今回、記事が長くなってしまったので、対局編と会見編に分けたで、ひと通りこちらを読んでから、会見編も御覧ください。
ponanzaも強かった!! プロ棋士側の1勝4敗で幕を閉じる
第3回将棋電王戦第五局の屋敷九段vs.Ponanzaの戦いは、130手まででPonanzaの勝利。団体戦の対戦成績はコンピューター側の4勝1敗に終わった。
この結果だけ聞くと、プロ棋士はもうコンピューターに勝てないんじゃないかと思われるかもしれない。しかし、一局一局熱戦につぐ熱戦で、どちらに勝敗が転んでもおかしくない展開だった。昨年末にリベンジマッチを行なった船江五段がツツカナに勝利したように、再戦すればまた違う結果が生まれるかもしれない。ただ、ひとつ言えるのは現在のコンピューター将棋ソフトは、トップ棋士と互角の勝負ができること。そして互角の勝負ができるからこそ、電王戦が注目され、通常の棋戦よりおもしろく感じられるのではないだろうか。
そんな最終戦を振り返っていこう。場所はお馴染みの千駄ヶ谷にある日本将棋会館。その特別対局室に例のセットを設置!! このセットはあべのハルカスのときと同じものだ。もともとこの特別対局室は、かなり狭い。報道陣が入るスペースもかなり限られる。そんな場所にこのセットを組んだから撮影するスペースを確保するのが大変だ。
↑山本氏からの目線。セットの上ではなく、床の間前のスペースに設置。
↑開始前のponanza設定画面。
もともと畳部屋なのにこのセットを組まなければならないのには理由がある。今回から登場した電王手くんの存在だ。この電王手くん、実は制御のコンピューターが床下に備え付けられている。そのため30センチほどかさ上げして、そこに仕込んでいるのだ。また、電王手くんをしっかり固定しなければならないのも理由のひとつ。なので、通常とは違い上座と下座の位置を逆にしてまで、このセットを組んでいるのである。
対局の模様はこちら。
棋譜はこちら。
いつもどおり10時対局開始。屋敷九段はスーツ姿。一方Ponanza開発者の山本氏は和服姿だ。Ponanzaは下山氏と共同開発だが、対局室には山本氏だけ。下山氏は控室にいた。先手は屋敷九段。初手は▲2六歩。後手のPonanzaは△8四歩と応じ、▲2五歩と突いて相掛かりの展開。15手目▲3四飛と横歩取り。△3三角と第三局でも見られた展開だ。その後、▲5八玉とし第三戦で話題となった△6二玉と指してきた。人間だとなかなか指しにくい手らしいが、今回は攻めこむことはなく、▲3六歩とした。
↑初手は▲2六歩。電王手くんのお辞儀のタイミングも合していた。
ニコファーレでの大盤解説は佐藤康光九段と深浦康市九段、聞き手は矢内理絵子女流五段が担当。現地レポーターは、第三局以外担当している藤田綾女流初段だ。開始前に電王手くん相手に少し指したらしく、緊張したそうだ。動き自体は余り気にならなかったようで、家に一台ほしいとのこと。誰か買ってあげてください。
↑対局している写真が紹介されていた。
現地中継では立会人の田丸昇九段が登場。
――前回と違ったことはありますか?
田丸九段「前回と同じ対局室ですが、まず電王手くんがいます。そして向きが違いますね。」
――今回は電王手くんが上座に座っていますね。
田丸九段「普通は、記録席は窓側なんですが、入口側にあります」
――対局場の雰囲気はいかがですか?
田丸九段「ずっと電王手くんの動きを見ていたんだけど、可愛らしいですね。なんか、トルネード投法をイメージしていました。」
――早い進行ですが、対局開始の屋敷九段はいかがでしたか?
田丸九段「最初ちょっと表情が硬かったけど、でも勝負師だからだんだん盤面に没入しているのでは。去年三浦八段(当時・現九段)がGPS将棋と指した時、GPS将棋は東大にある700台弱のマシンをつなげて戦いましたが、三浦八段は武蔵というあだ名があって、武蔵は吉岡一門の何百人もの人と決闘したことがあり、それを想像してしまいました」
――三浦八段は屋敷九段と関わり合いがあるそうで。
田丸九段「そうですね、前回三浦八段は名人戦の挑戦の可能性もあったので、もし三浦八段が挑戦することになれば、代わりに屋敷九段が出ると言われていたそうなんです。もともと二人は研究仲間で仲もよく、仇討ちというのもなんだけど、そういう思いがあると思います」
――局面ですが、相掛かりから横歩取りへの展開。
田丸九段「ありそうでないですね」
――第三局と似た6二玉と指してきて。
田丸九段「いろんな手があるんだということで、おもしろいですね」
――Ponanzaの手はいかがですか?
田丸九段「非常に決断力のいい手ですね。18年前の将棋年鑑にコンピューターソフトはプロ棋士に勝つときが来るのかというアンケートを取ったことがあるんですよ。1996年といえば羽生三冠(現在)が七冠を取った時代で、永遠にないと答える人もいれば、いつかは来ると答える人もいて、いろいろな意見があったけれど、羽生三冠はあると答え、その年を2015年と予想していたんです。森内竜王・名人は2010年と答えていました。実際には去年三浦八段を負かしているわけですが。屋敷九段も、勝つときが来ると答えていました。ただし、トップ棋士には勝てないだろうと言ってました。ちなみに、第1回の米長永世棋聖は、永遠にないと答えてました。最初に負けてしまいましたが。谷川会長は私が引退するまでないだろうと答えてました」
――どのあたりに注目してほしいですか?
田丸九段「よくコンピューターは感情がないとか、プロ棋士が勝ってもそれほどでもないからと、プロ棋士を擁護する人もいますが、もうコンピューターは強いとはっきり認めないと。だからガチンコ勝負でいってほしい。今年の名人戦の前夜祭で文部科学省の副大臣の方が挨拶をして、電王戦のことに触れたのですが、「コンピューター相手に1勝したなんてスゴイですね」とおっしゃられて(笑)。そうしたらみんなシーンとして微妙な空気が流れ、森内竜王・名人も羽生三冠も苦笑いしていましたね」
――今回は屋敷九段に頑張っていただいて……。
田丸九段「いろいろなところにコンピューターは進出していて、いまやコンピューター無くしては生きていけないですよね。コンピューターとは無縁だった将棋界でしたが、コンピューターもプロ棋士もどんどん強くなればいいと思うんですけどね」
――共存共栄という言葉もありますからね。
田丸九段のお話は、将棋界としてはかなり寛大な意見なのではないか。矢内女流五段が「電王戦の勝敗をどう見るかということですが、将棋界にとっては危機感を感じていますが、外から見るとまた違った見方なんですよね」というと、深浦九段や佐藤九段も「なんか気がついたら将棋の棋士が人類(知)の代表というような扱いになっている。非常に注目が高くコンピューターと人間が対等に戦えることは非常に少ないことでしょうから、注目が高まっていることは非常にありがたいことです」と話していた。
↑評価値が+1という表示も!! いったい0とどのくらいの違いがあるのか?
この時点で27手目▲7七角まで進みGPS将棋の評価値は屋敷九段の+299。今回の評価値は、ソフトの読み方の違いからなのか、めまぐるしく変わりなかなか安定しない。この辺りまで+200オーバーをキープしていたが、28手目の△2六歩で一気にマイナス評価に落ちた。ただ、0を挟んで揺らいでおり、まだまだ互角の展開と言えそうだ。屋敷九段の残り時間は、11時半の時点で4時間24分、対するPonanzaは4時間9分と、若干Ponanzaのほうが使う展開。
ここでまた中継が入った。ゲストは大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員の小作登氏。
――普段はどういう研究されているのですか?
小作氏「囲碁とか将棋とかバックギャモンなどさまざまな遊びやゲームがどのように社会に影響をあたえるのか。また教育に役立つかや歴史を調べたりなど、遊戯産業を学問としています」
――小作さん自身もアマ強豪として知られていますよね。
小作氏「今日解説でいらしている先生方と25年前に将棋を指したことがあります」
――屋敷九段とはどういったかかわり合いを?
小作氏「これも25年以上前の話ですが、プロを目指していたことがあり、3段リーグで屋敷九段に教えていただいてました」
――屋敷九段の将棋の印象は?
小作氏「昔から切れ味が鋭く踏み込みのいい将棋で、今日も横歩取りの展開にしたのも、屋敷九段の棋風。森下九段はじっくりと行くタイプですが、屋敷九段はもちろんじっくりした将棋も指しますが、横歩取りのような踏み込みの強い将棋も指す。佐藤康光九段が先ほど忍者屋敷と表現しましたが、一瞬の切れ味というのは群を抜いていましたね」
――小作さんはコンピューターに関しても詳しいとか。
小作氏「私はコンピューターを相手にプロ棋士が戦うよりも前に、公開の場でGPS将棋やBonanzaなどと対局したことがあります。完全に切られ役なんですが、その強さを身を持って体感しています。でもまさかこの数年で急速にトッププロに迫るとは思っていなくて、開発者の努力が感じられる」
――Ponanzaの印象は?
小作氏「数年前に登場した当初は、序盤にかなり粗いというイメージが合った。しかし、ここに来て緻密になってきた。山本さんは東大将棋部で将棋の実力も関東の学生準名人になるぐらいの持ち主で、それがいい面に働いて強さが増し、第1回電王に輝いたのではないか。開発者の棋力と情熱がこうした大舞台でいい勝負となっているのではないか」
――Ponanzaに勝ったら100万円というプレイベントでアマチュア相手に166戦全勝でした。
小作氏「人外の強さですね。どんなトッププロ棋士でも、20分間切れ負けで、166連勝しろと言ってもなかなかできない。コンピューターは、人間と違って精神的な動揺がないのと、疲労がないことが、ハッキリ優位でありますね。第2回電王戦で印象的だったのが船江五段の対局でしたね。終盤まで船江五段の方が有利だったにも関わらず、疲労と心理的に早く勝ちたかったという思いが、とても信じられない手を指して大逆転を許してしまった」
――屋敷九段はどうですか?
小作氏「私は結婚式の司会もやらせていただいたのですが、非常に冷静で、負けてもニコニコしていたりしますが、もちろん悔しいとは思いますが、それをコントロールするすべを身につけていると思う」
――横歩取りというの先局はいかがでしょう。
小作氏「第三局で横歩取りの展開で豊島七段が快勝しましたが、以前は横歩取りだと早く決着が尽くし危険が高いのではないかと言われていた。ただプロも研究を深めていく過程で、リスクがあっても横歩取りのほうが、早い段階でコンピュータに対して優位を築けることに気がついた。対コンピューターの戦略が変わってきたのではないかと思います」
――△6二玉が人間としては珍しい手ですが。
小作氏「コンピューターはこの△6二玉が好きだと言われていましたが、実際に横歩取りの将棋でこのように玉を囲っていくこともありますし、人間では気がついていない価値観。人間では常識とされてきた手が、コンピューターによって書き換えられていく可能性があると考えると、この△6二玉は立派な一手なのではないか」
――新たな可能性が出てくるということですね
小作氏「コンピューターと対局や研究することで、より高い次元の将棋を目指すことができると思います」
この間、対局場の様子が映し出されていたのだが、山本氏がセッティングなどであまり寝ていないのか、うつらうつらしているシーンが。
午前中は32手まで進み、屋敷九段が残り4時間1分、Ponanzaが4時間3分とほぼ互角だった。
↑恒例の屋敷九段が頼んだ昼食は、ほそ島やのカレー。ちなみに山本氏と下山氏はうな重でした。
↑ponanzaの開発者下山氏とともに、応援団も控室に。
対局再開し▲8七歩打ち。現地の中継では遠山五段が登場。この後の展開は、ほぼしばらく一直線ではないかとのこと。
結果としては遠山五段が示した手筋のとおりに、44手目の△1九飛成りまで進む。ニコファーレでは、去年に引き続き女優・高梨臨さんが登場。
NHKの将棋番組を何気なく見たとき、勝っても喜びを露わにしないその姿を見て、急に将棋へ興味を抱き将棋を勉強するようになった高梨臨さん。ドラマの撮影休みで、共演者と指したり、ニコ生で豊川七段とマンモス将棋基礎講座に出演するなど、将棋好きとして知られている。しかし、最近は仕事が忙しくてなかなか将棋をやる時間が取れないという(マネージャー談)。
↑詰め将棋もしっかり解いてました。
↑ニコファーレにあった360度向いた方向の映像が楽しめるOculusを設置。電王手くんの上に設置されたカメラで、リアルタイムの対局場が見られた。以前取材していてこの映像は……と言っていたが、やっと謎が解けた!!
現地中継では、竹俣紅女流2級が登場し、屋敷九段が選んだおやつを食べることに。女子高生でアイドル並みの可愛さにコメントは弾幕状態に。おやつを食べた感想をしっかりコメントできるしすばらしい。森内竜王・名人が師匠なので、棋士としての活動も期待大だ。
↑16歳。現役の女子高生。美少女。棋士。非の打ち所がない。
↑試食する姿も絵になります。
――今日の対局はいかがですか?
竹俣女流2級「横歩取りの戦型でしたが、コンピューターは6二玉が好きなんだなと思いました。これからプロの公式戦でも出るようになるのかなと興味深いです」
女子高生とは思えないぐらい、実にしっかりしたコメントでした。
続いて登場したのはおやつガール(おやつを運ぶ係)の市川咲さん。こちらも女子高生ということで、カメラのシャッター音が響き渡った。
↑こちらは17歳!! 声も可愛らしいかたでした。
↑美人三姉妹と言ってもおかしくない、いちばん華やいだ中継でした。
↑ちなみに、おやつはプレミアム ロールケーキとプレミアム ぎゅっとショコラでした。
野月浩貴七段も登場。おやつを食べてましたが、写真は割愛します。わかりやすい上に滑らかなしゃべり口だから、聞いているだけで納得する解説をしていました。形勢判断は、Ponanza持ち。評価値は屋敷九段の-200台。
3時半過ぎの時点で、51手目▲4九同銀まで進み、残り時間は屋敷九段が2時間55分、Ponanzaが2時間38分。ここまでコンピューターのほうが時間を使っている展開だ。評価値は屋敷九段の-278。
↑控室では塚田九段に佐藤紳哉六段、竹俣女流2級で検討中。
3時50分にニコファーレには渡辺二冠が登場。先手も後手もどう攻めたらいいのかよくわからない様子。解説もちょっと歯切れが悪い。渡辺二冠にしても、難しい局面ということだ。▲6五桂が意外な手。そのあとの△5四金は予想どおりの展開。
↑竹内氏と菅井五段。棋士と開発者が仲良くなるケースは多い。
↑佐藤紳哉六段は、今度は片上理事と検討。
3時50分にニコファーレには渡辺二冠が登場。先手も後手もどう攻めたらいいのかよくわからない様子。解説もちょっと歯切れが悪い。渡辺二冠にしても、難しい局面ということだ。▲6五桂が意外な手。そのあとの△5四金は予想どおりの展開。
現地レポートでは、豊島七段がゲストに。
――ここまで対局を見ていかがですか?
豊島七段「1時半に来たですが、それからずっと難しい戦いが続いていて、どちらがいいのか考えながらもています」
――先程は先手を持ちたいと言ってましたが。
豊島七段「そうですね、今はちょっと後手を持ちたいですね。でも一手ごとにゴロゴロと変わっているような感じですね」
今回唯一勝っている豊島七段でさえ難しいと。
豊島七段「コンピューターは△7二玉と▲5八玉型だったら、△7二玉が優勢と言ってくるんですよ。人間が互角だと思っている局面でもPonanzaの方が優位だと言ってくると思います」
――以前渡辺二冠もコンピューターと戦っていますが。
渡辺二冠「そうですね、自分のときは相手がだいぶ弱かったですからね。2006、7年なのでまだそんなに経っていないんですけどね。7年でこんなに強くなるということは、もう7年経ったらどうなってしまうんだろうと」
――ここまでどういう印象ですか。
渡辺二冠「前評判的には、自分を含め関係筋はみんな、プロ棋士側が有利なのではないかと言われていたのですが、それはちょっと的外れだったのと、コンピューターがすべて同じマシンになるので、それで弱くなると言われていた。コンピューター将棋選手権で上位のソフトが出ていないというのも、そう思われていた一因でした。でも、今回出場したソフトも強くて、やってみたら意外と変わらず、棋士側も思っていたのと違ったのではないか。今日の結果も大きいでしょうね」
渡辺二冠のコメントはニコファーレから。そうこうしているうちに、評価値は屋敷九段が-600台と徐々に差が開いてきた。
60手目の△1六香が違和感のある手らしい。▲1九の角取りなのだが渡辺二冠はすすめていない。これで勝ったら相当コンピューターが強いということ。ただ、角が取れればかなりの駒得となり後手有利でもあると。ここで、夕食休憩に入った。屋敷九段は2時間以上も持ち時間を残している。人間的には良い展開だ。
↑今度は竹内氏と豊島七段がコンピューターの予測を見て談笑。
↑夕食はおにぎりのセットとサブウェイのサンドウィッチだった。
↑夕食休憩時に姿を現わした電王山本氏。羽織の胸に「GALLERIA」の文字が!!
↑話題になった△1六香。休憩明け直前の画面。
↑屋敷九段は終始このような表情。
休憩明け、▲2八角と避けてから70手目まで、角を詰ますまで追いかけ回すPonanza。持ち駒をふんだんに使って、捕獲成功した。しかし、これは人間だとやらない手。評価値も屋敷九段が-600程度だったものが-300台にまで落ちている。
今日は最終日なので控室はごった返している。というのも、これまで戦ってきた棋士と開発者も全員集合しているからだ。その上で報道関係者も多数いるので、熱気がすごい。冷房もフル稼働だ。
現地レポートは佐藤慎一四段の登場。前回Ponanzaと対戦したりタッグマッチではペアを組んだりしていた。
――Ponanzaのことはよく知っていると思うのですが。
佐藤慎一四段「よく言われるのですが、実際に指したのは1回しかないので、棋風はよくわからないですね。ただ、タッグマッチの時に精度が高いと感じましたし、大駒を取りに行くのがらしいなと思いました。自分にはなかなかできない手なので。そういったところに強さと、未知の力を感じますね」
「コンピューター側が優勢だと意識すると、大駒を取ることが早く勝ちにつながると考えているのではないか。玉を追い詰めるより大駒を取ったほうが点数が広がって、結果勝ちにつながると」
――ここまでの流れはいかがですか?
佐藤慎一四段「激戦だと思います。先手持ちでもよかったと思ったんですが、現状では駒の損得が大きいので、後手のほうが有利ですね。これ以上駒を取られたら危ないですね」
18時40分すぎに現地レポートのゲストとして渡辺二冠が登場。ニコファーレから意外と近いんです。この時点で控室の評判は後手持ち。ただ、角を追い回す手順はやってはいけない手と言われる手。驚愕の手順と表現していた。
↑渡辺二冠は、コンピューターの手に何度も驚かされていた。善し悪しは別にして。
今回は、Ponanzaの時間の使い方が、棋士のようにたっぷり使って読んでいる。これは作戦だろうか? 18時50分現在でPonanzaが残り1時間19分、屋敷九段が1時間33分と、ほぼ常にPonanzaの方が持ち時間を使う展開だ。
19時過ぎ、残り時間が逆転した。そろそろ1時間を切る。しかし84手目をPonanzaが考え、またPonanzaの持ち時間が少なくなった。それでもなんとか屋敷九段が-400台をキープ。終盤、詰むか詰まざるか、そこかしこで検討している。まだ誰も見えていない。
19時45分ぐらいに現地レポートで塚田九段が登場。87手目▲7七銀と指したあとPonanzaが考えている。控え室では、100点の手を続けていけば、屋敷九段が行けるのではないかという判断。
田丸九段も再び登場。「大きなトラブルもなくこの時点でまだ形勢が不明というのだから立会人としてはこれ以上の喜びはないです」
とここで、ぶっちゃけ話が飛び出した。
田丸九段「今回出場者は事前に研究できますが、一般棋士の現役棋士を対象に第二回のソフトと第三回のソフトを3回指して棋譜を提出するということをやっている。ソフトの方は持ち時間30分秒読み60秒で、棋士側は無制限にできるというルールなんですが、噂によると結構負け越しているとか」
塚田九段「負け越しているんじゃないですか?(笑)でも3連勝いた人もいたらしいですよ」
田丸九段「3連勝したのが話題になるんだから(笑)。私も声かけられたんだけど、都合が悪いって断っちゃったんだけど。聞いた話によると、若手棋士の方が負けているそうで、ある世代以上の人は勝っている。私と同世代(60歳代)の棋士が勝ったというからスゴイなと言ったら、3本のうち1本だそうで(笑)」
そんななか、電王手くんが動き出して△7九銀を指した。みんなが予想していない手が来て控室騒然。みんな検討やり直しとなる。控室にあるPonanzaは△9六歩というのが読み筋だった。
そして▲9七玉と逃げたら即△9六歩を指した。評価値は玉どうしが近づいているからか、屋敷九段の-500台となった。うーん、Ponanzaの読みがよくわからない。ただ、評価値的には全く悪い手ではないのか。誰も考えられない手だ。
また歩を垂らす。わからない。評価値が上がっているのも不気味。-644まで行っている。
8時を過ぎ、まだ残り時間が1時間以上ある屋敷九段。最後の大詰めでしっかり考えている。20分ほど考えて97手目▲8六香を打つ。
ただ103手目▲8一成香で-1000近くに落ちる。解説陣は▲6六歩と突く手が有力視されていた。そして△8三歩のあとの▲9三飛打ちで-1400台に。ここからズルズルと屋敷九段は評価値を下げていった。
21時過ぎ、現地レポートでは渡辺二冠と豊島七段が再び登場。113手目▲7六銀で-2000を超えて、かなり厳しくなってきた。
屋敷九段は席を立つシーンが多くなり、もう頑張りきれないのか。21時39分に持ち時間を使い切る。
そして130手までで屋敷九段は投了した。21時45分という今大会最長時間となった。
続きは会見編で!
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