休日に趣味でつくりはじめたスマホペンが、いつの間にか社内でいちばん評判の良いペンになっちゃってた、というお話。ペン先の驚異の耐久性と生産量について。最終話です。
『Su-Pen(スーペン)』 ●MetaMoJi ●価格2980円
●全長 約106ミリ、重量 約20グラム
「理論上は半永久なんです
濡らしても、毛羽立つぐらい書いても
滑り具合はまったく変わりませんから」
――名前の由来なんですけど、これは単純に……
浮川社長
「最初はダイレクトに“植松さんペン”=『U-Pen』にしようかと思ったんですけど(笑)。 SevenKnowledgeというメーカー名がつきますので、単純にUだとか短いワンフレーズでと思ったんですが、Uというのはすでに製品があるので、これムリだよ、と。じゃあどうしようかな~と。長い単語じゃなくて、やっぱりUはつけたくて。浮川社長のUじゃないですから(笑)。植松さんですから! で、すぐ思いついたのがSuperiorとかSupremeとかSuperのね、優れたとか優秀なとか、日本語だとスゴいみたいな、そういう意味の“Su”ですね。」
――iPhone、iPad用とありますが、アンドロイドだと使いづらいとか、そういうことはありますか?
岩田さん
「原理的には同じなんですけど、アンドロイドの場合は個体差、機種差がすごく激しくて、我々のペンが云々ではなく、スタイラスペンそのものの反応がまちまちなんです。我々が書き味、書き味っていってて、ある機種で使うと「あれ? たいしたことないじゃん!」って話になってしまう。書き味を何度も試して完全に「気持ちいいよ」って保証できるのが、いわゆるiPadとiPhone、iPod touch、というところでいちおうとどめさせていただいている状態です。ですから使えないとは我々言いませんけども、まあ、あまりいい言葉じゃないですが保証はできないというか、アンドロイドで気持ちよく使えるという保証はできないというところが正確なところですね。」
――ギャラクシー用にチューンナップしたものを出すようなことは?
岩田さん
「こればかりは我々のほうではどうしようもなくて。ただグーグルさんがアンドロイドの4.0から正式にスタイラスペンの対応をすると言われているようなので、ある程度の基準を設けていくのかなあと期待していています。もしもそういうことになると、買う方も安心していろんなスタイラスペンを使えるようになるんじゃないかな~と。我々としてはなかなか言いづらいところなんですけどね。アンドロイドに関しては、いったんどこかで試していただいて、というふうにしか言えないのが正直なところですね。」
――ところで、ペン先の寿命ってどのぐらいなんでしょう。
浮川社長
「まったく寿命がないわけではないんですが、私たちもまだこれがダメになるまで使えてないんですよね。」
岩田さん
「理論上は半永久なんですよね。」
植松さん
「加速度耐久試験として、やすりの上で動かしてみたんですけど、相当やっても大丈夫で。」
浮川社長
「ゴムのペン先の場合は表面に薄い、おそらく数ミクロンみたいなコーティングがされていて、それがはげるとゴムそのものが出ますから、すぐにひっかかるんで、あっという間に劣化しますよね。Su-Penは、いくら書いても、たとえこれが毛羽立つぐらい書いても、滑り具合はまったく変わりませんから、書き心地は。それはもう特性だから。少々汚れても大丈夫です。」
――水洗いできるとかですか?
植松さん
「水につけて乾かしても劣化が起きないのは確認してるんですけど。」
岩田さん
「繊維だから濡れたらダメになるんじゃないかと心配される方もいるんですが、それはもう全然。」
浮川社長
「濡れたまま使わなければね!」
岩田さん
「それはiPadのほうによくないので(笑)」
植松さん
「でも、水の中につけて洗剤でもみ洗いとかはやめたほうがいいですね。表面ではなく、なかの4重構造に影響が出るかもしれないし。」
――専用ペンケースとかそういう展開ってありますか?
岩田さん
「今のところはないですね。製品版のパッケージは老舗のお菓子みたいに、社長と植松さんの“能書き”が中に入ってるんですけど、使う前にちょっと読んでくださいみたいなのをちょっと入れさせていただいて。」
基本的にケースとかはほとんどコストをかけずに、その代わりに2980円という価格。見る人が見たら、よくそんな価格でつくれているなあと、逆に言うと我々もこれで大丈夫か? っていうぐらいのコストをちゃんとかけてやっております。ケースとコラボの話も若干いただいてますので、それはほんとにこれから。今のところこれ、偶然、磁石にくっつくんですけど……くっつくからなんだっていうレベルですが、一応落ちないぐらいは(笑)。」
浮川社長
「クリップのところが鉄なんだよね。」
――ステンレスなのは耐久性プラス……
植松さん
「質感ですね。」
岩田さん
「さびないですしね。お客さまからメールの質問で、ペンに傷はつきますかっていうのがあって、細かい傷はつきますが、それは味だと思ってくださいと(笑)」
浮川社長
「いやいやいや、細かい傷、つかないよ。」
岩田さん
「でもほらこんなふうに……」(机の端でごりごり)
植松さん
「そりゃそこまでしたら……」
浮川社長
「いや、これより硬いものってさ、ダイヤモンドとかそういう特別なものじゃない限りつかない。こっちのほうが強いから。砂場で蹴っ飛ばしたりしたら、砂には石英とかいろいろ混ざっているからあれだけど、普通の石ならこのステンレスのほうが硬いですよ。」
岩田さん
「あ、これ傷つかないですね。すいません(笑)」
浮川社長
「かみついてください!……歯が折れちゃう!(笑)」
岩田さん
「と、いうことで、材質にはこだわっているという(笑)。ただ色のバリエーションの場合はステンレスだと難しいんですよね。着色が。」
浮川社長
「まあ、バリエーションはこれから。売れればですね(笑)。……いや、売れてるんですよ。売れてるんですが、(数を)つくれない(笑)。」
岩田さん
「現状でいうともう、発表して「予約開始します」って言った初日の5時ごろ、予定数を終わってしまいまして。」
――私も買い損ねました(笑)
岩田さん
「すみません(笑)。頑張って少しずつ生産数は増やしてるんですけど、最初のうちはこの状態がちょっと続くかな~。ときどき知り合いから「売り切れてるよ、うまいことやってんなぁ」みたいに言われるんですけど、そんなつもりさらっさらないから! っていう。私たちも製品版使えていないんです。」
浮川社長
「7notesのユーザーさんは、指でもさらさらって書けたと思うんですね。でも、Su-Penで書き味の気持ちよさが完成する。アプリだけではなく、これを含めて7notesだと。」
岩田さん
「サイトにあるコピー“気持ち良く書くためにペンも開発しました。”は社長が考えたんですけど、我々はあくまでアプリで手書きを提案するというものだったんですけど、でもそれだけだけではどうしても埋まらないところを埋めようと……商品といっていいのかわからないんですけど、そのこだわりを埋めるための、ペンなんですよね。」
――販路の拡大とかは?
岩田さん
「基本は直販なんですが、どうしても触っていただける場所が欲しいので、AppBankさんの原宿と名古屋の2店舗で置いていただいて、触っていただける場所を設けようと。ほんとは何ヵ所かそういうところを少しずつ増やしていけたらなあと。なにしろ生産が足りないところであっちもこっちもということはできないので、少しずつそういったところでカバーしていければなあと。
Twitterとかでも「すごく良さそうだけど触ってみないとな」みたいな意見が多いのは確かなんですね。もう一方では、試作品とかをアプリユーザー会とかAppBankさんのオフ会とかに持っていって、ちょこちょこっと書いていただくと、みなさん同じ反応で、書きはじめた瞬間に「おーっ」て言うんですよ(笑)。あと笑うんですよみんな。笑いながら書いてるんですよね~。
ゴムのペン先のものを使ってらしたり、いいペンをいろいろ探してた方ほど同じ反応をされるんです。だから、触ってさえいただければみなさんにご納得いただけると。ただそれができないので。」
浮川社長
「こういうことにかけてのうんちくとか、ペンをいっぱい集めてる方が何人かいらっしゃって、ZONOSTYLEさん(関連サイト)ってご存じですか? その何十本ももってらっしゃる、世界中のものを知ってらっしゃる方に、「いま書き心地に関しては間違いなく世界一だ」と言い切っていただいてます。
あとは、何個作れるか(笑)」
楽しいお話、ありがとうござました!(おしまい)
編集・KONOSUはステッドラーのペンホルダーを買って待機しています~(撮影用のサンプルを付けてみた図)。
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