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スラスラ度マシマシ!愛用者続出『Su-Pen』の新ペン先はこうして誕生した:第2回

2012年07月03日 13時00分更新

 心地よい手書き入力のためにつくられたスマホペン、『Su-Pen』。編集部にも愛用者の多い逸品だが、一部の製品で書けなくなるなどの不具合が発生し、問題点をクリアーしたバージョンアップ版の発売となった。書き味の悪くなった旧Su-Penは無償で新しいものと交換してくれるという神対応。

 バージョンアップによって何がどう変わるのか、新ペン先誕生に至る開発秘話を聞いてきましたよ。

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『Su-Pen(スーペン)』 ●MetaMoJi ●価格2980円 
●全長 約106ミリ、重量 約20グラム 

――新バージョンは、書き心地という点で安定してますか?

全員
「安定しています。

植松さん(7notes&Su-Pen開発者)
「もともとの安定性というのも、長期試験みたいなのがなかなかできてなくて、手で擦ってただけなんですけども、とても社内ではやりきれないですよね。土日もずーっとやってたんですけど(笑)」

岩田さん(広報さん)
「初代のものも自分達で相当試したんですけどね。やっぱりそれだけでは限界があるので、もうちょっと定量的な、そういう試験ができないかっていうところで、コレの登場となるわけです。

植松さん
「“耐久性試験機”っていうのをつくったんですよ。」

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浮川社長
「かわいらしい(笑)」

植松さん
「一般的な試験機で、ただローラーを通すだけっていうのは、あるにはあるんですよね。でも、どうも違うな~と。」

岩田さん
「そう。そもそも、書けなくなったというお客様には、全員無償交換させていただいたんで、いったいどういう使われ方をして、どういう状況で書けなくなったのかというデータをたくさんいただいたんですね。

 それでわかったのが、これはひとつの仮説として……なんですが、ただ単に書く(こする)ということだけではなく、タップという行為が相当多用されていると。作業中に、タップの反応が悪くなったというお客様がけっこういらっしゃったんですよ。そこで、書くだけではなくタップを組み合わせた耐久性を測ろうと思いまして。」

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植松さん
「耐久性を考えるときに、やっぱり再現性がないとなかなかわからない部分がある。ただひたすら僕がタップし続けて土日をつぶしているだけじゃだめなので(笑)、こういうふうに装置をつくって。

 これをずーっと動かしていると相当な時間タップできますし、我々自身も耐久性を考えるときにこれぐらいあれば大丈夫だろうみたいなところを想定しました。タップ100万回で、走行距離で10万メートルぐらい走ったと同じぐらいになるので、そこまでいけば安定した品質を保てるだろうということで、もうずーっと。」

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植松さん
「これ、ゴムで筆圧も変えられるようになっているんです。今ゆるめの筆圧で、100グラム。普通の人の筆圧が50グラム~100グラム程度です。ゴムを調整して相当筆圧の強い人を想定した150グラムにすると、ちょっと破れるところまではいくんですけど、破れるまでには、相当な時間がかかります。そういうことも、いろいろ試しています。

……僕、まじめに試験機をつくっていたんですけど、会社にこんなの(タミヤの工作キット)持ってきたら、あータミヤだ! ってみんな喜んじゃって(笑)」

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浮川社長
「みんなが仕事していると、どっかから、なんか音がするんですよ。“ジーコ、ジーコ”って。なんの音だろう……と思ったらこれ。」

植松さん
「最初は自分の机の上でやってたんですよ。そしたら、うるさいと言われて。離れた小部屋の隅っこに置いてたんです。それでもうるさくて廊下に出されて、仕方なく洗面台のところの隅っこに。そしたら掃除のおばちゃんが来て“おもしろいわねえ”って(笑)」

岩田さん
「手作り感いっぱいなんで、なんかこうおもちゃっぽく見えますけど、先ほどの話のように100万回タップの試験機って世の中探してもないんですよね。なおかつ筆圧まで、そのバネばかりで調整できると。そのタイヤ部分に、シート貼ってありますよね。このシート、保護シートなんです。一般に販売されているiPad用の保護シートを買ってきて、それを切って貼ってあるんです。」


※動画を撮り忘れたので2枚の写真から作ってみたイメージ。

浮川社長
「たぶんいちばん厳しめのヤツですね。」

岩田さん
「表面がざらざらのアンチグレアフィルムを貼ってあるので、非常に細かなテストができているんです。」

植松さん
「はい。大まじめにつくっています(笑)」

――この試験機の開発費用はどのぐらいですか?

浮川社長
「労賃、工作費は別でね(笑)

植松さん
「原価は5000円ぐらいですね。ギアがひとつ900円ぐらい。テストやっているあいだに1個壊れているんですよ。長期試験で10万メートル100万回タップ、1回目は問題なくいけたんだけど、2回目をやっているときにギアが壊れたんで変えました。それと、プラスチックがどんどん削れて減ってくんで、グリースを塗って滑りをよくしてますね。

――この装置って、名前はあるんですか?

植松さん
「あ~、特に名前は考えていなかったんですけど(笑)」

岩田さん
「……『耐久くん』です(笑)」

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――さて、次回は新『Su-Pen』ペン先のために試行錯誤して作られた布、のお話です。(第3回へつづく

 

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