サムスンは韓国ソウルにて『2014 Samsung SSD Global Summit』を開催。新製品『Samsung SSD 850 PRO』でコンシューマー向けSSDとしては世界で初めて採用される、NANDフラッシュの新規格”3D V-NAND“についてのプレゼンテーションが行なわれた。
これまでSSDの容量を増やすには、単位面積あたりの集積率を上げる方法が主流だった。半導体上の配線の幅、すなわち“プロセスルール”を微細化することで、メモリーセルの面積を小さくしていた。現在NANDで用いられているプロセスルールは“1x nm世代”が19nm前後で”1y nm世代”が16nm前後、“1z nm世代”が10nm前半だが、微細化が限界に近づくとともに、細かくなることでセル間の干渉し、データが衝突するという問題も起きている。これを解決するためには多くの研究と開発費用が必要となり、コストに見合わなくなるという。
そこでサムスンでは、2013年に24層に積み重なった3D V-NANDを製品化した。2D Planaer(平面) NANDを“一戸建ての住宅”に、3D V(Virtical)-NANDを“高層ビル”に見立て、一戸建て住宅は家を小さくしてたくさん並べるしかなかったが、高層ビルなら敷地面積はそのままに、垂直方向に積み上げることで入居数を増やせる、と解説した。発表会では3D V-NANDは30nm台のプロセスルールを使用していると述べた。これにより、微細化することで起こる干渉が防げ、信頼性が向上するというメリットがある。
↑3D V-NANDのウェハーが展示されていた。 |
単純に容量が増加することも期待できる。2D Planer NANDでは1チップあたり256Gbitが限界と予測されているが、3D V-NANDであれば、2017年には1Tbitも可能だという。今後、歩留まりが上がり価格が下がっていくことで、旧世代の容量128GB並みの値段で容量256GB、といった製品が実現できる。
ベンチマークを掲載した、850 PROの具体的な情報も発表された。
前モデルの840 PROから32層の3D V-NANDや『840 EVO』と同じ3コアのMEXコントローラーに変更、最大1GBのDRAMという仕様で、7月21日から出荷が開始される。日本では7月後半から8月後半になるとのこと。
価格は米ドルで128GB 129.99ドル、256GB 199.99ドル、512GB 399.99ドル、1TB 699.99ドルとなっている。ちなみに、840 PROが発表されたときの価格は256GB 269.99ドル、512GB 599.99ドルだったため、大幅に値下がりしている。
性能面では順次書き込み速度は128GBモデルが20%向上したり、すべてのキューデプス(QD)で向上するなど、現状で最速レベルとなっている。ただし、既存のSSDと同様にSATA3接続の限界速度まで達しつつあるため、体感的な速度の向上を感じにくいのは致し方が無いところだ。
消費電力について、一般ユーザーの場合、SSDはアイドル時が90%でアクティブ時が10%という使われ方をしているという。これが業務で使用したた場合は、70%:30%になる。アイドル時の消費電力は840 PROの時点でほぼ目標値に達成しており、850 PROでもほぼ変わらない。一方でアクティブ時は最大38%下がっている。
また、スリープ時の消費電力は、840 PROの10mWから850 PROは2mWに下げ、ウルトラブックなどでバッテリー駆動時間を伸ばす仕組みの、インテルの超低電スリープモード“devslp”にも対応した。
ユーザーにとってもっとも大きなメリットになるのは、保証期間が10年になったことかもしれない。書き換え可能容量(TBW)が150TBとなり、これは840 PROの73TBの約2倍で、1日あたり40GBの書き込みで10年もつ計算だ。自社での耐久テストでは、830が1000TB、840 PROが3000TBで、850 PROは現在計測中だが、2ヵ月半で1300TBを超えていることを確認しているとのこと。
高速化技術RAPIDモードはバージョンアップされ、キャッシュとして使用するメインメモリー量が1GBから搭載するメインメモリーの25%(8GBなら2GB)使用可能になる。
発表会ではデータセンター向けの2モデルも発表した。『845DC EVO』は3bit MLC NANDを採用し、動画配信サイトなど主に読み込み中心の用途向けで、『845DC PRO』は3D V-NANDを採用した、安定して読み書きのパフォーマンスを求められるデータセンターなど向けとしている。
なお、昨今話題のM.2タイプのコンシューマー向け製品については具体的な発表はなかった。データセンター向けには『SM953』といった製品もある。今後、3D V-NANDを採用し、SATA3以上の速度をもつコンシューマー向けM.2製品が登場することに期待したい。
↑最大読み込み速度が毎秒1.8GBという、内部PCI-E接続タイプのM.2 SSD『SM953』。 |
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