求められているのは、ヒーローの追加ではないかと思います。当初の計画から追加されるペースは遅れていたりしないのでしょうか?

テウォン氏:ヒーローの追加について、考えるべき事が2つあります。今ヒーローが何体いるのか、どのくらいのペースでリリースするのか、です。
 現在15体おり、次のアップデートで16体に、理想は最終的に25体くらいと考えていますので、現在の状況ではやや少ないとも言えますね。
リリースサイクルについては現状では満足しています。たくさんのヒーローを一気にリリースするのは弊害があると思います。今は1ヵ月に1回程度アップデートしていますが、メタゲーム自体をごっそり変えたりしていますし、現在存在するヒーローのバランスも変えています。2、3体一気に追加するより、1体ずつのほうがユーザーエクスペリエンスが良いのではないかと思います。

――ヒーローと対戦するソロ用のBot(AI)戦が欲しいという意見はありませんか?

テウォン氏:日本だけでなく多くの国からそういったリクエストがありますね。今まではコアゲーム部分をとにかく安定化することに注力しており、新しい機能の開発は行なっていませんでしたが、前回のアップデートでBot戦を用意しました。7月1週にリリース予定のアップデートで、ランク戦とカジュアル戦をリリースします。カジュアル戦は勝敗が成績に影響しない、純粋にゲームを楽しむものです。将来的にAIのヒーローと対戦する個人戦を用意したいのですが、やはりプレイヤー対プレイヤーの戦いがのゲームが核となるコンセプトなので、カジュアルモードでPvPに慣れて欲しいと思います。

――ビルドを試すときなどには、ミニオンだけだともの足りないですよね。

テウォン氏:そうですね。

――Android版がリリースされますが、1.6アップデートはこれに合わせたのでしょうか。

テウォン氏:iOSはすでにリリースしていますが、これはコアゲーム向けのものです。SEMとしてはAndroid版をもってVaingloryの正式リリースしており、機能面で完全になったと考えています。

――iOS版とAndroid版で機能面に違いはありますか?

テウォン氏:クロスプラットフォームで遊べるゲームですので同じです。iOSプレイヤーとAndroidプレイヤーが対戦できます。機能面で違いはありません。

――このゲームが注目されたきっかけは、WWDCで発表されたiOS 8のグラフィックAPI“Metal”のデモとして使われたことだと思います。Androidでは当然利用できないわけですが、その影響はあるのでしょうか。

テウォン氏:影響はありませんが、どのAndroid端末を使うかによって多少なりとも違いが出てくるかとは思います。
 iOSに搭載されているMetalはゲームのグラフィックを美しく見せる機能です。しかし、Androidのハイエンド機はiPhone 6より性能が上だと考えていますので、素晴らしいグラフィックが実現できるのでは無いかと思いもっています。我々に取ってのメリットとしては、このゲームはオリジナルのゲームエンジンを使用しているので、カスタマイズできるので、ハードウェアのスペックが高くなればなるほど、Vaingloryのパフォーマンスも高くなります。

――Androidのリリースでユーザー層が多くなることでしょう。しかし、Android端末の問題点として、メーカーごとにスペックの差があり、カスタマイズされているが故に、アプリによっては不安定になってしまいます。こういったPvPゲームは、ミリ秒の遅延でも致命的な結果になるので、特に安価な端末を使用しているアジア地域などでは、快適に遊べないのではないか、という不安があります。

テウォン氏:その通りだと思いますが、どのOSでもサポートできる限界がありますよね。VaingloryはiPhone 3では動きません。同じことがAndroidでも言えます。なぜAndroidの下位機種をサポートしないのか、という議論によくなるのですが、どんなゲームエンジンをもってしても、Vaingloryのような3Dグラフィックを重視したゲームになると、ある程度のスペックの端末でないとサポートされない、というのが現状です。Android機であれば、直近2年に発売されたものであれば動作できるはずです。
 このゲームは長い目で見ます。SEMはほかのメーカーと違って、2、3ヵ月で成績をださなければいけない、ということではなく、フランチャイズとして育てていきたい、だから(ハイエンド機が必要になるような仕様でも)妥協したくないのです。
 またミリ秒の遅延が影響するという懸念ですが、カジュアルなプレイヤーは気にならないでしょう。負けず嫌いの(競技目的な)プレイヤーなら、iPad Air 2がオススメですね(笑)。

――それでは、最後に今後のプランを教えて下さい。

テウォン氏:コミュニティー活動にフォーカスしたいと思っています。ユーザーと協力して、もっとゲームを楽しんで貰えるように、ニコニコ動画の配信者とも協力、戦略面でのアドバイスもしたいと思います。イベントにも協力したいですね。

『Vainglory』ってどんなゲーム?

 いわゆる“MOBA(マルチプレイ オンライン バトルアリーナ)”というゲームジャンルで、2014年11月に北米でリリースされてから各国で次々にリリースされ、人気に火が付き、eスポーツ競技として確率されました。日本でも2015年4月にリリースされています。さらに『Vainglory』の魅力が知りたい人はこちらの記事もご覧ください。

Vainglory Gameplay Trailer

“バージョン1.6”では何が変わるの?

 配信されたバージョン1.6では、新機能と新コンテンツが追加されるとのことです。以下、リリースより転載。

Android サポート:Vainglory は100%クロスプラットフォームです。つまり、iOSとAndroidのプレイヤーは互いに対戦し、フレンド追加ができます。Android端末は 150機種以上がサポートされています。
カジュアル試合/ランク試合:ゲームを楽しみたいプレイヤーがカジュアルに遊べる対戦(カジュアルキュー)と、競争が激しく、スキル階層の栄光を競い合う対戦(ランクキュー)が分けられます。ランクキューはいくつかの必須条件をクリアしたプレイヤーのみが参加可能で、同じような志を持った、経験豊富で熱心なプレイヤー同士がマッチングされるようになります。
新ヒーロー:新ヒーローのロナはいつでも戦闘に飛び込める恐ろしいバーサーカー(猛戦士)です。彼女は乱戦で引けを取らず、出くわした敵全てに絶大なダメージを与えます。
画期的なスキンシステム:全てのヒーローに、外見と視覚効果を変える3レベルのスキンを今後実装する予定です。レベルが上がるごとにスキンは精巧かつ意外なものとなり、試合の内外でプレイヤーのモチベーションとなります。スキンの第一レベルは『Vainglory』の課金通貨であるICEを利用してアンロックできますが、それ以降は試合後にランダムで付与されるカードを揃えることが必要です。また、本アップデートによってICEまたはプレイすることで得られる通貨グローリーでカードパックが購入可能となります。
充実したチュートリアル動画、新しくなったアカデミー、練習用AIボット:新しいプレイヤーは30本の動画を含む「アカデミー」でゲームの基本を学ぶことができます。また、プレイヤー同士で対戦する前にシンプルなAIボットを相手にチームメイトと組んでプレイすることで、戦略やチームワークを磨くことができます。

『Vainglory(ベイングローリー)』
●Super Evil Megacorp ●無料(ゲーム内課金あり)
●動作端末 iPad Air、Retina ディスプレイ iPad mini、Retina ディスプレイ iPad、iPad 2(30+fps)、iPhone 5s、iPhone 6、iPhone 6 Plus
●対応OS iOS 6.1以上(iPad)、iOS 8.0(iPhone)、Android版は7月3日配信予定

(C) 2014 SUPER EVIL MEGACORP. ALL RIGHTS RESERVED. 

■関連サイト
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