■各部門の優勝チームと気になるソリューションをチェック
シドニーで5日間にわたり熱い戦いが繰り広げられた、マイクロソフト主催の学生向け技術コンテスト『Imagine Cup 2012』。日本から参加した3チームの結果はすでにお伝えしているが、そのほか各部門の最終結果は下記のとおり。
ソフトウェアデザイン部門
1位 Quadsquad/ウクライナ
2位 Coccolo/日本
3位 Place - wi-GO /ポルトガル
ゲームデザイン(WIndows Phone)部門
1位 Drexel Dragons/アメリカ
2位 Ecosia/フランス
3位 Turtle Games /ハンガリー
ゲームデザイン(XBOX/WIndows)部門
1位 TANG Thai/タイ
2位 The Doers/ブラジル
3位 Hotfix_Windows/ベルギー
ITチャレンジ部門
1位 Alexandru Ticlea/ルーマニア
2位 Sherif Talaat/エジプト
3位 Joshua Sim/シンガポール
Kinect Fun Labsチャレンジ部門
1st Place - Team Interlab/ブラジル
2nd Place - Team Whiteboard Pirates/アメリカ
3rd Place - Team Flexify/ポーランド
Windows Metro Style Appチャレンジ部門
1st Place - Virtual Dreams Metro/ブラジル
2nd Place - nLife/ウクライナ
3rd Place - TokTok/韓国
Windows Azureチャレンジ部門
1st Place - Virtual Dreams Azure/ブラジル
2nd Place - Complex/ルーマニア
3rd Place - The Klein Team/アルジェリア
コカ・コーラ賞(Health Awareness Award)
Italian Ingenium Team/イタリア
コカ・コーラ賞(Environmental Sustainability Award)
Greenway/ドイツ
People's Choice Award
The D Labs/インド
Imagine Cupの特徴は、必ずしも先進国や“英語”を母国語とする国が強いというわけではなく(プレゼンはすべて英語で行なう)、東欧やアジアといった国々のチームも上位に食い込んでくるところ。発案者のビル・ゲイツによる「世界の学生にチャンスを与えたい」という思いが伝わってくる大会だ。
↑昨年ソフトウェアデザイン部門2位のヨルダンチームが、ゲストとして登壇。ビル・ゲイツは大会後彼らと面会をし、彼らの“その後”も支援。大会を運営するだけでなく、参加したチームの支援も行なっていくのがこの大会のポイント。
■気になるソリューションや作品をチェック
今大会も世界各国からたくさんの魅力的なソリューションや作品が登場していた。そのなかでも気になるチームをピックアップしてみよう。
まず最も筆者の目を引いたのが、ソフトウェアデザイン部門3位のポルトガルチームのソリューション。スーパーなどにあるカートを自走式にし、キネクトなどのセンサーを取り付けて車イスなどの利用者を自動追尾するシステムだ。
チームのメンバーに車イス利用者がおり、健常者と同じように買い物がしたいという願いから開発された。
↑前方の人間を認識し、一定の距離をあけて追尾する。障害物などがある場合は回避しつつ追いかけてくる。
↑持ち手の部分にキネクトセンサーを装着。手の動きなどをコマンドにして、“止まれ”などの指示が送れる。
ソフトウェアデザイン部門で日本チームを下し優勝したウクライナチームは、デジタル手話システムを開発。各種センサーを取り付けたグローブを手にはめ、手話の動きをすると自動で音声を発声するというもの。
手の動きから音声までの反応も早く、スマホと連携させて音声出力ができるので、利用場所も自由なのがポイント。
↑パックス・パワーグローブのようなものを両手にはめ、検知した動きを言葉に変換する。
↑柔軟性のある棒状のセンサーが指の部分にセットされており、各指それぞれの関節の折れ曲がり具合も検知できる。
第1ラウンド突破はならなかったが、筆者を驚かせたのがポーランドチームの地雷発見システム。地雷をはじめ各種機器は微弱ながら磁気を発している。これをスマホに搭載されている磁気センサーを利用して、地中に埋まっている物体を検知。検知したデータをもとに、インターネットを通じてサーバーにアクセスし、磁気のパターンから埋まっているものがなんであるかを判別する。ネットが通じない環境では、端末内にデーターベースを保存しておき、ある程度の判別が行なえるようにするという。
スマホの磁気センサーは電子コンパスで地図に使うもの、という固定概念にとらわれていた筆者には思いもつかなかった発想だ。
↑Windows Phoneのアプリで、地中に埋められた地雷の磁気を検知。通常の端末で50センチくらいまでの深さなら検知できるという。
↑スマホの磁気センサーはあまり強力ではないので、さらに強力な磁気センサーのアタッチメントも開発。
ゲームデザイン(Windows Phone)部門では、優勝したアメリカチームの作品が抜きん出ていた。彼らの作品は、四則計算のパズルという一見するとありきたりなもの。しかし、ゲーム性が高く、計算が苦手でつまらないと思ってる子供たちに向けたゲームなので、よい意味で中毒性のある仕上がりになっている。
さらに回答率や、どこでミスしたかなどのデータがクラウド上にアップされ、指導の指標としても利用できるようになっている。
グラフィック面が若干劣っているが、質疑応答で「製品化の際にはデザイナーをいれて、グラフィックも強化する」と即答しており、このあたりのプレゼンのうまさはさすがアメリカチーム。
↑画面下の計算式に、数字の入ったバルーンを当てはめるのだが、正解がない場合は、バルーンどうしをぶつけて正解の数字を出し当てはめる。
またゲームデザイン(XBOX/Windows)部門でも、やはり優勝したタイチームの作品が優秀。ゲーム内容は、リアルタイムストラテジーだが、ユニットに動物をモチーフとしたかわいらしいデザインを採用。難しさを感じさせず、こちらもゲーム性は高いものの、楽しみながらプレーできる。
デザインでいえば、日本チームもかなりのレベル。特にデフォルメされたカワイイ系のデザインは日本のお家芸ともいえるジャンルだが、こうしたジャンルでも他国からの猛追を受けており、うかうかとはしてられない状況が感じ取れた。
↑日本のデザイナーが作成したといっても違和感がない、かわいらしいデザイン。タイチームはかなり自信があったようで、タイのマクロソフトのトップが応援に駆けつけており、見事に優勝を勝ち取っている。
■起業や事業化に直結したコンテストのImagine Cup
ImagineCupが日本のロボコンなどと大きく違う点は、どのソリューション、作品も起業や事業化を考えて開発をすすめているという点が上げられる。これはコンペティションのなかでも重要な審査ポイントとなってる。
実際、ショーケース(展示ブース)には各国の企業やベンチャーキャピタルも足を運んでおり、日本チームにも「ビジネスとして連絡したいのだが、責任者はだれになるのか?」といった問い合わせも受けていた。
日本でも最近は目にするようになってきたが、教育機関の研究と企業がより密接な関係にある海外では、こうした積極的なアプローチは当たり前の光景。こうした点は今後、日本のベンチャー企業をよりたくさん育てていこうとするうえで重要な課題になるだろう。
↑ショーケースでは、東京高専チームがビジネスとして連絡したいという相談を受けていた。相手が学生でもビジネスとして相手をする。こういった土壌が日本にも根付いてほしい。
Imagine Cupは「テクノロジーを使って世界を世界を変える」というのが大きなテーマ。夢や思いだけでは世界は変えられない。その夢や思いを実現するための技術と行動力がともなって、初めて世界を変えられる。そこまでをプレゼンできるチームが世界中から集まり、ガチコンで戦う。それがImagine Cupなのだ。
次回のImagine Cup開催地はロシア。来年も“世界を変える”熱い戦いに期待したい。
■関連サイト
ImagineCup公式サイト(英語)
ImagineCup世界大会応援サイト(日本語)
Imagine Cup Japan Facebookページ
Imagine Cup Japan YouTubeチャンネル
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