前評判どおりコンピューター将棋を熟知している西尾六段が決戦へ
9月23日にニコファーレにて、プロ棋士とコンピューター将棋ソフトがタッグを組んでトーナメントを行なう電王戦タッグマッチ2014のBブロックが行なわれた。優勝したのは西尾明六段&ponanzaタッグ。西尾六段はコンピューター将棋ソフトをこよなく愛し日々利用している棋士で、ponanzaの好きな戦型や特徴もかなり掴んでおり、自分の意見とponanzaの意見をうまく合わせて戦い抜いた感じだ。
20日に行なわれたAブロックでは、読み筋が見えないなどのトラブルがあったが、今回は1度きり。どの対局も比較的スムーズに進んだので20時半過ぎには終了した。
開始前に、棋士が使用しているタブレットの画面と操作を解説。 |
大盤解説の渡辺二冠は、今年の電王戦第5局の棋譜を例に棋士が読んだ手の調べ方を説明していた。 |
第1局は、▲船江恒平五段&ツツカナタッグ vs. △菅井竜也五段&習甦タッグ。船江五段はツツカナと去年戦い、それ以来ツツカナでいろいろと研究しているようだ。対する菅井五段は、今年習甦と電王戦で対局し負け、リベンジでも負けてしまったが、そのぶん習甦のことは熟知している模様。習甦の特性を掴んでおり「習甦は攻めるのが上手なので、うまく攻めの形をつくってあとは習甦に任せる」と感想戦で述べるほど、後半の習甦の攻めに信頼している様子だった。勝負は中盤から徐々に差を広げていった菅井五段が、そのまま押し切った。
ツツカナのことは熟知している船江五段だが、菅井五段のほうがうまく指したようだ。 |
第2局は、▲西尾明六段&ponanzaタッグ vs. △佐藤紳哉六段&やねうら王タッグ。序盤から時間を使った佐藤六段に対し、西尾六段はあまり時間を消費せずほぼ互角に指し進めたが、中盤から終盤にかけて徐々に評価値で差を広げていった西尾六段が勝利。佐藤六段は、今年の電王戦のときにも見せていた苦悶の表情をして、タブレットも操作しつつ指していたが、コンピューター将棋好きの西尾六段のほうが一枚上のような雰囲気だった。
大盤解説は豊川七段が。いつもどおりダジャレをふんだんに盛り込んで、会場を沸かせた。 |
佐藤紳哉六段は、電王戦のときに見せた、苦悶の表情で盤面を見つめていたが、難しい局面だったようで、切れ負けルールにもかかわらず序盤からかなり時間を使っていた。 |
西尾六段は、タブレットの操作も難なくこなし、ponanzaと調和していた。 |
会場の両サイドには表情のアップと脳波の測定結果が表示されるが、評価値以上に劣勢に見える佐藤紳哉六段。
第3局は、▲菅井竜也五段&習甦タッグ vs. △阿部光瑠四段・YSSタッグ。阿部四段は2013年に習甦に勝っているが、今回はYSSとのタッグ。YSSの特徴をあまり熟知していないためか、終始マイナス評価のまま進み、どんどん差を広げられて指し切られてしまった。阿部四段も習甦だったらもう少し違った局面になっていたかもしれない。菅井五段は、第1局と同様「攻めの形をつくって習甦に任せる」を徹底していたようだ。
阿部四段は、昨年の電王戦で習甦と対局したときとは違い、習甦+棋士の読みも加わるとうまくいかなかったようだ。 |
菅井五段は、習甦にお任せとは言っているものの、習甦の手に自信がないときは、自分の読みで進めている。 |
渡辺二冠が解説していたが、読みもするどく歯に衣着せぬ発言は聞いているだけでおもしろい。 |
第4局は、▲菅井竜也五段&習甦タッグ vs. △西尾明六段&ponanzaタッグ。序盤、菅井五段が居飛車か振り飛車か、大盤解説の佐藤六段と船江五段が話題にしていたが、角換わりの戦型になり居飛車を選択。感想戦で菅井五段は「振り飛車にしたかった」と語ったが、今回の局面では無理だったようだ。かなり難解な局面が続いたが、差がついたのは菅井五段が信頼していた攻めの習甦の指し手ではなく、自分の考えで指した手。信習甦を頼しているものの、短時間では良い手かどうか判断できなかったらしい。最後は評価値が振りきれて詰みが見つかった状態になり、すでに30秒将棋だった西尾六段が、一手一手考えながら慎重に指して勝利した。
かなり難解な展開で、評価値的には西尾六段のほうが高めだったが、菅井五段にもチャンスはあったと思う。 |
前半は佐藤紳哉六段と船江五段が解説。 |
この日の解説は、渡辺明二冠と豊川孝弘七段。ふたりともおもしろく軽快で、渡辺二冠は「コンピューター将棋の台頭により人生設計が狂った」と冗談まじりに述べていたが、これからはどこまでもコンピューター将棋がついてまわるからいろいろと大変だと考えているようだ。
豊川七段は、ダジャレをふんだんに入れて会場の笑いを誘っていたが、対局している棋士にとっては、集中するのが難しいらしく、佐藤六段は「抽選で豊川七段が解説になるときを避けたかったけど、最後だったので選べなかった」と語るほど。ふだんの対局は静かなところで指すだけに、このタッグマッチでは外野の音を気にすることなく、いかに集中できるかが鍵となるかもしれない。
ponanzaは、手数はかかるが、だんだんだんだん押さえつけて行くような指し手が得意。それを活かして戦っていると西尾六段は語っていた。 |
優勝した西尾六段&pononzaタッグは、10月12日に行なわれファイナルラウンドに進出。Aブロック優勝の森下卓九段&ツツカナタッグとシードの佐藤慎一四段&ponanza 2013年ver.タッグ、久保利明九段&習甦タッグが優勝を目指して戦うことになる。もちろん、ニコ生で中継し、最後に来年の電王戦ファイナルの出場棋士も発表されるので、お見逃しなく!
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