東京大学本郷キャンパスで8月7日~11日、中高生向けのプログラマーキャンプ『Life is Tech!』が行なわれた。本イベントは、3~5日間でスマホのアプリ開発やゲームデザインなどの最新技術を学習するというもの。2011年夏から学校の休業時期を中心に開催されており、今夏の開催で5回目となる。今期の参加者はなんと約300名!
イベントの参加者の多くは、9月30日に行なわれる中高生向けのアプリプログラミングコンテスト『アプリ甲子園』に本キャンプで作った作品を応募する予定だ。
参加予定の優秀な子供達、また『Life is Tech!』を主催するピスチャーの代表・水野雄介氏にインタビューする機会があったので、気になる質問をぶつけてみた。
■角南萌さん(中学2年生)
小中学校作品コンクールパソコン部門にて、文部科学大臣奨励賞を受賞。
――このキャンプではどんなアプリを作っているんですか?
角南さん: いまはiOS用のプレゼンタイマーを作っています。学校でプレゼンテーションの授業が多いので、それに活用できればと思っています。プレゼンテーションタイマーのアプリはほかにもありますが、みんな数字を表示するばかりで使いにくかったので、円グラフにしてぱっと見て時間をわかりやすいようにしてみました。AppStoreにも公開しようと思っているので、ちょっとドキドキしてます。
↑角南さんが制作中のプレゼンテーションタイマー。色を分けて時間配分をわかりやすくしている。
――プログラミングをはじめたきっかけは?
角南さん: 小学3年生のときに韓国に住んでいました。そのとき、ウェブサイトを作るのが流行っていて、コンテンツ制作の楽しさを実感しました。それが最初ですね。そのときはプログラミングはしてなかったんですが、その後、韓国からニューヨークへ引っ越して、『ソーシャルネットワーク』という映画を観て、プログラミングってかっこいいなと思いました。それでチャレンジしてみることにしました。最初は2011年の夏にスタンフォードの同じようなプログラミングキャンプに1週間行って勉強しました。
――将来の夢は何ですか?
角南さん: まだ決まってないです。でも、プログラミングをツールとして活用して何か研究したいです。今は国際政治に興味があります。日本とアメリカの違いなどに注目しています。
――次はどんなアプリを作ってみたいですか?
角南さん: 学校のことで便利になるものをつくりたいです。たとえば、学校の合唱コンクール練習アプリとか、文化祭委員のための夏休みのみんな出欠スケジュールアプリとか……。あとは、納豆が好きなので納豆を発酵させる“なめこ”のようなゲームも作ってみたいですね。日本に帰ってきてから、日本文化に目覚めました。ことわざを利用したゲームとかもいいですね。
↑角南さんのアプリのアイデアが詰まったiPad。アイデアが思いついたらすぐに書き込んでいるという。
■小原凱也くん(小学6年生)
小学3年生よりプログラミングをはじめ、『Life is Tech!』の中では群を抜いてプログラミングやアルゴリズムを理解する。
――このキャンプではどんなアプリを作っているんですか?
小原くん: iOS用の計算をして経験をためてレベルを上げるRPGを作っています。最初は○×クイズゲームを作っていましたが、電卓のような形にして計算問題を解いたらどうだろうと考えました。そして、アイテムで制限時間が増えたり一問問題を正解させて飛ばせるようにするとか、そういうものをつけていたら、友達や先生方から“計算RPG”と言われるようになって、実際作ってみることにしました。
↑小原くんが作っている計算RPG。ビジュアルはまだ仮のものとのこと。
――プログラミングで何か苦労している点はありますか?
小原くん: イラストやビジュアル面で苦労しています。ほかから素材をもってきてしまうと、AppStoreに出せなくなるので、自分で描くしかなくて。
――プログラミングを始めたきっかけは?
小原くん: 前からゲームが好きで作りたいと思っていました。おもしろそうだと思って(スマートフォンの)ゲームを買ってみたけれど、拍子抜けするほど全然楽しくなかったので……。どうせなら、中身をちゃんと作ってほしいなと思ったので。自分でつくるようになりました。
――イベントにはよく参加するんですか?
小原くん: 『Life is Tech!』は今年の春ごろからで全部出席しています。ほかにもデジタルハリウッド大学のイベントに参加しています。
――将来の夢は何ですか?
小原くん: プログラマーです。ゲームが作りたいですね。
■『Life is Tech!』主催ピスチャー 水野雄介氏
最後に、このイベントが開かれるようになったきっかけや目的を主催者に聞いてみた。
――『Life is Tech!』をスタートさせたきっかけを教えてください。
水野氏: 根本にあるのは“日本の教育を変えたい”という想いです。
以前は高校物理の教師をしておりました。そのとき、子供の中でパソコンやゲームが好きな子供が多くいたのですが、作りたくてもわからない、誰にも教えてもらえないという子ばかりだったんです。子供たちの好きな物はできるだけ伸ばしてあげたい。そこで『キッザニア』の中高生版みたいなのをできないかと始めたのが『Life is Tech!』です。
ヒントはスタンフォード大のテックキャンプから得ました。資源のない日本では子供に投資するのは当然です。特にIT業界は小学生・中学生から社会で戦える業界です。実際に今、アメリカではそうです。高校を出たてや大学生でもサービスさえよければすぐに起業できます。そういった才能をもつIT業界の浅田真央選手や石川遼選手のようなヒロイン・ヒーローが育てば、それに憧れてプログラマーを目指す子が多くなるでしょう。そうなれば、日本のIT業界はより発展していきます。
――参加している子供達を見てどうでしょう?
水野氏: みんな好きことが形にできるので、夢中になって楽しんで一生懸命にやってます。多感で吸収力が高い時期ですから、難しいプログラミングでもすぐに覚えていきますよ。できるようになってくると、ちょっとプログラミングが動いただけでもそれが自分自身の自信につながっていくこともあります。
――今後の活動についておしえてください。
水野氏: 主軸は『Life is Tech!』を続けて広げていくことです。ほかにも『Life is Tech!』の成果を学校の教育にフィードバックできればと考えています。なぜなら、先生は1時間の授業をするのに3時間の教材を作る準備が必要になります。もっと生徒を見てあげないといけないのに、なかなか時間が取れないのが現状です。『Life is Tech!』の成果を教育プログラムにすることで、先生が教材を作る手間を減らし、もっと生徒を見てあげられるようにしたいと考えています。
今回の『Life is Tech!』の募集は終了しているが、学校の休業シーズンを中心に定期的に開催されているので、”自分の子供にプログラミングを学ばせたい!”と考えているならチェックしてみよう。IT業界を目指すなら、プログラマースキルは強力な武器になるのは間違いない。
また、中高生向けスマホ向けアプリコンテスト『アプリ甲子園』のエントリーは8月31日まで公式ホームページにて受け付けている。我こそはと腕に覚えのある少年少女たちは、ぜひ彼らとともに参加してほしい。
■関連サイト
Life is Tech!
アプリ甲子園
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