週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

30時間ぶっ続けで“つながる”ゲームをつくる! 『福島GameJam in 南相馬』を開催【前編】

2011年08月28日 12時53分更新

福島GameJam
『福島GameJam』を南相馬で開催
福島gameJam02

 IGDA(国際ゲーム開発者協会)日本は8月27日(土)、28日(日)の2日間、福島県南相馬市のゆめはっと(南相馬市民文化会館)多目的ホールにて、ゲーム開発イベント『福島GameJam in 南相馬』を開催。会場は誰でも見学できるように配慮され、エントランスからプログラマーたちの奮闘する様子を無料で見学できる。

チームでゲームを開発
福島GameJam

 “GameJam”とは、参加したプログラマーやグラフィックデザイナーたちが複数人でチームを組み、与えられたお題に沿ってチームごとにゲームを開発するイベントだ。今回のテーマは“つながり”(Connection)。週刊アスキーでは、メイン会場であるゆめはっと(南相馬市民文化会館)からライター シバタススムが、また、サテライト会場である東京の国立情報学研究所(NII)から編集部イッペイが、その模様をレポートする。

 開発の制限時間は30時間! 日程は会場ごとに若干の時間差があるが、おおまかにいうと下記のような超過密スケジュールとなっている。

福島GameJamのスケジュール
●8月27日【1日目】
10時45分…チーム分け発表&自己紹介
11時…ゲームのテーマ発表
13時30分…開発予定ゲームのプレゼン
22時…ゲームのアルファ版をアップ

●8月28日【2日目】
8時…ゲームのベータ版をアップ
10時…プレイアブルをアップ
17時…完成版をアップ
 

 なお、今回は開発テーマとは別に、なるべく盛り込んでほしい要件(Achievement)として以下の8項目も提示された。

■Achievement(実績)
(1)子どもたちとの合作(Collaboration)
 福島の子供たちが作成した画像素材(ドット絵)を作品に取り入れる(数が多いほどよい)

(2)東北(Tohoku)
 福島をはじめとした東北地方の特徴・名産品を作品に取り入れる

(3)初体験(First Contact)
 「ゲームをしたことがない」という人でも楽しめる

(4)説明不要(No Instruction)
 ルール説明がいらない工夫をする

(5)5分(5min)
 5分以内で遊べる

(6)言語不要(Language Free)
 文字(日本語も英語も)を一切利用しない

(7)インターフェイス(Interface)
 操作にキーボード、マウス、ゲームパッド以外を用いる

(8)つながり(Link)
 FacebookやTwitter、Google Mapなど、Web上の実データを活用する

福島の子供たちが描いた絵を画像データに!
福島GameJam

 注目は(1)だ。来場した福島の子供に書いてもらった絵をドット絵にして、ゲームに登場するキャラ画像などとして取り込むことを強く推奨。これらのAchievementは、より多く盛り込まれ、ゲームとしておもしろくなっていることが望まれる。

福島県南相馬市の村田崇副市長
福島GameJam

 開会式では、IGDA日本の新清士氏およびユビキタスエンターテインメント代表取締役社長兼CEOの清水亮氏より、開会のあいさつと協賛企業の紹介が行なわれた。協賛企業はサイバーエージェントやアadaptec、Unity Technologiesなど。これらの企業から水のペットボトルやTシャツなどが参加者にプレゼントされた。また、共催となる福島県南相馬市の村田崇副市長がイベントの開催と参加者の来訪を歓迎する旨を述べた。

開会式はUstでも中継
福島GameJam
IGDA日本の新清士氏
福島GameJam
ユビキタスエンターテインメント代表取締役社長兼CEOの清水亮氏

 福島会場では、東京や東北各県から43名の参加者が集い、1チーム5、6人の8チームに分かれてゲームを作成することになった。1チームにはチームリーダーとなるプログラマーのほか、ゲーム企画、グラフィック、サウンドデザイナーなどが配属された。さまざまな得意分野をもつ参加者が役割分担し、まさに“開発チーム”としてゲームをつくり上げる編成となっている。

 ちなみに筆者・シバタは第1班にプログラマーとして配属された。1班はチームリーダーにコンシューマーゲームの開発現場で経験がある南治さん、ゲーム企画に笠原さん、グラフィックは専門学校でグラフィックデザインやCGを学ぶ橋本さんと篠宮さんという5人構成。

 テーマと“Achievement”を見ながら、まずはブレインストーミング。どんなゲームをつくるかアイディアを出し合う。基本方針として、限られた開発時間のなか1本の大作にリソースを集中すると開発に失敗した場合に作品がなくなってしまうため、ミニゲームを何本かつくることにした。

 そのなかで東北を「つなげる」ゲームをつくれないかということで、南治さんと筆者がそれぞれプログラミングが必要なミニゲームを1本ずつ、笠原さんが比較的組みやすいシナリオゲームを“Atlas X”で制作することになった。橋本さんは萌え系の絵が得意とのことでキャラづくりを担当。篠宮さんは3Dモデリングの達人ということなので、東北6県の県の形をつくることに。

 まずは、15時の開発企画の発表。このときは、南治さんと筆者のプログラミングはやや難航気味。笠原さんも“Atlas X”が初めてだったため、やや戸惑っていたようだ。しかし、橋本さんの萌えキャラと篠宮さんの3Dモデリングは順調だったため、スライドでキャラクターを発表し、期待をもってもらう形で終了。その後は、プログラムを変更しつつも、23時のアルファ版公開には、なんとか動作するプログラムの公開にこぎ着けた。
はたして、どんなプログラムができたかは乞うご期待。

シバタ所属第1班の仲間たち
福島GameJam

●南相馬市 但野市議に聞く ゲーム開発イベント受け入れの意義

 南相馬市は福島第一原発の事故による影響で、市内に警戒区域、計画的避難区域などが設定されており、今でも市内の一部に立ち入ることができない。また、3月11日の東日本大震災による津波で多くの命が奪われた。大震災から約5ヵ月半が経過したとはいえ、なぜ南相馬市は『福島GameJam in 南相馬』を受け入れたのか? 南相馬市側でイベントの受け入れを担当している但野謙介市議(29歳)にお話をうかがった。

福島GameJam

Q.震災の爪痕が残る南相馬市でなぜこのようなイベントを?

但野市議:原発事故の影響のひとつに、「風評被害」があります。南相馬市はゴーヤの苗を「緑のカーテン」として普及させるプロジェクトを進めておりました。しかし、原発事故により市場の買い手がほとんどなくなってしまいました。農産物のような大地に根付いた産業ではどうしても、事故の風評被害を受けてしまいます。しかし、これがゲームのようなソフトウェアならばどうでしょうか?  ソフトウェアならば、南相馬市でつくったとしても放射線の影響を受けないので、風評被害が出ることはありません。今は市内の復旧で若者が汗を流す人手が必要ですが、いずれ、より良い産業育成を目指す復興の時期になるはずです。そのときに南相馬市の産業となりえるものを育成する必要があります。そのため、このようなイベントを開くことで子供たちや若い世代にゲームを通してITに興味をもってほしいのです。

Q.市民や市役所のスタッフから反対意見は出なかったんでょうか?

但野市議:私も反対が出るかと身構えたんですが、意外にも部内から賛同してくれる方が現われて、実施までの道のりがスームズに進みました。また、市民からの反応も良いですね。(実際に、筆者がプログラミングをしていると、子供連れの親子が3、4組見学に訪れて、興味深そうに開発現場を見ていた)

福島GameJam



●いっぽう、サテライト会場のひとつ東京会場(NII)
では

Ust中継で福島の開会式を見守るNIIの参加者
福島GameJam

 NIIはイッペイが取材してきました! NIIの参加者は9leapのプロジェクトリーダーであるユビキタスエンターテインメント伏見遼平氏をはじめ、比較的若いプログラマーが11人集い、4チーム(1チーム2~4人)を編成。

enchant.jsを使ったプログラミングの実演
福島GameJam

 チーム分けの前に、伏見氏から9leapでも使われているゲームエンジン“enchant.js”のライブコーディングで簡単な説明が行なわれた。その後、チーム分けとなり、初対面となるチームメンバーに自己紹介。各自の得意分野を確認して、どんなものをつくりたいか早速話し合った。

アイディア出しに奮闘
福島GameJam
福島GameJam

 各チームは打ち合わせ用のプロジェクターとホワイトボード、ポストイットが与えられ、福島会場と同様ブレインストーミング。まずは役割分担やどんなゲームを目指すのかを発表した。複数人で遊べるゲーム、郵便配達ゲーム、東北の名産をゲットしてつないでいくゲーム、おみこしをかつぐゲームと、各チーム個性をむき出しにしたプレゼンで、会場の大人たちの期待をあおりまくりでした。はたして本日28日、無事にゲームをつくり終えることができるのか!? こちらも楽しみです!


『東北ITコンセプト 福島GameJam in 南相馬』
http://fgj11.ecloud.nii.ac.jp/
 

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう