話題のスマホゲームのクリエイターとスクウェア・エニックス安藤武博氏が対談する連載『召喚★アプリ神(ゴッド)』。週刊アスキー本誌で掲載しきれなかったインタビュー内容を3回に分けて掲載します。
第12回はミクシィ『モンスターストライク(モンスト)』の木村弘毅さんを召喚!
『モンスターストライク』
↑ボール状のモンスターを引っ張って敵にぶつける、というシンプルな仕組みながら歯ごたえのある難易度、そして近くの友達と最大4人でワイワイ楽しめるマルチプレイがウリ。“ゴジラ”や“ドラえもん”といった有名作品とのコラボでも話題を呼んでいる。 |
↑ミクシィ モンストスタジオ プロデューサー 木村弘毅氏。 |
■マーケティング理論からモンストが生まれた!?
安藤武博(以下、安藤):今回は前から会いたくてずっとラブコールを送っていた、『モンスターストライク(以下、モンスト)』の木村さんの召喚に成功いたしました。
木村弘毅(以下、木村):よろしくお願いします。安藤さんとは同い年だから敬語で話そうかタメ口で話そうか迷うんですよ。
安藤:じゃあ今回は、お互いにタメ口で行きますか(笑)。ではあらためて!モンストは今や国民的タイトルになったけど、始まってからまだ2年も経っていないんだよね。
木村:うん、1年半くらいかな。
安藤:怒濤の1年半だったと思うけど、振り返ってどう?
木村:あっという間だったけど、逆に10年くらい経ったようにも感じるよ。
安藤:長く感じた理由って、どんなところだろうね。
木村:新しいことを常にやっていて、まずゲームを社内で作るのも初めてだったし、それこそキャラクターやステージのデータを打つのから始めたんだ。ゲームのテレビCMを作ったのも初めてなら、YouTubeに新卒3年目ぐらいのスタッフを出演させてみたり、玩具もつくったりした。高校野球とかで、勝ち上がっていく間にどんどん成長して強くなっていく、そんな感じだった。
安藤:走りながら成長していったんだね、すごい濃い時間だね。ゲームはこれがデビュー作になるの?
木村:そう、モンストが初めて。なぜゲームづくりを勉強したかというと、mixiアプリやmixiゲームをやっていた時に、何百社ものSAPさんと会話をしてやりあえなきゃだめだなと思って勉強したんだ。理解したら、SAPさんに「何でこれができないんですか?」って言えるようになったし、そのうち自分で作ろうって考えるようになった。
安藤:それが最初のきっかけなんだ。ゲームを自分でつくろうと思ってパートナーを探したのか、概念と意思があって詳しい部分はデベロッパーと一緒に詰めるつもりだったのか、ゲームをつくるときはどんなふうに進めていこうと思っていたの? 制作に関してどんなビジョンがあったのかを教えてほしいな。
木村:僕はマーケティング出身の人間なので、マーケティングミックス戦略をまずつくる。カスタマーバリューとかカスタマーコストとか、コミニュケーションとかね。
安藤:すごいな、まずそこからなんだ。僕と全然違う(笑)。
木村:フレームワーク大好きオジサンだから(笑)。その中で、まずカスタマーコスト。ゲームって実は学習するコストがものすごく高い。それが足かせになって、たとえば映画なんかと比べると、触れてみようと思う人が少ないと思うんだよね。映画は見ているだけで楽しめるけど、ゲームにはインタラクションを求められる。そのあたりのハードルを下げようと思っていた。
安藤:なるほど。
木村:カスタマーバリューに関しては、とにかく皆で集まってワイワイ遊べるものじゃないとダメだと。それって何だろうという話を社内でして、「命をかけてハンティングするのって楽しいよね」という結論になった。ドキドキハラハラもあって、勝つか負けるかもはっきりしている。やられたらストレスだけれど、勝てばスッキリする。そういうゲームをつくろうと。ただ操作が難しいと遊べない人も出てくるので、アクションRPGをどこまで抽象化できるかを考えて、最初にプランナーから上がってきたのがビリヤードみたいなゲームだったんだ。
安藤:もう、そこまではあったんだね。
木村:ポケットがあって敵がいて、敵に当てるかポケットに落としたら勝ち。でもルールが2つあってわかりにくいから、全部モンスターに集約させた。
安藤:おっ。ポケットをなくした瞬間、モンストになったね!
木村:アクション部分をつくってくれるところを探していたんだけど、それが岡本吉起さんの会社だったんですよ。岡本さんはアーケード出身だから一瞬でやり方がわかるゲームをつくるし、2人ともチュートリアルが大嫌いだったりいろいろな共通点があって、意気投合してモンストが始まったんだ。
↑木村氏が語るように、マルチプレイが本作のキモ。スマホを持ち寄ってみんなでワイ ワイ楽しむという特徴をCMでアピールし、新規ユーザーが爆発的に増えている。 |
■「勝算はあった」と言い切る木村式ゲーム制作論
安藤:モンストのチュートリアルってめっちゃあっさりしているよね。ステージひとつクリアで終わり。いかにチュートリアルが嫌いだといっても、もう少し説明が入ると思うんだけど、思い切って省いている。僕らのようなクリエーターからすると思いきりがよくて、すごくスカッとしているんだけど、あれはどういうコンセプトでつくったの?
木村:さっきのマーケティングミックスの話でいうとコミニュケーションプラン、どうやって宣伝していくかというところ。SNS mixi もそうだけど、面白いものって全部口コミで広がるし、モンストもわからないことがあったら友達に聞くんじゃない? という話になって。
安藤:そうか、その時点でコミュニケーションが生まれるもんね。だからあえてワンステップ増やしたわけだ。面白いね。
木村:でも昔のファミコンやアーケードのゲームって、チュートリアルはないじゃない。
安藤:友達が遊んでいるのを見て覚えたり、聞いたりしたよね。
木村:今はネットにWikiもあるし、面倒くさがりな人は人に聞くと思うし。そこで新しい発見があったり、裏仕様があったなんてわかるとワクワクできるし、深みも感じてもらえるかなって。だからあえて説明しないって決めたんだ。
安藤:結果何とかなっているし、突き放しているようにも見えるけど、コミニュケーションを促進させるためというのは、すごく納得できるね。
あとモンストって、ゲーセンぽいなって思うんだ。ボスを倒してクリアした時、タップしてお金を拾うでしょう。古きアーケードゲームにも、ボスを倒すとそれが宝石になって、みんなで取り合うなんていうのがあった。
木村:そうだったね。
安藤:ギミックもただ普通に当てるものじゃなくて、ちゃんとキャラクターとしてつくられているところもゲーセンっぽい。やっぱりそれは、2人がゲームセンターが好きだったからかもね。
木村:うん、そうかもね。実はこないだ、僕のベストゲームを3つ挙げたときに、まず挙げたのは『ストリートファイターII(以下、ストII)』。僕は大学の時にストIIにはまっていて、アップライト筐体が自分の部屋にあったんだよ。
安藤:大学の時に買ったの?
木村:そう。流行っていたのは高校生の時だけど、大好きすぎて筐体を買って日本一になろうって思ってた。みんなで遊ぶ『モンスターハンター(以下、モンハン)』も好きだし、対戦で超絶に運と実力のスキルのバランスがいい『Catan(カタン)』も好き。それって全部、岡本さんがなにかしら関わったゲームなんだよね。
安藤:本当だ。その3本のいいところが、全部モンストに活きているし、運命的だね。
木村:うん。自分があこがれた人と一緒にゲームをつくることができてラッキーだったし、ミクシィ社の業績も厳しい時期だったし。
安藤:ピンチの状況からヒット作が生まれることって多いよね。たとえば『ファイナルファンタジー』も、これがハズれたらゲームから手を引くという意味でファイナルとつけたわけだしね。
↑スクウェア・エニックス安藤武博氏。 |
※この対談は2015年4月に行なわれたものです。
■関連サイト
・モンスターストライク
(C)mixi
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