ネットで話題のサービスや事件、ツイートしている中の人を直撃する週アス好評連載『中の人特捜部』──今回は、100年先を見据えてブランドを刷新したヤンマーの未来すぎるトラクターのお話。
見た目も操作性も考え抜かれたデザイン
ソーシャルメディアで食べモノの写真は数多く話題になるが、食べモノを生み出す農業について触れられることは正直、少ない。ましてや農機となると……。そんな状況に一石を投じたのが7月25日にヤンマーが本格始動を発表した“プレミアムブランドプロジェクト”だ。
簡単に説明すると──'12年に創業100周年を迎えたヤンマーが、次の100年を生き抜くためにブランドを刷新。顧客の想像を超えるソリューションを提供し、求める一歩先の満足を生む存在をめざす──というものだ。でも、ことさらネットが飛びついたのは、ロボットアニメに出てきそうなコンセプトトラクター『YT01』だった。『フェラーリ エンツォ』などを手掛けた工業デザイナーの奥山清行氏がデザインを担当したこともあり、公式写真がネットに出回るやいなや、共有されまくって、「カッコよすぎる」など好意的な声で埋めつくされた。
燃える男の「未来過ぎる」赤いトラクター『YT01』
YT01の実機が8月下旬、ヤンマー主催のイベントで東京に上陸。ネットを沸かせたデザインとは、いかなるものか実物を確かめると、コレは確かにスゴい! まず鋭い“面構え”と光沢感あふれるメタリックレッドのボディーに目を奪われる。サイドに回って全面ガラスのドアを開くと、レザーシートが鎮座。細部にまでデザインされつくした、トラクターというより大型の高級バギーといった印象だ。
ヤンマー広報担当者に、「見た目だけで、操作しにくいのでは?」と質問すると、「シートもハンドルもレバーも、デザイナーの奥山氏が使いやすさにこだわり抜いて設計している」とのこと。「このまま欲しいと言う人も多いのでは?」と訊くと、やはり発表後に問い合わせがあったそうだ。しかし、残念ながらこのまま生産するとコストが高額になるため、技術やデザインをのちの量産機に生かすそうだ。
従来型のものづくりを変えるための新ブランド戦略
気になるのは、なぜ今まで日本のトラクターに凝ったデザインが現われなかったのかということ。同社広報によれば、「海外では、何百ヘクタールにもわたる農地を何十時間もかけて耕す大規模農家が多いため、負担を軽減させる人間工学に基づいた農機が発達してきた」という。一方、日本は小中規模の農家が多く、農機も小型機が主流。水田が多いのも欧米と比べたらユニークで、海外メーカーが参入しにくい実情がある。
そんな“ガラパゴス”状況を打開したのが、今回のプレミアムブランドプロジェクトだ。先の奥山氏に加え、クリエイティブディレクターの佐藤可士和氏、ファッションデザイナーの滝沢直己氏を外部から迎え、“気づき”をもらうことで、従来型のものづくりを変えたわけだ。
【今回の中の人】
ヤンマー
↑1912年、石油発動機メーカーとしてスタート。農機を中心に、小型船舶や発動機、建機を製造・販売する。新ブランドロゴ(上)は、佐藤可士和氏デザインによる。
彫りの深いワイルド系に一新したヤンマーレッドのトラクター
↑平たくて四角かった従来の面持ちを一新し、一気に彫りの深いワイルド系のルックスに。メタリックに進化させたヤンマーレッドも目を引く。
全方向に見通しがきく全面ガラスの開放感
↑全面シースルーのドアはインパクト大。全方位的に見通しがよく、コックピットを開放的にしている。どこを見ても野暮ったさがなく、スゴくカッコイイ!
ラグジュアリー感のある革張りシートが座り心地よさそう
↑コックピットの中に入ると、運転席にはラグジュアリー感たっぷりの革張りシートが! 燃える男のカラダを包み込む。
現代のテクノロジーを惜しみなく搭載
↑ドアミラー(左)にはウィンカーなのだろうか、LEDを配し、現代的なデザインに仕上がっている。無人追従システムを搭載し、複数のトラクターをひとりで操作できるという(右)。
ヤンマー(関連サイト)
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