今年3月から4月にかけて行なわれた第3回将棋電王戦。プロ棋士とコンピューターソフトとの戦いは、各種メディアで取り上げられ、将棋のことをあまり知らなくても耳にした人は多いはずだ。回を重ねるごとにその規模を拡大し、今回は両国国技館など場違いな所で対局したり、電王手くんという将棋を指すロボットまで登場させ、ニコ生で放送された視聴者数は最終局でとうとう70万人を超えるものになった。
そんな将棋電王戦を第1回から週アス編集部デスクである私、いーじまが、ずっと追いかけ続けており、そのレポートはこの週アスPLUSなどで記事化してきた。そこから見えてきたのは、プロ棋士の意識の変化だ。コンピューターに勝つために奇策をとったり、あまり人間が指さない手はコンピューターらしい手として評価しなかったりしたのが、真っ向勝負で挑んだり、勝つ確率を上げるために研究したり、コンピューターの指し手を高く評価するようになった。さらに、コンピューターと戦うことで、自分の棋力が上がっているという棋士も多い。特に第3回の第4局の対局者である森下九段は、この電王戦を戦うことで、棋力向上だけでなく、将棋に対する姿勢が昔のように前向きになり、先日のNHK杯では広瀬章人八段に勝利するなど、最近の活躍には目を見張るものがある。
来年、おそらく第4回が開催されると思うが、勝敗に関しては、これまでのところプロ棋士側が2勝しかしていない苦しい展開だ。ただ、1局1局の戦いは超接戦で、どちらに転んでもおかしくない戦いが多い。第3回で興味を持った人はもちろん、これまで見てきてもう一度あのときの戦いを振り返ってみたいなという人、そんなすごい人間対コンピューターの死闘があったのかと興味をもった人、ぜひこの週刊アスキー・ワンテーマ『将棋電王戦の軌跡 ~コンピューターが新たな定跡を生み出す日~』をお買い求めくださいませ。
この本は、これまで週アスPLUSや週アス誌面に掲載した記事を加筆・編集したものです。第1回や第2回は、山崎バニラさんの観戦記や米長永世棋聖へのインタビュー記事も収録しているので、正直かなりのボリューム。第1回から第3回の戦いを振り返るには非常にお得感のある一冊でしょう。私も編集していて、忘れかけていた過去の戦いが思い返され、まだ2年しか経っていないのにいろいろなことがあったなぁと感慨に浸りました。電子書籍のみの販売なので、お間違いのないよう。
↑第1回の発表会での写真。このときは原宿にあったニコニコ本社で行なわれた。あの煽りPVはこのころから健在。 |
↑第2回に向けての勉強会の様子。コンピューターはどのように最善手を導き出すのか教わっていたが、それよりは棋士どうしの意見交換の場というほうが強かった。 |
↑第3回では安倍首相が振り駒をするなど、そのスケールはこれまでの2回をはるかに凌ぐ。会場も有明コロシアムや小田原城など、凝りに凝った。 |
↑電王手くんの登場は、コンピューターとの戦いを印象づける非常に良い演出。コンピューターの指し手をもとにすべて自動で動いていた。 |
↑電王手くんを開発するにあたって、シミュレーションを行なったソフトの画面。今回は短期間の開発だったが、次回は更にパワーアップして登場するかも!? |
■目次
第3回将棋電王戦
サトシン参戦に場内興奮!! 出場プロ棋士5人が決定!!
安倍総理が振り駒!! 今回の対局はスケールが違う!
第1局 ▲菅井竜也五段×△習甦
第2局 △佐藤紳哉六段×▲やねうら王
第3局 ▲豊島将之七段×△YSS
第4局 △森下卓九段×▲ツツカナ
第5局 ▲屋敷伸之九段×△Ponanza
【コラム】将棋電王戦で大人気だった電王手くん・ここだけの開発秘話
第1回将棋電王戦
2012年、人間対コンピューター将棋の本格的な戦いが始まる
決戦直前! △米長永世棋聖×▲ボンクラーズの将棋電王戦両者の思い
第1回電王戦観戦記 ほかではあまり語られない舞台裏
【コラム】人に勝つプログラムの秘密
第2回将棋電王戦
A級棋士も登場!! 人間対コンピューター将棋の運命は?
本番直前、プロ棋士たちの勉強会に潜入
第1局 ▲阿部光瑠四段×△習甦
第2局 △佐藤慎一四段×▲ponanza
第3局 ▲船江恒平五段×△ツツカナ
第4局 △塚田泰明九段×▲Puella α
第5局 ▲三浦弘行八段×△GPS将棋
【コラム】羽生善治三冠が語る対コンピューター将棋論
あとがき
※段位や獲得中タイトル、肩書は取材当時のものです。
書名 将棋電王戦の軌跡 ~コンピューターが新たな定跡を生み出す日~ 週刊アスキー・ワンテーマ
編集 週刊アスキー編集部
価格 278円(税別)
配信サイト BOOK☆WALKER、Kindleストア、楽天ブックスなど
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