8月30日にジャパニーズホラー映画「貞子3D2」が公開されました。今週のテーマは、貞子のようなコワい女が出てくる作品を紹介します。諸富編集者は「ブラック・スワン」、藤村編集者は「告白」を見て怯えました。
ブラック・スワン |
関連会社の作品にイチャモンをつけるわけじゃないですが、最近の「貞子」の扱いには疑問を感じます。一応ジャンルとしてはホラーなんですよね? でもプロモーションのやり方は完全にギャグじゃないですか。2ちゃんねら的な悪ノリというか。いや、そういうの嫌いじゃないですけど、それでも貞子に「怖さ」を感じる人っているんですかね? ああ、あれか、「中の人」がいるってわかっててもやっぱりキャーキャー怖がるお化け屋敷みたいなもんか。勝手に納得。しかし、貞子の生みの親の鈴木光司先生はどんな気持ちなんですかね……。ちなみに貞子の苗字って山村っていうんですよ、知ってました?
さて、今回僕が選んだのは『ブラック・スワン』です。ホラーじゃないですが、僕はホラー映画に登場する幽霊とか化け物的なものよりも、現実の人間の方が怖いです。ひとの人格が壊れていく感じとか、隠していたまったく別の本性が露わになる感じ、そういうのが一番怖い。現実に起こり得る現象だけに怖い。今日まで親しかった人が明日は敵対者になるかもしれないし、明日の自分が今日の自分と同じとは限らない。病気や環境の変化でそうなるかもしれないし、何が引鉄となるかはわからない。そう思ったらガクブルじゃないですか? そういう、普段僕らが忘れているフリをしている恐怖、それをつきつけられるような作品が僕は一番怖い。以前本コーナーで紹介した『エスター』(背筋が凍るホラー・スリラー編)は、その好例です。
前置き長ぇよ。それで本作ですが、簡単に言えば多重人格ものです。多重人格、つまりひとりの人間の中に、まったく別の人間が生まれるわけですよ。ここ映画や小説などでは使い古されたテーマではありますが、人ごとではなくリアルに起こり得る現象だけに、それがうまく描写できている作品はマジもんの怖さがあります。僕が思うに、「その人が持っている基本的な性格や置かれている環境」、「別人格を生み出す理由と契機」、「元々の人格と別人格の対峙の瞬間」、この3つがうまく描けている作品は怖いです。怖いし痛い。だって、もう悲劇的な結末しか待ってないってわかるもん。そしてこの作品はそ3点においてほぼ完璧です。クライマックスのゾッとする感じ、あれは並みのホラー映画じゃ出せません。
ストーリーを簡単に言うと、バレエのプリマドンナに抜擢された主人公(ナタリー・ポートマン)が、主役を演じるというプレッシャーに押しつぶされそうになり、そこから逃れるために別人格を生み出してしまいます。それが劇中劇の演目「白鳥の湖」の白鳥と黒鳥という2つの役どころとシンクロしていきます。そして舞台当日、最後に待っている結末は……。主演のナタリー・ポートマンは、精神が不安定な女性を演じさせたらピカイチです。『スター・ウォーズ エピソード3』での、夫のアナキンが壊れていくときの不安がり方とかね。しかも可憐。
ナタリーの演技もさることながら、バレエという女だらけの競争世界のドロドロの描き方、そして現実と虚構の区別を曖昧にする表現。99%まで陰鬱な雰囲気のままストーリーを進め、最後の1%の美しい瞬間を際立たせるという演出も素晴らしい。怖くて痛くて哀しくて美しい、そんな凝縮感のある1本です。素晴らしい作品なのですべての人にお勧めしたいですが、気分が落ち込んでいる時には見ない方がいいかも(諸富)。
ブラック・スワン(字幕版)
HD版レンタル:400円、SD版レンタル:300円
告白 |
最も愛する者を奪われ、復讐にすべてを捧げた女……。背筋も凍る復讐劇を遂行する、松たか子の冷ややかな表情が怖すぎる!
そんな松たか子演じる教師、森口の告白から物語は始まります。愛するたったひとりの娘である愛美を、自分が受け持つクラスの生徒に殺されたと言う森口。クラス全員の生徒の前で事件の真相を打ち明け、犯人の生徒に復讐を誓うのです。
そして、犯人かもしれない登場人物がそれぞれの立場から語る告白と、森口が復讐を終えるまでの過程が描かれます。「下妻物語」や「嫌われ松子の一生」の監督でもある中島哲也監督ならではの、シリアスな内容にエンターテインメント性が盛り込まれた演出が、これでもかとばかりに続きます。まずは予告編を見るだけでも、軽く震えること間違いなしです。
実はこの映画、主演の松たか子に負けず劣らず、もうひとり恐ろしい女が出てきます。木村佳乃扮する、犯人である生徒の過保護な母親です。子供を愛するあまり、例え間違っていたとしてもその子を必死に守ろうする狂気じみた表情は、もはや恐ろしいというよりも笑いが出てくるほど。
この物語は確実に恐ろしさを秘めていますが、淡々と進んでいきます。感情を露わにするのではなく、計算どおりに相手をじわじわと苦しめる”女の復讐”が味わえますよ(藤村)。
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