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竜王戦ニコ生解説初登場の羽生三冠に単独取材!そして第3局の行方は?

2012年11月07日 23時30分更新

 10月31日、11月1日に行なわれた竜王戦のニコ生中継、見ました? 渡辺明竜王丸山忠久九段の戦いは、第1局と同様に丸山九段が早々に投了してしまったけど、その勝敗が決まる2日目に解説を行なっていたのが、羽生善治三冠。ニコ生では対局者としては数多く登場しているものの、解説としては今回が初。どんな解説をしてくれるのか、いやがおうにも期待が高まります。

ニコ生の大盤解説のようす
竜王戦第3局
解説は現地ではなく東京の将棋会館の一室。かなり狭い中に中継機材がぎっしりでかなり室内も暑かった。

 ということで、解説が始まってからしばらく放送を見ていましたが、いやぁ言うことやることが的確、かつわかりやすいし、丸山九段が劣勢な状況をバッサリ切られていたのも、羽生三冠らしく感じました。で、もう行かないと終わってしまうかも、と千駄ヶ谷にある将棋会館へ足を運んだのですが、到着したときには丸山九段がすでに投了……。放送は羽生三冠への質問コーナーに変わっていました。放送はタイムシフトできないため、会社を休んで見ている人も。また女性からの質問も意外に多く、羽生三冠の人気は幅が広そうです。

解説を務めた羽生善治三冠
竜王戦第3局
わかりやすくて丁寧で、現地控え室にいる人たちも、羽生三冠の解説を食い入るように見ていたという。
聞き手の藤田綾女流初段
竜王戦第3局
ニコ生のコメントでは「緊張しているなぁ」などがかなり流れていたが、聞き手役をしっかりこなしていました。

 そんな中、週アスとしてインタビューできるチャンスが! 恐れ多いながらお話を伺いました。

――以前、渡辺明竜王にもしご自身がコンピューターと戦うことになったらどうしますかとお伺いしたところ、数ヵ月は対人戦はなさらずに対コンピューター将棋の研究をしなければならないとおっしゃっていたのですが、羽生善治三冠の場合はいかがでしょう。

 対コンピューター将棋用の指し方や準備をする必要があるのではないかという気はしています。見たことのない手を指される可能性があるので、それに目を慣れさせなければいけないということがあると思いますので。(渡辺竜王の考えも)対コンピューター将棋に特化した訓練なり練習をするということだと思います。

――結構、コンピューターは人間が指さないような手が多いのでしょうか?

 そうですね。奨励会の子供がコンピューター将棋と10秒将棋を指しているのを見たことがあるのですが、とにかくまったく予想外の手が来るときがあるんです。そんなときに、わずか10秒だと何の反応もできないということがありますので、どういう思考プロセスで、どうしてその手を選んだのかという背景まで研究しないと、なかなか対策というのは難しいのかなと思います。

――羽生三冠はチェスもやられてますが、将棋とチェスとは瞬時に頭を切り換えられるものなのでしょうか?

 そうですね。似ているところはありますけれど、まったく違うところもあるので、その辺りの切り替えは簡単にできます。取った駒が使えるか使えないかで、まったく違うのでそこで混乱することはないです。

――タイトル戦の最中にチェスの試合があっても問題はないと……。

 なんと言ったらいいんでしょう。ホントに(ルールが)近かったら戸惑いがあるのかもしれませんが、かなり違う部分があるので、切り替えは難しくないです。

――コンピューターを将棋の研究に利用されていますか?

 この局面で詰みがあるのか否かを判断するときにコンピューター将棋にかけることはよくあります。実際タイトル戦の控え室でもよく利用していたりします。(コンピューター将棋は)終わりのほうの局面では、ほぼ間違いがないのですが、しかしそれは絶対ではないので鵜呑みにはせず、9割以上は正しいだろうという確認を取るという感じです。

――コンピューター将棋の詰め方は人間の考え方と似ているのでしょうか?
 発想的な部分では人間が考えていることと同じなのですが、考える選択肢の幅がコンピューター将棋のほうが圧倒的に多いので、人間がこぼれ落としてしまう部分を必ずフォローしてくれているという感じだと思います。

――現在のコンピューター将棋は、プロの棋譜を読み込ませてより強くなるよう微調整をしているようですが、将来羽生三冠のような差し回しをする将棋が出てくるかもしれません。

 そのような微調整が非常に多いとコンピューター将棋の開発者から伺っています。ちょっと攻めのほうをプラスにしようとか、守りをプラスにしようとか、考える手を増やそうとか、そこは職人的であり、微妙なさじ加減でよりいいものをつくっていっているんだと思います。まったく同じとまではいかなくても、その人のスタイルですとか癖ですとか、そのようなデータがたくさんあることで、より近いものをつくり上げていくアプローチの仕方というのは、将棋に限らずよくあることなのでしょう。
 ダンスのうまい人の動きをすべて関数にして動かして、その人と同じように動かせば、円滑で華麗なダンスが生まれるのではないかという研究をしている人のお話を聞いて、そのようなアプローチの仕方でかなり高度なところまでできるようになってきているのではないかと思います。

――ボナンザの登場で、将棋に長けた人ではなくても調整して強くできるようになってきました。

 ボナンザがオープンソース化されて、アマチュア初段ぐらいのプログラマーであれば、それを使えばある程度強いものができてしまいます。また、どうして最近強くなってきたのかと言ったときに、当初は人工知能的な研究をかねてやっているから人間的な思考をいかにコンピューターに覚えさせるのか、いろいろとやっていたのですが、試行錯誤してみるとやはり難しいことがわかってきた。結局、質よりも量で勝負という、手法を転換したらうまくいってしまったんですね。昔も量で勝負したけれどうまくいかなかったものが、ハードの進化によって量の部分から質に転化できるぐらいまでになったのだと思います。

 

 羽生三冠自身が公の場でコンピューターと対戦するときが来るのかは定かではないですし、自ら進んでやることもないと思いますが、コンピューター将棋ソフトの弱点を見つけ出す研究をするのではなく、見たことのない指し手がどうして指されたのかを研究するとおっしゃっていたのはとても印象的でした。現状で戦ったら、羽生三冠や今回圧倒的な強さで2連勝している渡辺竜王以外に、勝てる可能性のあるプロ棋士はいるのでしょうか?

 と、そんなプロ棋士対コンピューター将棋の戦い『電王戦』は、来年も行なわれます。もちろんニコ生で中継もありますよ。今回は5人のプロ棋士対5つのコンピューター将棋ソフトの戦い。週アスではこちらも追いかけていきます!

 それから忘れてはならない、明日11月8日、9日は竜王戦の第3局。丸山九段の巻き返しに期待したいです。

■第3局 初日
●番組名: 将棋 第25期竜王戦 七番勝負第3局・初日 渡辺明竜王 vs 丸山忠久九段 完全生中継
●日 時: 2012年11月8日(木) 午前9:00開始
●主 催: 読売新聞、日本将棋連盟
●対局者: 渡辺明竜王、丸山忠久九段
●ルール: 持ち時間各8時間
●解説者: 富岡英作八段(聞き手:安食総子女流初段)
●初日の中継サイトはこちら
※本放送はタイムシフト機能には非対応。

■第3局 2日目
●番組名: 将棋 第25期竜王戦 七番勝負第3局・2日目 渡辺明竜王 vs 丸山忠久九段 完全生中継
●日 時: 2012年11月9日(金) 午前9:00開始
●主 催: 読売新聞、日本将棋連盟
●対局者: 渡辺明竜王、丸山忠久九段
●ルール: 持ち時間各8時間
●解説者: 中村修九段(聞き手:藤田綾女流初段)
●2日目の中継サイトはこちら
※本放送はタイムシフト機能には非対応。

■竜王戦生放送スケジュール(全対局)
●第1局 【初日】10 月15 日(月) 9:00 開始 /【2 日目】10 月16 日(火) 9:00 開始
●第2局 【初日】10 月31 日(水) 9:00 開始 /【2 日目】11 月01 日(木) 9:00 開始
●第3局 【初日】11 月08 日(木) 9:00 開始 /【2 日目】11 月09 日(金) 9:00 開始
●第4局 【初日】11 月20 日(火) 9:00 開始 /【2 日目】11 月21 日(水) 9:00 開始
●第5局 【初日】11 月28 日(水) 9:00 開始 /【2 日目】11 月29 日(木) 9:00 開始
●第6局 【初日】12 月05 日(水) 9:00 開始 /【2 日目】12 月06 日(木) 9:00 開始
●第7局 【初日】12 月19 日(水) 9:00 開始 /【2 日目】12 月20 日(木) 9:00 開始

 私は残念ながら見られなかったのですが、このインタビューのあと、また中継に登場した羽生三冠は、先の王座戦を振り返っていたそうです。それはもう、視聴者は大いに沸いたようですよ。いやぁ、タイムシフトがないのが非常に残念ですね。

ニコ生中継の裏側
竜王戦第3局
ニコ生の中継機材はこんな感じ。とにかく狭いので大変そうでした。
現地の映像では終局後の模様が……
竜王戦第3局
羽生三冠の解説が始まってからは、ワイプとしてもあまり現われませんでしたが……。

■関連サイト
ニコニコ生放送第3局初日
将棋竜王戦チャンネル
竜王戦中継サイト(棋譜中継)
日本将棋連盟

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