iOS8から対応する、アップルの新しい3Dグラフィック描写API「Metal」。その新技術の解説と、アプリ開発者が気になるUnreal Engine、Unity、Cocos2d-xの3つの主要ゲームエンジンでの対応状況についてまとめた。
iPhone6/6 Plusの発表となったアップルのスペシャルイベントでも「Metal」はフィーチャーされた |
Unreal Engine、Unity、Cocos2d-Xとは?
iOSでのゲームアプリなどを開発できる、ゲームエンジン(またはゲームフレームワーク)。マルチプラットフォーム対応で、iOS/Android/Windowsなど複数のデバイス向けに同時に開発できるのが特徴だ
A8の性能を最大限に引き出す、3DグラフィックAPI
Metalは、さまざまなハードウェアに対応するOpenGLと違って、アップルのCPUに最適化されており、家庭用ゲーム機並みの描画を表示できるというAPI。iPhone5sなどが搭載するApple A7 はもちろん、iPhone6/6 Plusが搭載するA8の性能も最大限に引き出してくれるのが特徴だ。9月9日に行われたアップルのスペシャルイベントでは、スーパーエヴィルメガスコープス社の「VINE GLORY」がその技術を披露。米ゲームロフト社の「アスファルト8:Airborne」なども、アップデートでその技術に対応している。
3Dのグラフィックスを表示するには、OpenGLを使用するのが一般的。Metalはそのような汎用性のあるAPIと違って、アップルのCPUに最適化され超美麗なグラフィックを再現する |
iPhone 6/6 Plusで採用されている最新のApple A8は、CPUやGPUの性能がさらにアップ。電力の消費も効率よくなった。当然、Metalにおいても、その恩恵は期待できる |
iPhone6/6 Plus発表イベントで公開された「VINE GLORY」のデモより。これは独自に開発したゲームエンジン「E.V.I.L engine」を採用したMOBA(マルチプレイヤー オンラインバトル アリーナ)で、光の表現など3Dの美しい描写はMetalならでは |
ゲームロフト社の「アスファルト8:Airborne」など2作品がアップデートでMetalに対応。グラフィックとリアルタイムエフェクトが飛躍的に向上し、よりエキサイティングなプレーが楽しめるようになった |
Unreal Engineの「Metal」対応状況
「Infinity Blade」など、美しいグラフィックのアプリ開発でおなじみの、エピック・ゲームズ社のUnreal Engine。エピック・ゲームズ・ジャパン代表の河崎高之氏にMetalへの対応について伺ってみたところ「Unreal Engine 4のサブスクリプション版では、バージョン4.5から使用できるようになっております」とのこと。
すでにMetal技術を駆使した自社アプリ「Epic Zen Garden」をAppStoreでリリースしており、「Metalの機能により、非常に低いCPU負荷で、とても細かく描かれたシーンを作り出すことができます。これによって、数千個ものオブジェクトをワールド内に放り込んでも、高いフレームレートをキープすることが可能」(河崎氏)とのことだ。
またOpenGL ESと比較すると、より少ないバッテリー消費となるようで、「Unreal Engine 4の高品質なグラフィックと非常に使いやすいツールセットにより、息をのむようなモバイル エクスペリエンスを生み出すことができる」とアピールした。
平穏と静けさに満ちた庭園を散策し、さまざまなインタラクティブ要素を体験することができる 「Epic Zen Garden」。桜の木の枝をタッチすると、花を咲かせることも可能だ |
Unityの「Metal」対応状況
iPhoneやAndroidなど、さまざまなスマホアプリの統合開発環境ツールとしておなじみの「Unity」。
ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン日本担当ディレクターの大前弘樹氏によると、「近くリリースされる新バージョンのUnity 5.0で、Metalでのレンダリングをサポートする」とのこと。Metalの効果でドローコールのオーバーヘッドが劇的に減るようで、たくさんの描画を行うことができるようになる。
そのほか、「私たちのテストでは、これまではAPIとドライバーによるオーバーヘッドはCPUタイムの15~40%かかっていたのが、Metalの効果でほんの数%にまで減りました。これはつまり、同じ負荷でより高精細に描けるということです」(大前氏)と、Metal技術のメリットは大きいようだ。
MetalはUnity 5.0でサポートするとのこと。リリース時期は現状未定だが、すでに予約スタート |
Cocos2d-xの「Metal」対応状況
最後に、2Dのスマホアプリ開発でおなじみのフレームワーク「Cocos2d-x」。開発元のチュコンテクノロジーズのZhe Wang氏によると「2015年に、Metalに対応する予定」とのこと。詳しい時期や導入方法については未定だが、こちらも期待できそうだ。
Cocos2d-xでは2015年にMetal対応予定。ウェブサイトなどで続報を待とう |
さて、9月29日発売予定の『MacPeople 11月号』の第1特集「iPhone 6/6 Plusの全貌」では、新型iPhoneのハードウェアや新機能、iOS 8の利用ガイド、さらにはApple Watch、Apple Payといったアップルの新ビジネスまで、100ページ近い大ボリュームで紹介。iPhone 6/6 Plusを既に買った人にも、これから購入を考えている人にも、きっと役に立つこと間違いなしだ。
また、第2特集の「サーバーアプリを作ろう」では、手軽にサーバーを導入できる「MBaaS」サービスについて解説。サーバー選びの基本からサービス徹底比較、いますぐ始められるサーバー実装入門まで盛りだくさんの内容でお届け。そのほか「3時間でUnity」「Cocos2d-xプログラミング講座」などのアプリ開発者のための連載もあるので、お楽しみに。
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