心地よい手書き入力のためにつくられたスマホペン、『Su-Pen』。編集部にも愛用者の多い逸品だが、一部の製品で書けなくなるなどの不具合が発生し、問題点をクリアーしたバージョンアップ版の発売となった。しかも書き味の悪くなった旧Su-Penは無償で新しいものと交換してくれるという神対応。
バージョンアップによって何がどう変わるのか、新ペン先誕生に至る開発秘話を聞いてきましたよ。
『Su-Pen(スーペン)』 ●MetaMoJi ●価格2980円
●全長 約106ミリ、重量 約20グラム
――新バージョンの先端の布はやはり何パターンか試してみたんですか?
岩田さん(広報さん)
「材質を変えたり編み方を変えたり。炭素繊維、銀の糸を織り込んだもの、特殊なコーティングをしたもの、いろいろ試してみました。」
植松さん(7notes&Su-Pen開発者)
「導電性もだけど、耐久性とか品質の安定性とか考えたときに、なかなか難しいんですよね。布の厚みをデジタルノギスを買って測ったり。あと最初性能が悪くなったときにどうしてだろうと思いながらこう、導電性をテスターで測ったり。
今に至ってはもう、“布のムラだろう”みたいな話に落ち着いたんですけど、最初は本当によくわからなくて。書き味が落ちたという人に「ごめんなさい、初期不良です」といって新しいのを送るんですけど、それと同時に「送り返してください」ってお願いしたんですね。(ユーザーさんにとっては)手間のかかることなんですけど、“製品の向上に役立ててください”みたいなメモを書いて送ってくださる方が多くてですね。それをいろいろこうチェックして。
導電性のチェックもあるし、繊維メーカーさんに送ってマイクロスコープで状況を見たりとか。いろいろなことをずっとして、ああ、こういうことなんだろうなというのがわかって。で、繊維の改良につながった。だから、机の上は工具ばっかりですよ。僕、ソフトウェア屋なのに(笑)」
岩田さん
「あと、我々のほうとして考えたのは、保護シートですね。保護シートを多くの方が使ってらっしゃるんですが、どうしても間に1枚フィルムを挟んでいるので感度が落ちるんですよ。ただ、使ううえでは保護シートで感度が落ちるには落ちるんですけど、それを極力少なくするような素材であるとかペン先を目指して新バージョンをつくったので、皆さんに“良くなった”、“前よりすごい!”と声高に言っていただいているんですが、保護シートを使われている方ほど顕著に感じられるようです。逆に生で使ってらっしゃった方は、(もともと快適なので)そんなに違わないと思うんですけど。」
――アンドロイド端末で、今まであまり相性がよくなかったものでも快適に使えるようになったりとかは……。
浮川社長
「その可能性は大きいんですけど、まだそのへんの試験をですね、試験担当は私なんですけど(笑)。やらなくちゃいけないんですけど。なんせ74機種も試験してますもんで、それをもう1回やるのたいへんなんです!(笑)」
植松さん
「少し試してみたんですが、極端に合わなかったものはやはりダメなんですけど、微妙にダメだったものは、まあ、いい感じになってますよ。」
――書けなくなったというクレームはどのぐらい来ましたか?
岩田さん
「正確な数は出せないんですけど、けっこう来ましたね。今回我々が無償交換させていただきますと発表したあとに、本当に書けなくなっていた方も来ましたし、微妙な方もいらっしゃいます。」
浮川社長
「十分使えるものもありましたね。」
岩田さん
「我々としてはお客様のご判断で書き味が落ちたものとして、すべて交換させていただきました。」
植松さん
「戻ってきたものは僕が全部チェックしているんですが、表面を調べたり、最終的にはバラしたり。そこまでやってどこがダメなのかが見えてくることもあるので。中にはめちゃくちゃいいやつがあったりしました(笑)。もったいねーっていうのがありましたけど。」
浮川社長
「まだ社内でも『Su-Pen』が不足しているので、そういうものは社員にまわってきます(笑)」
――新バージョンになってからクレームは?
岩田さん
「ないですね。」
浮川社長
「最後の試作でもいろいろ作ってみて、最終的に製品化しようかというものがあったんですけど、さらにもう1回突っ込んで。“ここから更にいいものにできるのではないか?”と、布を研究されているところに連絡をして、いちばん理想に近いものが見つかった。本当にもう、こだわりの極致みたいな。もっといい方法はないか、もっといいものはないかと、日々そういう気持ちで試作品をつくっています。」
植松さん
「……今現在も続いています(笑)」
浮川社長
「もっとバリエーションが増えると思いますね。まだ、詳しくは言えないんですが(笑)」
岩田さん
「ペン先は消耗品なので、いつかは書き味が落ちるんですけど、より高い安定度を保ちながら長期間使えるように改善を続けていきます。それからもうひとつは、重さとかカタチ。現在発売されているものは燕三条なんですけど、新しい軸であるとか新しいペン先、これとはちがうバリエーションでいろいろ検討させていただいてまして、何をやっているかというと植松が、……これわかりますか?」
――……ホビールーターですね。
岩田さん
「これを使っていろいろつくっているんです。」
植松さん
「ペン先の形状をつくるときにこれでウィーーンって削っているんですね。会社で削っていたら歯医者みたいでやだって言われました(笑)」
岩田さん
「これこそ、ソフトウェア技術者の机の上になんであるんだって(笑)」
――ええと、ライターの机の上にもあります(笑)
植松さん
「イメージをつくるために木を削ったりとか、シリコンのブロックを削ったりして試してます。いろいろ進化させていきたくて。」
――今回は形状は変わっていないんですよね。
植松さん
「今回は、変わっていないです。」
――じゃ、次はカタチが変わったものがくるんですね。
浮川社長
「いろいろなバリエーションが出てくると思うんですけど。」
植松さん
「ペン先に関しても、これはすごいぞ! というものができてはいるんですが、ただ、まったく量産が効かない。一点もの(笑)。それをどう皆さんに使っていただけるカタチにできるか一所懸命考えています。やることはいっぱいあるので非常に楽しんでますけど。楽しんでるって言っちゃいけないのかな(笑)」
浮川社長
「仕事(アプリ開発)も楽しまないと(笑)」
――さて、次の最終回は新『Su-Pen』ペン先を最も快適に使えるノートアプリと、ユーザーのみなさんとの関わりについて、心暖まるお話です。(最終回へつづく)
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