サトシン(佐藤紳哉六段)登場で場内大歓喜
ニコファーレで行なわれた第3回将棋電王戦の出場プロ棋士発表会で、すでに決まっている屋敷伸之九段以外の4人が発表された。
まず若手代表として、22歳の菅井竜也五段。棋風は振り飛車で、これまでの電王戦では振り飛車をした棋士がいないため、「振り飛車で行きたい」と抱負を語っていた。ただ、ふだんの棋士生活ではあまりない演出での登場だけに、相当緊張しているようで、言葉に詰まるシーンも。
次に登場は、サトシンこと佐藤紳哉六段。第2回のサトシンは佐藤慎一四段なのでお間違いなく。場内にドッと歓声がわくほどの人気実力者のひとり。いや「もっぱらお笑い担当?」とも言われているが、そのキャラクターはこの電王戦にふさわしい。「笑いよりも勝負を見てほしい。……と言って何かするかもしれないが」と言われると、やはりお笑いを期待しちゃいますよね。
3人目は、若手有望株の豊島将之七段。23歳にしてB級1組に在籍。研究熱心として知られ「船江五段が電王戦のあとに強くなっているのを見て、出場しようと思いました。いまソフトをお借りして対局してますが、すごくおもしろいです」と落ち着いて語る姿は、すでに貫禄あり。サトシンと同様、場内はかなり盛り上がったので、勝利を期待しますね。
4人目は、無冠の帝王と紹介されていたが、前回の塚田泰明九段の位置づけとなる森下卓九段。「最近は解説する側が多く、今回解説される側になりたいと思いました」と確かに解説ではよくお目にかかるが、もちろん実力もあるベテラン棋士だ。
最後は、8月にすでに発表されている屋敷伸之九段。「今回このように5人発表になり、団体戦としては非常に心強いメンバーになったと思います」と、壇上で語った。A級棋士として雪辱は果たせるのか楽しみだ。
ここで、ドワンゴの川上会長が4人だけ遅れた理由をぶっちゃけた。「実は今回4人が後回しになってしまったのはドワンゴ側の都合でして、煽り映像と一緒に発表させてほしかったのですが、制作が間に合わず勝手な理由であとになってしまいました。ただ今回の5人は佐藤映像さん(佐藤大輔氏率いる映像制作会社)曰く非常に喜んでます。とにかく煽り映像がつくりやすいメンバーだと(笑)」。ということで、すでに決まっていたけど、映像制作が間に合わなかったから2回発表会を開いたことを暴露した。その煽り映像は、発表会のオープニングで流れたが、今回も非常によくできている。特にサトシンのところは、いじり甲斐があるだけに笑えた。
このあと、ルールの説明が行なわれた。前回の発表時に決まっていたのは、
●出場ソフトは、主催者側が用意した統一のハードウェアを使用する。
●出場棋士は、主催者側が用意した本番と同じソフトおよびハードで練習対局を行なう。
これに加えて、
●対局は午前10時開始で休憩2回(昼食休憩:12時~13時/夕食休憩17時~17時30分)。
●持ち時間は各5時間 切れたら1分将棋(チェスクロック方式)。
●出場ソフト決定後のバージョンアップは許されないが、棋士が対局することによって学習したことは認める。
ちなみに、統一ハードのマシンスペックは
CPU●インテルCore i7-4960X Extreme Edition(6コア/3.6GHz)
メモリー●64GB
グラフィック●NVIDIA GeForce GTX660 2GB
HDD●1TB
となっている。
対局時間に関して谷川会長は「今回1時間増えましたが、1分未満切り捨ての4時間とチェスクロックの5時間では少しだけ増えることになると思います。その中で少し終局が遅くなるということで夕食休憩を設けました。しかし、あまり長い休憩にしてしまうと人間が有利になってしまうので、1時間ではなく30分にしました」。川上会長は「コンピューターと人間とで公平なルールとはどういうものかは非常に難しいですが、コンピューターは人間と違って疲れませんから、休憩時間が増えたのはよかったと思います」。時間が18時からではなく、17時からなのは、終盤すぎだとあまり休憩が意味なくなってしまうためだとか。終盤前に一息(棋士にとって一息になるのか定かではないが)とれるのは大分楽になると思う。
将棋電王トーナメントのエントリーソフトも発表
第3回電王戦のコンピューター側は、11月2日から3日間、コンピューターソフト同士の戦いによって決定する。すでにエントリーは締め切られており、参加ソフト23チームも発表された。
エントリーされたソフト | 開発者名(敬称略) |
---|---|
AWAKE<アウェイク> | 巨瀬亮一 |
Apery<エイプリー> | 平岡拓也 |
井上将棋 | 井上浩一 |
N4S<エヌヨンエス> | 横内健一 |
カツ丼将棋 | 松本浩志/福田栄一 |
Calamity<カラミティ> | 川端一之 |
クマ将棋 | 上瀧剛 |
K-Shogi | 本田啓太郎 |
GA将!!!!!!!<ガショウ> | 森岡祐一 |
scherzo<スケルツォ> | 氏家一朗 |
習甦<シュウソ> | 竹内章 |
Selene<セレネ> | 西海枝昌彦 |
大合神クジラちゃんα | 鈴木雅博 |
ツツカナ | 一丸貴則 |
ひまわり | 山本一将 |
Bonanza<ボナンザ> | 保木邦仁 |
ponanza<ポナンザ> | 山本一成/下山晃 |
メカ女子将棋 | 竹部さゆり/渡辺弥生/辻理絵子/木村健 |
やねうら王 | 磯崎元洋/岩本慎 |
Labyrinthus<ラビュリントス> | 細羽英貴 |
レベルゼロ | 中村幸裕 |
レビアタン | 竹尻徹也 |
YSS | 山下宏 |
ここで、あれ?と思うのが、前回出場した『GPS将棋』と『Puellaα』がいないことだ。どちらも複数のマシンで処理することでその能力を高めるソフトだが、1台のマシンでもかなり強いので、とても残念。Puellaαは今年の『世界コンピュータ将棋選手権』にも出場していないので、今回は出場する気はなかったのだろう。また、世界コンピュータ将棋選手権では常連の『激指』や『柿木将棋』などもいないのが残念。あとおもしろいのが『ponanza』の開発者に山本一成氏と下山晃氏が連ねていること。下山晃氏は『Blunder』の開発者で、今回タッグを組んだ理由は何なのか? 複数台のマシンを使えないデメリットを短期間のうちに克服しようということなのだろうか? そのあたりちょっと聞いてみたい。
開催概要は下記の通り。もちろんニコ生中継される。
●開催時期:2013年11月2日(土)~ 4日(月・祝)
●対戦形式:予選リーグで12ソフトにしぼった後、決勝トーナメントで1位~5位を決定
●持ち時間:予選リーグは15分間・秒読み30秒、決勝トーナメントは2時間切れ負け(いずれもチェスクロック方式)
●出場規程:
・株式会社サードウェーブデジノスが提供するハイスペックPC(GALELLIA)を統一ハードウェアとして使用する。
・「第3回将棋電王戦」には、本トーナメント出場時のソフトおよびハードで出場する。
・「第3回将棋電王戦」ソフトは、プロ棋士の事前研究および電王戦関連イベントでの使用において、主催者ならびに主催者の認める者に対してソフトウェアの提供を許諾する。
●賞 金:<1位>250万円 <2位>100万円 <3位>70万円 <4位>50万円 <5位>30万円
●優勝ソフトには“電王”の称号が与えられる
ということで、このトーナメントもワクワクするが、やはり来年の本番、どのような結果になるのか楽しみだ。プロ棋士側は、すで4本のソフトを提供されて、対局しているという。去年と違いこの時期からコンピューターソフトに触れているというのは、きちんと取り組まなければならないという危機感がかなりあるからだろう。そして、佐藤映像による煽り映像の出来にも期待!
●関連サイト
日本将棋連盟
第3回将棋電王戦のページ
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